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「ナキ村から来たのか。入市税として一人銅貨一枚だ。あるか?」
街の門番から言われたナキ村とは、レビン達の故郷の村である。
この世界は貨幣制度があり、この国だけではなく大陸で流通している。
鉄貨:この世界で流通している最低貨幣
銅貨:1枚鉄貨10枚分の価値
銀貨:1枚銅貨10枚分の価値
金貨:1枚銀貨10枚分の価値
白金貨:1枚金貨100枚分の価値
パン一枚が銅貨1枚程度。宿の素泊まりで銀貨3枚程度。
形やデザインは各国で多少異なるが、価値は同一である。もちろん金の含有量により価値は変わるが、それをさせない仕組みがあるため問題はない。
「はい。こちらでいいでしょうか?」
レビンは貨幣袋から銅貨2枚を取り出して門番に渡した。
「ようこそ『ガウェイン』へ。街の中で野宿はするなよ?衛兵に見つかると追い出されるからな」
「はい!ありがとうございます!冒険者ギルドはどこにありますか?」
気のいい門番だった為、レビンはどうせならとギルドの場所を聞いた。
入市税が安く設定されているのは、街の出入りを容易にする為である。長い年月をかけて今の金額に落ち着いたようだ。
そしてこの街はガウェイン。後に出てくるが、ブルナイット王国ガウェイン伯爵領ガウェインがここの正式名称である。
最後のガウェインを外し、ナキ村に変えるとレビン達の故郷の正式名称となる。
ギルドの場所を聞いたレビン達は、田舎者特有のキョロキョロを発動しつつ目的地へと向かった。
「街って凄いのね…建物が木以外でも作られているわ」
ガウェインの街は領都であるため、比較的都会だ。
二人の視線はレンガ造りだけでなく石造りの建物もあるのかと、驚愕のものになっていた。
もちろんレビンは以前に来た事はあるが、その時とは見る視点が変わっていた為、おのぼりさんを二人でする事になったのだ。
以前は建物より、人ばかり見ている子供だったのだ。
「あれだと思うんだけど。どうかな?」
レビンの視線の先には、2本の剣が交差した絵が描かれた看板を提げた建物があった。
「門番さんの言っていた通りね。あってると思うわ」
「じゃあ入ろうか」
カランカランッ
二人が建物に入ると、入り口の扉に付けられていたベルが鳴った。
その音に少し驚いた二人だったが、ここで驚いたら恥ずかしいとわかる程度には街での常識があった。
「すみません。冒険者になりたいのですが、ここであっていますか?」
入り口の正面にあったカウンターの向こうにいる職員と思われる人に声をかけた。
「そこは買い取り用の窓口です。こちらでお伺いしますね」
横から声をかけられた。
「す、すみません!お願いします!」
買い取り用のカウンターから横にズレて、レビンは声を掛けてくれた20歳くらいの女性に頭を下げた。
買い取り用のカウンターと同じカウンターだが、場所は入り口より中に入ったところにある。
「お二人ともご登録でしょうか?」
「は、はい。何も知らないので説明をお伺いしてもいいでしょうか?」
「もちろんです。まず冒険者ギルドについて説明します。ギルドは冒険者と依頼主を繋ぐお手伝いをさせていただいています。あちらに見えるボードに依頼主からの依頼を貼り出しています。
それ以外にも、常設依頼として魔物の討伐、素材の買い取りをしています。薬草や魔物、動物の素材の買取は、先程のカウンターに冒険者タグと共に出してください。
あちらにあるマップに、出没する魔物の分布が記されているのでご活用下さい。
冒険者タグとは、ギルドが作っている冒険者専用の身分証になります。そちらを使えばギルド、出張所がある町や村への入市税が免除されます。
冒険者タグにはランクがあり、初めは鉄、次に銅、銀、金、白金とあります。
鉄ランクは常設依頼を一週間以内に必ず一度は行わなければ資格剥奪になります。
剥奪されても、もう一度登録する事は出来ます。
銅ランクは常設ではない銅ランクの依頼を月に一度は必ず行ってください。
銀ランクは半年以内に銀ランクの依頼を。
以上が行われなければ資格剥奪となり、また鉄ランクからの登録になります。
金ランク以上はギルドの禁止事項に抵触しなければ剥奪はありません。
ここまでご理解頂けましたか?」
長い説明になったが、レビンは頷きを返した。基礎知識ももちろんあったが、それ以上に細かい事が好きな為、すんなりと頭に入っていった。
ミルキィは…残念ながらレビン任せのようだ。
「登録には登録費が銀貨2枚必要です。税はギルドが国に支払いますので、特に掛かりません。タグの紛失時はランクに応じての負担をお願いします。それと、レベルが0の方は登録をお断りする場合があります。
こちらは冒険者をする気がないのに登録する人を除外する為の制度ですので、気にされなくとも大丈夫です。
以上で説明を終わります」
