テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
35
悪
416
め.
43
#ご本人様には関係ありません
ゆずそーだ🍊🫧
9,579
あの日から。
ちぐさくんの前に現れる白い花は、少しずつ変化していた。
最初はただ綺麗なだけだった。
でも今は違う。
見るたびに、自分の隠していた気持ちを映しているような気がした。
「……また出た」
夜の帰り道。
街灯の下に、白い花が一輪咲いている。
ちぐさくんはゆっくり近づいた。
「君は、何なの?」
問いかけても答えはない。
ただ、花びらが風に揺れる。
その瞬間。
頭の中に、知らない声が響いた。
『笑顔の裏に隠したものは、消えない』
「……」
胸が苦しくなる。
「俺は……隠してるつもりなんて」
そう言いかけて、言葉が止まった。
本当は分かっていた。
寂しかったこと。
怖かったこと。
誰かに気づいてほしかったこと。
⸻
「ちぐ」
翌日。
まぜ太が声をかける。
「なに?」
「昨日、また一人でいた?」
「え?」
「顔に出てる」
「そんなに?」
「うん」
まぜ太は真っ直ぐ見る。
「ちぐ、嘘つくの下手になった」
「えー?」
ちぐさくんは笑う。
でも。
今度は前みたいな完璧な笑顔じゃなかった。
⸻
「ちぐちゃん!」
あっきぃが近づいてくる。
「今日さ、終わったらみんなでご飯行かない?」
「いいね!」
「じゃあ決まり!」
そのやり取りを見て、ぷりっつが笑う。
「やっぱみんなでいる方がええやろ」
「ぷーのすけ、珍しくいいこと言うじゃん」
「珍しくは余計やろ」
そんな会話に、ちぐさくんも笑った。
⸻
でも。
夜になると、また花は現れた。
「……」
今回は違った。
白い花の隣に、小さな黒い花が咲いていた。
「黒……?」
触れようとすると。
『これは隠した痛み』
声が響く。
「痛み……」
『見ないふりをした気持ち』
その言葉に、胸が締めつけられる。
「俺は……」
言葉が震える。
「俺は、弱いところなんて見せたくなかった」
誰もいない場所で、本音がこぼれる。
「みんなに必要とされたい」
「嫌われたくない」
「置いていかれたくない」
その瞬間。
後ろから声がした。
「ちぐ」
「……あっとくん?」
振り返ると、あっとが立っていた。
「聞いちゃった」
「……」
「ごめん」
「違う!」
ちぐさくんは慌てる。
「違うんだ、俺……」
「分かってる」
あっとは静かに言う。
「ちぐが頑張ってること」
「……」
「でもさ」
少しだけ笑う。
「俺ら、ちぐに完璧でいてほしいなんて思ってない」
⸻
その後。
気づけば、みんな集まっていた。
「え、みんな?」
あっきぃが笑う。
「探しに来た!」
まぜ太も頷く。
「一人で悩むと思ったから」
ぷりっつが言う。
「ほんま分かりやすいねん」
「ぷりちゃん……」
けちゃも優しく笑った。
「僕たち、ちぐが笑ってるところだけじゃなくて」
「泣きそうな顔も知りたいよ」
ちぐさくんは黙る。
そして。
小さく笑った。
「……みんな、ずるい」
「え?」
「そんなこと言われたら、隠せないじゃん」
⸻
その夜。
白い花と黒い花は、いつの間にか一つになっていた。
綺麗な色の花。
完璧じゃない。
でも。
それでも咲いていた。
ちぐさくんは思う。
隠したものが消えるんじゃない。
受け止めてもらうことで、形が変わるんだ。
コメント
3件
ぇうん、今回も最高だね、! まぜちぐのシーンが好きです…
うわぁ……第4話、すごくよかったです…! 白い花が黒い花を伴って現れて、ちぐさくんの心の奥の「隠した気持ち」が可視化されていく感じが切なかったです。みんなが探しに来てくれて「泣きそうな顔も知りたい」って言ってくれたシーン、じんわりきました。隠さなくていいって思える場所があるって、本当に大事ですよね…。最後の花たちが一つになってる描写、綺麗だなって思いました。