コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「研究院まで馬車で行くんだけど、馬車酔いする?酔い止めあるよ〜」
「一応飲んでおきますね、ありがとうございます」
「はぁ〜い、どうぞ」と言う返事と共に、錠剤と水の入った瓶を渡された。それを飲むと、馬車が動き出した。
「研究院は都市からちょっと離れた森の中にあるの、だから少し時間がかかるの、暇になったら寝てもいいからね」
少し沈黙が続くと、ノアは口を開いた。
「研究院って何をしてるところなんですか?」
そうノアは聞くと、ティティアは輝かしい笑顔で喋り始めた。
「とってもすごいのよ!魔鉱の事は知ってる?あれを使って動かす乗り物は研究院が考えたのよ!しかもね、それを考えたのは私のお姉様なの!」
ティティアは話し続けた。
「お姉様はね、とっても、とってもすごいのよ。少し…パパとママと仲が悪いけど、私にとっても優しくて、頭が良くて。困った人を助けてて、自慢のお姉様よ」
ティティアはとても自分の姉の事が好きなのだろう。ティティアは姉のことを話す時、通常より饒舌になっているようだ。
ティティアの話を聞いていると、研究院は魔鉱技術を使った戦争に役立つ機械の研究をしているらしい。
魔鉱とは通常の鉱石に神脈が発生し、魔脈と自動的に繋がり、特殊なエネルギーを持った鉱石の事らしい。魔鉱技術はそのエネルギーを使って機械を動かす技術。研究院が今まで作った物は、中央の国で起きた全ての戦争に必ず使われたらしい。
「研究院の人達は少し変わった人が多いって聞いたんですけど…」
「あ〜、うん…そうだねぇ。皆少し変わってるけど、ちゃんと優しい人達だから。安心して」
「あともう少しで研究員に_」とティティアが言いかけた時に、馬車が急に止まった。
「ルティ!どうしたの!?」
と、ティティアが御者に問いかけた。
「御嬢!魔物の大群が!」
「…分かったわ。ノアくんは馬車の中に隠れてて。危ないから」
そう言うとティティアは馬車の扉を開けて外へ行ってしまった。
「ルティ、私も戦うわ」
「御嬢!戦いは控えたほうが…もしも御嬢のお父様とお母様に_」
「バレたら怒られる…でしょ?」
「いいのよ、もう慣れてるわ。心配してくれてありがとう、ルティ。」
魔物は大体50体程度。数は多いが下級の魔物がほとんどだ。一匹群れのボスの様な存在の魔物がいるが、下級程度の魔物など
騎士団一番隊、『戰場の冰 』の異名を持つティティアの敵ではない。
早速、魔物が襲ってきた。
ルティとティティアは攻撃をかわし、ティティアは魔物との距離を一気に縮めた。ティティアは自分で作った氷の槍で魔物を貫き、他の魔物の所に目掛けて投げた。一方でルティは攻撃をかわした後、魔物が群れている所に無数の針のような鋭い水の魔法を放った。
「御嬢!危ない!」
魔物の攻撃を氷の槍で防御し、魔物が槍を掴んだ時に槍ごと魔物を投げ、一本氷の槍を作り、それで魔物の腹を貫いた。
「後は貴方だけよ。大きな魔物さん?」
ティティアはそう言うとちらりと先程の群れのボスの様な魔物の事を見た。
魔物が唸り声を上げると、魔物は自分の方に背を向けているルティ目掛けて勢いよく腕を振りかざした。
「罠にハマったな!クソ野郎!」
ルティは魔物の片目に炎を直撃させた。ティティアは片目を押さえて暴れている魔物の後ろに回り、氷の槍で心臓を貫いた。
魔物は徐々に粉になって消えてしまった。
「御嬢!怪我はないですか?」
「大丈夫よ、でも…お洋服が汚れちゃったわ。怒られるのは慣れているけど、やっぱり嫌ね、めんどくさいもの」
「大きい音がしましたけど…大丈夫ですか…?」
馬車の扉からひょっこり頭を出してノアはティティア達に喋りかけた。
「ノアくん!もう大丈夫だよ〜」
「はぁ…よかった」
ノアは大きく息をついた。
「ルティ、馬車を走らせて」
「はい、御嬢」
気が付くとノアは知らない場所に居た、目の前には沢山の人達が集まっている。その人達は誰かに向かって罵詈雑言を浴びせているようだ。何があったのか聞こうと、近くの人に声をかけたが返事がない。周りの声で自分の声が聞こえていないのかとノアは思い、もう一回声をかけたが、やはり返事がなかった。肩を叩こうとしたら自分の手が当たらなかった。正確に言うとすり抜けた。自分の手を見ると手が透けているようだ。これなら何があるのか見に行けると思い、ノアは前の人達をすり抜けながら前に進んだ。前にあったのは、断頭台だった。しかも今、処刑される人が居るのだ。見たことがある。ノアは処刑される人に懐かしさを感じた。
(あの人は…)
あともう少しで思い出せそうな時、断頭台の刃が落とされた。
「_アくん…!ノアく〜ん!」
「あっ、やっと起きたぁ〜。着いたよ〜」
「え…あっはい」
馬車から降りると、黒い建物があった。ここが
研究院らしい。お金のたくさん持ってる人が住む屋敷のようだ。
「ここ、騎士団本部よりかはちょっと小さいけど、豪華でしょ?」
「行きましょ、みんな待ってるわ」
「はい…」
さっきのは夢だったようだ、あの人を見て見覚えがあると思ったということは、過去に面識があったのだろうか。
「…ノアく〜ん?どうしたの?」
「えっ、すみません!すぐ行きます!
あの人を思い出すことができたら、少しは記憶を取り戻すことができるのだろうか。ノアはそう考え、ティティアを追いかけた。