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「今日はどうしてひとりなの? おにーさん、彼女はぁ?」
「いるよ。一応彼女って言っていいのかな。すっげぇ好きな子」
「じゃあ私たちと飲んでいたら怒られちゃうんじゃない?」
この子達は俺と同じで、ただこの時を楽しみたいだけらしい。
好きな子がいると言っても、特に顔色を変えることはない。俺は少し安心して、愚痴をこぼすことにした。
「いっそ怒ってもらったら話が早いんだけどねぇ。電話ひとつかかってこないし」
「やだー、喧嘩でもした? もったいないなぁ、こんなにいい男なのに!」
「そう?」
「そうそう。いらないならもらっちゃうよーって言いたいくらい」
目の前の女の子たちは、高井戸よりも背が高く、スタイルもよく、化粧もきっちりしている。
女であることを意識し、態度の端々に女らしさを強調してくる。
整えられたきれいな爪、グラスが開いたと思えばすぐに次の注文を尋ねる気の配り方、ちゃっかり自分たちの分まで頼む計算高さをとってみても、彼女たちには色気があり、高井戸にはない。
「そうだね、君たち美人さんだしね」
「あれ、浮気しちゃう? 私、フリーだから相手になるよ?」
髪の長い子のほうが身を乗り出してくる。
俺は笑って、椅子の背もたれに背中を預けた。
「やめとく。どこがいいんだか分かんねぇけど、やっぱりアイツがいいから」
自問自答するけれど、こうして女性二人を相手にしていて思い出すのは高井戸のことばかりなんだから、言葉にできる答えなんて必要がない気もする。
単純に、俺はあいつのこじんまりしたところも、本当は委縮しまくってるくせに堂々としている態度も、ふてぶてしい切り返しも、全部気に入っている。
恋愛の駆け引きを繰り返しているより、思い通りにならなくてもアイツと一緒にいたいんだから仕方ない。
「俺、そろそろ帰るわ」
「えー、もっといいじゃない」
「そろそろ、本命口説きに行こうかと思ってね。悪いね、ここは奢るよ」
「やったー。ありがとうおにーさん。本命さんによろしくねー」
女の子ふたりは楽しそうに冷やかしている。
とりあえず、ここまでの伝票をきってもらって支払い、「後はごゆっくり」と告げて店を出た。
コメント
1件
今回のエピソード、すごく良かったです!他の女の子たちを前にしても、「やっぱりアイツがいい」って自覚するところに胸がぎゅっとなりました。高井戸さんのこじんまりしたとこも、ふてぶてしいところも全部好きだって言える主人公の告白じみた内心が、めちゃくちゃ刺さります。普段は不器用なふたりだからこそ、こうして「本命を口説きに行く」と決めるシーンにじんわり来ました。坂野さんの描く距離感がまた絶妙ですね。続きも楽しみです🌷