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ボロボロと泣きながら、リオンは話し続けた。
エルフ族から聞いた話は、魔族 三王家との戦争を早める危険性を加味し、試験を突破した三名のみに伝えられ、信用できる仲間になら話しても大丈夫と告げられた。
その後のエルフ帝国遠征も、集中こそ途切らせることはなかったが、身が入っていないのは事実だった。
「それで、ルークはエルフ帝国の現帝王の妃の息子だからリオンたちに加勢できなかったのか……」
全員、無事に帰還したDIVERSITYの四人は、ヒノトの部屋に集まっていた。
ヒノトたちも、倭国で起こったことを話すと、シルフの件は易々と受け入れられていた。
ルークは、『草魔法を更に進化させる為』という話で、ラグナに説明し、苦い顔を浮かばせて了承させた。
ヒノトは、全員の話を聞き、自分の経験したことを思い出しながら、深々と考え込んでいた。
「どうしたの……? ヒノト……?」
「いや、なんかさ……。多分、変なこと言うと思うんだけど、魔族だけが悪いわけじゃない気がするんだよな」
その言葉に、全員が沈黙する。
何故なら、心当たりがあるからだ。
「まあ、俺たちまだ新兵でもないしさ、まずは新パーティの設立会だろ? 闘技場に向かおうぜ」
今日は、遠征から帰還した生徒たち全員を集め、新たなパーティを編成し、本格的に魔族軍との戦争を視野に入れた設立式だった。
倭国遠征班や、エルフ帝国遠征班で、別の学寮同士で争っていた学生たちも、仲良くなっている様子だった。
明るい集合を見せる中、エルフ帝国の真実を知る数人だけは、額に汗を滲ませたまま参列した。
国王 ラグナが直々に壇上に立つ。
両脇には、護衛の兵士が控え、最早、代理を立たせる状況にも行かなくなっているのが誰でも理解できた。
「倭国遠征班、エルフ王国遠征班、皆、よく頑張った。特に倭国遠征班は、魔族の襲撃によく打ち勝ってくれた。全員が更なる強さを身に付けたことだろう。今日は、離れていた分、パーティの輪をしっかり繋ぎ、新たなる戦いに備えられるよう精進して欲しい」
そして、散り散りだったパーティが集まって行く。
汗を滲ませながら、静かに集まる DIVERSITY。
◇ヒノト・グレイマン(灰人/ソードマン)
◇リリム・サトゥヌシア(闇/メイジ)
◇リオン・キルロンド(水/ガンナー)
◇グラム・ディオール(岩/シールダー)
互いに見つめ合い、ニシっと笑みを浮かべて向かい合うドラゴレオ兄弟。
◇キラ・ドラゴレオ(雷/ロングソードマン)
◇キル・ドラゴレオ(水/ガンナー)
◇ニア・スロートル(氷/メイジ)
◇クラウド・ウォーカー(氷/シールダー)
何も言わず、その背中に集まる。
◇キース・グランデ(氷/ロングソードマン)
◇ユス・アクス(水/ナイト)
◇イーシャン・ブロンド(炎/メイジ)
◇リューシェン・ブロンド(炎/ヒーラー)
しかし、ここで問題が生じる。
声を荒げたのは魔法学寮の生徒たちだった。
「それじゃあ私はどうなるのよ!?」
「ごめんなさい……。でも、私はこれ以上、姉妹で争うようなことはしたくないの……」
怒り込み上げるアズールと、頭を下げるララ。
ララ・フレアのパーティは元々、妹のルル・フレアが集めたルルの魔法を軸としたパーティだった。
しかし、ララはモモを入れ、三姉妹で一緒のパーティを組みたいと話していた。
それに対し、ルルもモモも賛成の意を示した。
モモのパーティだったアイクは、何も言わずにその光景を眺めていた。
「アイクはどうなの!? こんな裏切られ方!!」
「僕は……確かに、モモさんの盾として公式戦では頑張りたいと思っていました……。しかし、倭国で本当の殺意を持った魔族と対峙した時、このままではいけないと、そう感じたんです……。僕たち平民のパーティは、もっともっと、工夫する必要があると…………」
「そんな………………!」
次第に、アズールの瞳は潤いを見せる。
そんな中だった。
