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警視庁・捜査一課特別捜査室。
黒瀬鷹真はコーヒーを口にしながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
数週間前の東京駅爆破未遂事件は、奇跡的に最小限の被害で終わった。
だが、Epsilonの正体はいまだ不明のままだ。
「……あの時、撃ち抜いたのに。結局、逃げられた。」
黒瀬は静かに呟く。
「らしくないな、黒瀬。お前が過去に引きずられてるなんて。」
ドアの向こうから神城烈が入ってくる。
彼は片手に捜査資料、もう片手にカップラーメン。
「……胃が痛くなる食生活だな。」
「お前の説教の方が消化に悪い。」
軽口を交わす二人のやり取りを遮るように、通信端末が鳴る。
氷室悠真からの緊急通話だ。
『新宿・西新宿タワービルで不審者。
侵入者がサーバールームにアクセスしてる。警備カメラが――“Epsilon”を検出した。』
黒瀬の表情が一変する。
「……現場へ急行する。神城、行くぞ!」
深夜1時、タワービル42階。
吹き抜けのガラス越しに、東京の夜景が広がる。
サーバールームは冷たい青い光に包まれ、電子音だけが響いていた。
神城が制御盤を確認する。
「侵入経路は?」
氷室の声が無線に返る。
『外部からのアクセスはなし。内部からだ。……誰かが“中にいる”。』
次の瞬間、照明が落ちた。
暗闇の中で、モニターだけが光る。
スクリーンに現れたのは――Epsilonのマスク。
「再会だな、黒瀬。」
「てめぇ……!」
黒瀬が銃を構えるが、Epsilonは映像越しに笑った。
「俺を追うな。
今夜奪うのは“データ”じゃない。――お前たちの“信頼”だ。」
警報が鳴り響く。
制御システムが暴走し、ロックされた扉が自動的に閉じていく。
神城が叫ぶ。
「氷室! 出口が封鎖された!」
『待て、解除コードを探す……だがこれは……』
氷室の顔色が変わる。
『この暗号、俺しか知らないはずの署名が使われてる……!』
黒瀬が息を呑む。
「まさか、内部に……!」
氷室の声が震える。
『いや――これは、“俺自身”のデータだ。
つまり……Epsilonは、俺の過去を使っている!』
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