そんなとき、どこからか「神様」という声がした。しかし、どこを見ても誰もいるはずはない。船は漆黒と光の境目を、静かに潜行しているだけなのだ。
「神様」ともう一度、今度はもっとはっきりと聴こえた。ついに俺は精神の病にかかったのか、と郷田は心で言った。すると「そんなことないですよ」とあらぬ声は答えた。正確には声というよりは透明で、これまでしてきた独りごと、普通の自己内対話の延長といえば、そうとも言えそうだった。
お前は誰だ、と恐るおそる問いかけてみる。
「私はあなたの一面です」と声は答えた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!