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例えばこれまでの人生をどこかに書き残したとしても、読む人など唯の一人さえ見つからない。宇宙はこんなに広いのに、彼は文明網からはずれていた。コミュニケーション網からはずれていた。知的構造の枠外にいる。例えば目を覚ましたら太平洋上のいかだの上だったとしたら、どんなに嬉しいことだろう。ヒマラヤ山脈の頂上でもいい。ここよりはずっといい。今は、そこへ行くことが唯一最大の目標なのだ。
闇側の窓を眺めていると、とっくに目は慣れているはずなのに明るみが増してこない。普通なら闇は青みから紫み、赤みが浮かんでくるのだが。長い宇宙生活でも、こんな経験は初めてだった。