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第21話【暴露された宝物と、魔皇帝の純情】
「今さら大天使に戻るなんて、絶対に嫌なんだけど」
最強ゆえに超マイペースな堕天皇帝。
最高神の直々の復権命令すら一秒で一蹴したレミエルの冷ややかな言葉に、ゼウスの黄金の思念体は一瞬、言葉を失った。
だが、さすがは世界の頂点に君臨する神というべきか、ゼウスはすぐに楽しげな、すべてを見透かしたような笑みを浮かべた。
「ふっ……。相変わらず、組織に縛られるのを嫌う男だ。だがレミエル、君がいくら『めんどくさい』と拒もうとも、ここにいる魔皇帝の想いは別のようだが?」
「……え?」
レミエルが不思議そうに長い睫毛を揺らした瞬間、ゼウスの視線は、彼の隣で大きなお腹を抱えているアイラナへと移った。
「魔皇帝よ……。800年前、かつての大戦の別れ際にレミエルから貰ったあの『白い羽』は、今も肌身離さず大事にしておるみたいだな」
「な、ななな……っ!?!?!?!?!?」
その言葉が静かな執務室に響いた瞬間、アイラナの脳内は爆発した。
みるみるうちに顔が真っ赤に染まり、レッドダイヤモンドの瞳が ՞⸝⸝𖦹ᜊ𖦹⸝⸝՞ と完全にキャパシティオーバーを起こしてグルグルと回り出す。
それは、アイラナが誰にも言わず、この800年間、命に代えても守り続けてきた最大の秘密だった。
天界から飄々と去っていくレミエルから、別れ際に不意に手渡された、彼が堕天する前の純白の輝きを残した一枚の羽。
辛い時も、孤独な時も、魔皇帝としての重圧に押し潰されそうな時も、アイラナはその白い羽をそっと抱きしめて彼を想い続けてきたのだ。
レミエル本人はおろか、部下にすら絶対に知られたくなかった乙女の純情。
それを、あろうことか本人の目の前で、最高神によってあっさりと暴露されてしまった。
「な、何を、何を突然デタラメを言っているのだ、この不届きな最高神めっ!!!!! 私は魔皇帝だぞ!? 天界の長だからと調子に乗るな!! 早くそのふざけた思念体を消して天界へ帰れっ……!!」
アイラナは普段の冷徹な魔皇帝の威厳などどこへやら、՞⸝⸝𖦹ᜊ𖦹⸝⸝՞ と完全にテンパりながら、身振り手振りで必死にゼウスの黄金の光を追い払おうとあわあわ怒り狂う。
そのウブすぎる反応は、ゼウスの言葉が「大正解」だと証明しているようなものだった。
「おや、図星だったか。私はてっきり、君がレミエルを天界の大天使へと戻し、光の眷属として正当に結ばれる未来を望んでいるのかと思っていたのだがね」
ゼウスは楽しそうに笑いながら、あわあわと真っ赤になって抗議するアイラナの姿を満足そうに眺めている。
一方、その隣で。
自身の「白い羽」が800年もの間、最愛の妻に宝物として大切に保管されていたという衝撃の事実を知らされたレミエルは――。
「……え。アイラナちゃん、あの羽、まだ持っててくれたの?」
薄紫色の瞳をこれ以上ないほど丸く見開き、驚きと、それ以上に溢れんばかりの愛おしさで胸を詰まらせていた。
めんどくさくて捨てたはずの過去の遺物が、彼女にとってはかけがえのない絆だったのだと知り、レミエルの心は一瞬で極上の甘い熱に支配されていく。
「ち、違う! 違うのだレミエル!! あれは、その、魔力の研究材料としてだな……っ!」
必死に顔を真っ赤にして言い訳をするアイラナ。
そんな彼女の大きなお腹ごと、レミエルは背後からそっと、しかし絶対に離さないという強い力で、優しく抱きしめた。
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ぽんぽんず
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