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ぽんぽんず
第22話【最強の交渉と、勝ち取った永遠】
「ち、違う! 違うのだレミエル!! あれは、その、魔力の研究材料としてだな……っ!」
必死に顔を真っ赤にして言い訳をするアイラナ。
そんな愛おしすぎる妻の大きなお腹ごと、レミエルは背後からそっと優しく抱きしめた。
「うん、そうだね。研究材料だね、アイラナちゃん。……嬉しいな。800年も大切にしてくれてたんだね」
耳元で囁かれるレミエルの極上の激甘ボイスに、アイラナは ՞⸝⸝𖦹ᜊ𖦹⸝⸝՞ となって完全に茹で上がってしまう。
そんな二人の極甘空間を邪魔するように、黄金の光を放つゼウスの思念体が「ふむ」とわざとらしく声を漏らした。
「仲睦まじいのは結構だが、レミエル。話を聞いていたかね? 君の咎を解き、大天使の座に戻すことは既に天界の最高幹部会でも決定している。確約済みの事項だ。
さあ、大人しく天界へ帰還し――」
「ねえ、ゼウス。人の感動的なシーンの邪魔をしないでよ。それにさ、大天使に戻ることは、別に僕もいいよ?」
「ほう? ついにその気になったか」
レミエルがあっさりと承諾したことに、ゼウスは満足げに頷き、抱きしめられているアイラナはハッとして小さく身体を強張らせた。
だが、レミエルの薄紫色の瞳の奥に、冷酷で狡猾な「ドSの輝き」が宿るのを、ゼウスは見落としていた。
「ただし、天界の仕事は一切受け持たない。僕はもう、人間界のミラディア帝国を統治する『王』だからね。すでにそっちの責任があるから、天界の面倒なデスクワークなんてやってる暇はないんだよ」
「それは困るな。大天使とは天界の秩序を維持する職務だ。名前だけで仕事をしないなど――」
「困らないよ…だって、ゼウス。
君はかつて、僕が天界から逃げ出して人間界の王になった時、僕にこう約束したよね?」
レミエルは長い睫毛を不敵に押し上げ、冷ややかな流し目を最高神へと向けた。
「『天界からのサポートを一切受けずに、人間界の自国(ミラディア)の人口を100万人に到達させた暁には、一つ望む褒美を取らせよう』……って。覚えているでしょ?」
ゼウスの思念体が、一瞬ぴくりと揺れた。
「……確かに、そのような約束をしたな。それがどうした? まさか、これから達成するとでも――」
「これからじゃないよ。僕のミラディア帝国は、天界の助けなんて1ミリも借りずに、僕の力だけで【とっくに人口100万人を超えている】。条件は完全にクリアしてるんだよね」
「な、何だと……!?」
レミエルの言葉に、ゼウスの思念体が驚愕で激しく明滅した。
「僕が大天使の座に復権することは、君がさっき『決定している』『確約済み』って言った。僕の咎が解けるのは確定事項だ。だったら、僕が今ここで請求する『人口100万人達成の褒美』は――【天界への帰還は絶対にしない(人間界で生きる)】。これにするよ」
大天使への復権を認めさせつつ、その地位と最強の力を保持したまま、職務を永遠に放棄して人間界に居座る。
最高神の「確約」と「過去の約束」の隙を完璧に突いた、レミエルの完全なる論理的勝利(ハメ技)だった。
「これで文句はないよね? 天界のトップが、大天使との約束を破るなんて格好悪い真似、まさかしないよねぇ?」
ククッ、と意地の悪い笑みを浮かべるレミエル。
天界を統べる最高神相手に、完全にマウントを取ってみせたのだ。
「……はぁ。相変わらず、とんでもなく頭の回る男だ。まさかあの時の約束を、天界からの永住許可証代わりに使われるとはな」
ゼウスは降参したように大きなため息をつくと、その黄金の光を徐々に薄れさせていった。
「認めよう、レミエル。君の咎を解き、大天使へと戻す。そして君の望み通り、天界への帰還義務は永遠に免除し、その身を人間界に置くことを許そう。……魔皇帝よ、その男はもうどこにも行かん。精々、末永くその傲慢な男を繋ぎ止めておくがいい」
最後にそう言い残し、最高神ゼウスの気配は、今度こそ完全に魔界から消え去った。
「レミ、エル……お前、本当に天界に戻らないのだな……?」
まだ顔を赤くしたまま、アイラナが信じられないといった様子で夫を見上げる。
レミエルは彼女の大きなお腹に優しく手を当て、愛おしさが爆発したような極上の笑顔を浮かべた。
「あったり前でしょ? 僕の大切な宝物(白い羽)を800年も持っててくれた可愛い奥さんと、もうすぐ生まれる双子を置いて、誰が天界なんてめんどくさい場所に帰るもんですか。……さあ、邪魔者も消えたし、アイラナちゃんをベッドまで運んで、これまでの800年分の愛をたっぷりお話しなきゃね?」
「なっ、ベッドだと!? まだ執務が……っ、ひゃあ!?」
お腹に負担をかけないよう、極上の優しさでお姫様抱っこをされる魔皇帝。
こうして、二人の「絶対に離れない未来」が、完璧な形で約束されたのだった。
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