ー美しい皇族ー
ドアの向こうから急に現れた人物に、英雄の目は惹きつけられた。
銀と青をベースにし、繊細な刺繍が綺麗な皇帝衣装。そんな豪華な衣服を身にまとっていてもわかる、彼の身体の華奢な具合。すっと通った鼻筋、小さな口、目はまるで宝石のようで、黄色と水色の混ざった華やかな色だ。長くて白い髪を、後ろで少し束ねている。
「わぁ…なんて美しい人なんだ…」
英雄が見とれていると、彼は不機嫌そうに頬を膨らませた。
「何を見ている。起きているならさっさと言えばよかったのに。お前を助けたのは私なんだからな。少しは感謝くらいしたらどうだ。」
「あ、あなただったんですね。本当にありがとうございます。俺としたことが不甲斐ない。」
英雄がこんなに律儀に感謝を伝えると思っていなかったのか、彼は大きな目をさらに大きくした。
「べ、別にこれくらい当然のことだ。人助けは出来て当たり前だからな…。」
おどおどした口調で、照れているのだろうか。その話題から逃げるように、彼は話を逸らした。
「そういえば、お互いのことを全く知らないではないか。お前の名はなんだ。」
「エクス・アルビオと言います。コーヴァス帝国の出身ではないので、名前に違和感を感じるかもしれませんね…」
エクスが笑って続ける。
「あなたの名は?」
すると皇族は、またもや頬を膨らませて不満をあらわにする。
「私はコーヴァスではかの有名なイブラヒムだぞ!お前に名乗る義理はない。知りたければ自ら調べることだな。」
エクスは、そんな彼が可愛く、おかしく思えてフフッと微笑んだ。
「分かりました。イブラヒム様。」
すると彼は、顔を赤くして自分の言葉の矛盾に気づくのだった。
「あ…間違えた…」
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