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ワンク
少しR18
よろ
窓の外では、逃げ惑う生徒たちがホシグモ菌に肺を焼かれ、校庭のあちこちで「星」のように点々と倒れ伏している。それはあまりに無慈悲で、残酷なほど美しい光景だった。
「夢奈! るびあさんも!」
廊下で後を見ると走って逃げて来た親友の七虹宙を発見した。そしてその隣には、もう1人の親友
の相羽あいかがいた。
いつもなら取り巻きに囲まれて笑っているはずのあいかだが、今の彼女は、宙の制服の袖をちぎれんばかりの力で握りしめている。
「生きてて良かった……本当に……」
宙が私に駆け寄り、肩を抱く。その体温に安堵しかけた瞬間、私は見てしまった。宙にしがみつくあいかの口元が、わずかに吊り上がっているのを。
あいかは恐怖しているのではない。この地獄のような状況に、、宙という「たった一人の執着対象」を見つけたことに、悦びを感じている。
「ねぇ宙、どこまで逃げる? あたし、宙と一緒ならどこだっていいよ。死ぬ時だって、一緒がいいな〜!」
あいかが宙の耳元で囁く。その声には、陽キャ特有の明るさと、一線を越えた狂気が混ざり合っていた。彼女は宙の指先に付着した誰かの返り血を、愛おしそうに舌でなぞった。
私はそれを見て、胃の奥からせり上がる不快感に眉をひそめた。
「きっしよ、、、あんた本当に夢奈のダチ?」
私の独り言は、誰にも届かなかった。
私たちは理科室に逃げ込み、内側から鍵をかけた。静まり返った室内で、るびあが私の顔を覗き込んでくる。
「夢奈。なんで、私だったの? 姪ちゃんだって反省していたかもよ?」
るびあの問いに、私は感情を殺したまま答えた。
「あんたは、私のフランス人形だから。勝手に壊れて、誰かに汚されるのは許さない」
それは愛の告白ではなかった。単なる所有宣言だ。けれど、るびあの瞳には熱い光が宿り、彼女は私の冷たい手を、まるで聖遺物でも扱うかのように両手で包み込んだ。
窓の外では、第2波の毒ガスが夜空を飲み込もうとしていた。
砕け散る運命の星たちが、私たちを嘲笑うように輝いている。
宙とあいかが、互いの存在を確かめ合うように密着し、重なり合う。
私たちはまだ、死んでいない。
けれど、ここから始まるのは「救い」などではないことを、私だけが知っていた。