「おい、そこの女。なら、俺のパーティに来いよ」
ニタリと笑いながら声を掛けたのは、ロス・アドミネ。
「いいだろ? グロス?」
「俺は…………」
ロスとグロスのパーティは、ソルが魔族化し、ルルリアが魔族で、二人が欠員となってしまっていた。
ロスは自らファイターに転身したが、グロスは、自分の戦い方に、未だ迷いを見せていた。
「それと、レオ・キルロンドと組んでいたファイ・ソルファ。お前も行く当てがないだろ。俺のところに来い」
「え……あ、あの…………」
ファイ・ソルファもまた、レオの勧誘でKINGSのヒーラーだったが、レオが魔族化、ルークはエルフ王国に残留、シグマは魔族で、たった一人になっていた。
しかしファイもまた、成長したのは魔法だけではない。
「私と、アズールさんを勧誘する理由を教えてください。ただの人員補充であれば、私は辞退します」
震えながらも、真っ直ぐにロスを見つめる瞳に、ロスは真っ直ぐな瞳で応えた。
「俺は倭国遠征で、ルギアさんからファイターの極意、風属性としての役割、魔力増強の訓練を受けた。俺に必要なのは、ガチガチのシールドと、強力な雷魔法。それを拡散しながら、シールドの中で前線で戦う」
「私が……強力な雷…………」
急に認められたような発言を受け、アズールは戸惑いに呆然と口を開いた。
「俺のパーティのコンセプトはこうだ。気に入らなければもちろん辞退する権利はある。だが、俺は必ず、元SHOWTIMEのリーダー、ソル・アトランジェを倒し、このキルロンドへ取り戻すと誓った。その為に、お前たち二人の力が必要だと感じた」
猪突猛進なロスの、的確な判断としっかりしたコンセプト、そしてそれらを遂行する意志に、隣に控えていたグロスもまた、目を見開いた。
「お前…………そこまで…………」
「私は……参加します。私も、レオさんを取り戻したい…………!」
そして、ロスのパーティ、フレア姉妹のパーティは完成された。
◇ロス・アドミネ(風/ファイター)
◇アズール・ウォール(雷/メイジ)
◇グロス・ラドリエ(岩/シールダー)
◇ファイ・ソルファ(岩/ヒーラー)
◇モモ・フレア(炎/メイジ)
◇ルル・フレア(水/メイジ)
◇ララ・フレア(炎/メイジ)
◇ゴヴ・ドウズ(岩/シールダー)
残すは、元風紀委員パーティ、リゲル・スコーン、シャマ・グレア、キャンディス・ウォーカー、アイク・ランド、そして、唯一の剣術学校出身、凪クロリエ。
しかし、元風紀委員パーティの三人は、ほぼ決まっている中で、凪とアイクが残されていた。
つまり、一人がパーティ編成から除外されてしまうのだ。
しかし、何も言わないアイクに対し、凪が国王の元で膝を突いた。
「突然の申し出で申し訳ありません。私は、今回の編成から辞退しようと考えております。そして、再び倭国へと戻り、更なる異邦剣術を学びたく存じます」
意志を重んじる国王 ラグナはその言葉に賛成し、何も言わないまま、アイクは風紀委員に編成された。
「本当に良かったのか? アイク。我々も、キルロンド学寮では注目を浴びるパーティではあったが、それは風紀委員長……連れ去られたカナリアの存在が大きい。今からでも志願すれば、まだ他に好きな編成に…………」
しかし、アイクは、自ら辞退の意を示した凪のことを見つめていた。
「不満はありません。むしろ、僕の今の力が役に立つのかずっと迷っていて……。凪くんとは、倭国で張り合うよう共に訓練に励みました。あの宣誓で……先を越されてしまったかのように感じます……」
その背を、キャンディスは強く叩いた。
「ならば、強くなれ。我々のパーティと共に」
リゲルも、シャマも、キャンディスもまた、強い意志でアイクを見つめた。
その瞳に、アイクはコクリと頷いた。
無事に、遠征に行っていた魔族軍と交戦する為の新パーティが編成し終わり、全員が安全に帰路へと着いた。
次に全員が招集される時は、本当の戦争となる。
全員が、その緊張と意志を胸に抱いて眠りについた。
その晩、編成された全員は、忽然と姿を消した。