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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。『大樹』の事は置いておくとして、『暁』の更なる強化を図るならば装備の充実は必須と言えます。ならば、いよいよ動いても良いでしょう。
私はベルを連れてシェルドハーフェン六番街にあるお店を訪ねます。もちろん、ドワーフのドルマンさんを勧誘するために。
「久しぶりだな、お嬢ちゃん。また成長したみたいだな?」
相変わらずの店内ですが、今回はソファーが用意されていました。凄い、機械以外の物があるなんて。驚愕です。
「失礼なことを考えてないか?」
「まさか」
私の周りには鋭い人が多くて困ります。
「それで、今回はどうした?また何か欲しいのか?今のお嬢ちゃんならそれなりの物を売れるぜ」
「いえ、今回はお買い物に来たわけではありません」
「…ほう?」
私は、ゆっくりと足を組みます。あくまでも自然に。
「将来の投資についてのお話をしませんか?ドルマンさん」
「将来の投資だぁ?」
「端的に言います。私が貴方のクライアントに成りたいんです」
「俺の出資者になろうってか?ドワーフの変わり者だぞ」
「貴方が感心を寄せるのは、最新鋭の近代兵器。ライデン社から試作品の取り扱いを任される数少ない人であり、貴方自身も研究して試行錯誤を続けている。違いますか?」
「…調べたのか?」
ドルマンさんの目が細められます。まだまだ。
「失礼であることは承知しています。今ここで謝罪もします。ですが、決して悪いお話ではないですよ」
「話を聞こうか」
「簡単です。私は貴方の研究を後押ししたい。その成果で更に戦力を強化したい。欲を言うなら、ライデン社との繋がりも得たい。なにより、貴方の腕が欲しい」
「随分とストレートだな。駆け引きをするつもりは無いのか?」
「お互い忙しい身ですし。なにより、ドルマンさんは口八丁が通じる方ではないと思っていますから」
「良く分かってるじゃねぇか。その通りだ。で、だ。職人として腕を買ってくれるのは嬉しいが俺は頑固者でな。納得してない作品を渡すつもりもねぇ。お嬢ちゃんが欲しがるようなものが直ぐに手に入るとは限らねぇぞ」
「技術の進歩は試行錯誤の繰り返しです。ドルマンさんが納得するような作品ならば信用できます」
そう、こだわり抜いた逸品は必ず『暁』を強くすることに役立つはず。
「ほう、だが安くはねぇぞ?」
「構いませんよ。これからは必要な資材などは全て私が用意します。もちろん、お金も」
「ふむ」
「ただ一つ条件があります。店を移してください」
「なんだ、場所を変えるのか?」
「この場所に思い入れがあるわけではないでしょう?」
「まあ、流れ着いた場所ってだけだが。何処に行けば良いんだ?」
「我が『暁』の本拠地に」
「なんだ、お嬢ちゃん。クライアントとか遠回しな言い方するなよ。俺を雇うつもりか」
「雇うのではありません。」
「うん?」
「はっきり言います。私は貴方が欲しい。『暁』に加わってもらいたいんです」
「流れのドワーフにそこまで言うか」
「先ほども理由は伝えました。もちろん私はまだまだ小娘。ですが始めてお会いした時より成長したつもりです」
「確かに、『暁』の名前は良く聞くが」
「更なる躍進のためには、貴方が必要なのです。ドルマンさん」
「…あんなに小さかったガキが、俺を欲しいと言うまでになったってのか」
「はい、今までも貴方が売ってくれた武器には大変お世話になりました。ですが、私は我が儘なのでお買い物ではなく欲しいものを作って貰いたくなった。それだけです」
「何を望むんだ?」
「より近代的な武器を。貴方の思うがままに。聞けば最近は何かと物入りなのでしょう?」
「まあな。なら、俺を安心させられるくらいの金を…」
私はテーブルに金貨を一枚置きました。もちろんただの金貨ではありません。星金貨です。帝国で最良の金貨、国家や大貴族しか持てないような莫大な価値があります。
「星金貨だと!?」
「これを差し上げます。投資の一環として。如何ですか?」
『暁』にとっても安くない出費ですが、ドルマンさんが手に入るなら安い。
「はっはっはっ!星金貨をポンッっと出せるくらい稼いでるのか?その歳で!?」
「はい、幸い運に恵まれまして」
「運だけじゃ無理だな。色々注文を付けるぞ?良いんだな?」
「はい。では改めて…ドルマンさん、私の大切なものになりませんか?」
私は手を差し出します。
「ああ、お嬢ちゃんのところで最高の武器を作ってやるよ」
握手を交わします。よし!ドワーフのドルマンさんが仲間になりました!
「では早速ですが、大砲と機関銃の開発に重点を置いてください」
携帯火器だけでは限界があります。やはり遠距離攻撃と弾幕が有効です。
「機関銃は請け負うが、大砲はあんり気乗りしねぇな。ライデン社の試作品が幾つかあるから、それを使え。で、データを送ってやると喜ぶぞ」
「その試作品なのですが、やはりライデン社の機密品なのですか?」
「いや、ライデン社に居る仲間の話だと、会長の完全な趣味なのだそうだ。だから数がない」
「趣味??」
は?趣味、つまり会長個人の道楽で最新兵器を開発している?売るつもりもなく、ただ作りたいから?
…素敵じゃないですか。
「ドルマンの旦那、あんまり迂闊なことを言わないでくれよ。お嬢が悪巧みしてるぞ」
「そいつぁ悪かったな、次からは気を付けるよ」
失礼な、ちょっと私の中でライデン会長の好感度が上がっただけです。
道楽で最新兵器を作って、それの成果を手に入れたいのでしょう?作ったからには使いたい。技術者の性ですね。私の役に立つなら大歓迎です。
「ドルマンさん、先方にはくれぐれもよろしくお伝えください。以後もたくさん使って成果を届けるから試作品をたくさんくださいとね」
「お嬢ちゃんの敵に同情するぜ」
「気が合うな、旦那。最後は相手が可哀想になるんだよ。お嬢は容赦って言葉を知らねぇからな」
「おー、おっかねぇ話だ」
「誤解があります。私は敵に対して容赦がないだけです。いや、敵に情けをかける道理がない」
「つまり、降伏も認めないって事だ」
「発明品を試す機会はたくさんありそうだな。早速案内してくれ。現地を見なきゃ何が必要か分からねぇからな」
「このお店の機械は?」
「適当に売り払ってくれて良いぜ?新しく揃えるからな」
「分かりました。費用は持ちましょう」
やれやれ、安い買い物ではありませんでしたが将来的に必ず回収できる投資を追えることが出来た一日でした。
疲れたから、明日はルイと出掛けますかね。