「ありがとうございます。登録をお願いします。あっ。二人分です」
「わかりました。こちらにわかる範囲でご記入下さい。代筆は必要ですか?」
「大丈夫です」
渡された紙には名前、出身地、年齢、職種の項目があった。
職種は自己申告である。武器を所持していても剣士だから狩人だからと衛兵などに言い訳出来るようにする為でもあるし、他にも理由はあるが今は置いておく。
二人は項目にそれぞれ記入した。職種については空欄のまま提出した。
「レビン・カーティスさんとミルキィ・レーヴンさんですね。受付のアイラ・ドルフィンと言います。よろしくお願いしますね。
タグが出来たら呼びますので、暫くお掛けになってお待ちください」
「はい。よろしくお願いします」
二人はアイラに会釈をすると、二人から見て後ろにある長椅子に腰を掛けた。
「ちょっと。お金は大丈夫なの?」
「うん。狩りの手伝いで貯めたお小遣いがあるから大丈夫だよ」
「そう。後で返すから覚えておいてね」
ミルキィは貸し借りには細かい。
「いいよ。僕の我儘に付き合ってくれてるんだもん。これくらいは出させて」
「はぁ。わかったわ。その代わり稼ぎ始めたら折半よ!」
こうなると意地の張り合いになり、殆どはレビンが勝つ為ミルキィは早々に諦めて未来への布石を打つ事にした。
「うん。それよりもレベルってどこで測れるんだろう?」
もはやレビンの頭の中はその事で一杯だった。
それでさっきからキョロキョロしているのだと、ミルキィは合点がいった。
(受付のポニーテールの女性が可愛かったから探していたんじゃなかったのね…良かった)
「アイラさんに聞けばいいじゃない。ほら。呼ばれたわよ」
先程のカウンターでアイラが二人に手招きをした。
最初アイラは、二人が依頼主の可能性を考慮して畏まっていたが、冒険者志望だとわかり、普段の飾らない対応へと戻っていた。
「出来ましたよ。こちらに血を垂らしてください」
アイラが差し出したタグは鉄で出来ていた。どうやらそれに血を垂らすようだ。
レビンは渡された針で躊躇なく小指を刺すと、自身の名前が刻まれたタグに血を垂らした。
ミルキィはその血を見て涎が出そうになったが我慢した。この事は幸い誰にも気付かれなかったようだ。
「えっ!?」
血を垂らしたタグを見つめていたレビンが、驚愕の声を上げた。
そこには
『レビン・カーティス。15歳。ナキ村出身。レベル1』
と刻まれていた。
正確には、レベルの項目だけ後から浮き出てきた。
「?ああ。レベルですね?こちらは複製不可の魔導具になります。不思議でしょうけど機密事項だからおしえられないの。それと、現在のレベルを確認する為にはまた血を垂らせばいいですよ」
レビンが驚いたのはそこだが、正確にはレベルが1という事に対してだ。
(ここでレベルの表示が低いって言えばおかしな奴だと思われるよね?ミルキィの事があるから、なるべく怪しまれる行動や言動は避けたい。聞くのはやめておこう)
「わかりました」
レビンは平静を装い、アイラに返事をした。
そしてミルキィも同じように血を垂らすと、そこには……
『ミルキィ・レーヴン。15歳。ナキ村出身。レベル2』
と表示された。
二人とも驚いたが、ここでは騒がない。レビンは前述の理由からだが、ミルキィはレビンが何も言わないのであれば言わない方がいいのだろうという信頼からだ。
「凄いですね!まだ冒険者でもない成人したばかりの女性で、レベル2は少ないですよ!もちろんそこそこはいますけど、それでも低いより高い方がいいですからね!後、ランクにも影響しますし!」
何だか聞きたいことが増えたなとレビンは思ったが、今日の所はここまでにしようと、口を開いた。
「登録は終わりましたか?良ければ宿を教えて欲しいのですけど、オススメの宿はありませんか?」
「登録は以上です。宿はここの正面にある宿がオススメですね!ただ安いプランだと大部屋に雑魚寝ですのでオススメは出来ませんが。お二人で一部屋だと値段にそこまで違いはないのでオススメですよ!」
「向かいの建物ですね。ありがとうございます」
「ありがとうございました」
二人はアイラに礼を述べてギルドを後にした。
レベル
レビン:1→1
ミルキィ:2→2
〓〓〓〓〓注意書き〓〓〓〓〓
貨幣価値ですが、金銀銅鉄で地球とは感覚が違うので、この世界はこんなものかと思っていただけたら有り難いです。
想像しやすくする為に以下は作者の現在のイメージです。
一鉄貨=十円くらいの価値のイメージです。
全て同じサイズで十円硬貨と五百円硬貨の中間のイメージです。
物価はこの世界でも場所により変動します。
気にならなかった方はそれぞれのイメージで問題ありません。
後、含有量を定める方法は物語にあまり関係ないので省きました。
異世界不思議パワーとでも解釈してくれたらOKです。
納得出来ない方は各国に含有量を量る魔導具があるとでも思って頂ければ幸いです。