テラーノベル
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――――緊張の面持ちの愛らしい蓮美を家に招き入れた。
オレンジジュースをグラスに注ぎ、ソファーに隣同士で腰掛けた。
「美味しいわ。のどがまだ渇いてた」
蓮美がニコッと豊のほうを見た。
豊は……我慢出来ず、蓮美の華奢な左肩を抱いた。
見つめ合う二人。
そして豊と蓮美は狂ったように愛し合った。
豊は、恋人はいないが玄人さんのいるお店で経験があった。しかし、豊にはわかった。蓮美は初体験だったのだなと。
その後も二人はお昼までベッドの上で、撫で合ったり触れ合ったり愛を謳歌した。
朝、思いきり食べたせいで豊はランチタイムになっても空腹にならなかった。今日は蓮美のおなかの音もしない。
二人は見つめ合い黙っている時間が長い。互いの目に映る自分を確かめて、さだめという言葉を相手の瞳に探している。
なんとも幸せそうな顔をしている滑らかな肌の蓮美。色黒の豊と対照的だ。
二人はともにシャワーを浴び、リビングでひと息つく事とした。
「コーヒーのほうが良いかい? 蓮美」
思い切って呼び捨てをしてみる豊。
「はい、豊。アイスコーヒーを下さい」
至極自然に蓮美は同じく呼び捨てで返して来た。
一つに結ばれた今、二人がリラックスしている。
グラスを2つテーブルに置いた豊が蓮美の隣に座った。
「蓮美、好きだよ」
「あたしもよ、大好き。豊」
そしておもむろに蓮美が言った。
「豊? あたしの事が知りたいのね。きのうそう言ってくれた」
「うん、とても知りたいよ。そうして蓮美とこれからうんと幸せになりたい」
蓮美は一口アイスコーヒーを飲んだ後、少し俯きがちに話し始めた。
「あたしは、これまでずっと引っ越しが多かったんだ。子どもの頃からよ。するとね、上手に人とコミュニケーションが取れなくなって行ったの」
豊は今蓮美の頭を撫でている。黙って聴いている。
「でも、豊に逢えたから嬉しい。なんだか力が湧いて来るの。きっとあたし、人とも上手くやって行けるようになる」
「うん」
豊は穏やかに返事をした。
「豊のお話しを聴かせて」
「オレ? オレは平凡なサラリーマンだよ。あ、鞄の製造会社の本社で事務をやっています。企画とね」
「そう。素敵ね、鞄の会社なのね」
「うん。昔から鞄や財布が好きなんだ。作るほう、職人になりたかったぐらい」
「へ~」
目を丸くして頷く蓮美。
「あたしはこれから、どんなお仕事をしようかなー」
「そうだね、蓮美はとてもエレガントだからデパートの店員さんとか似合いそう」
「うふふ。ありがとう。でも、あたしには接客業は向かないかな。人が怖いわ」
その時、豊は蓮美のおしゃべりを丁寧に聴いてあげようと思った。
「うん。そうなんだね、蓮美」
「虐められっ子だったの、ずっと。だから人が怖いし、上手く付き合えないのよ」
豊は、この繊細な女性を離すものかと思うと同時に、悲しい思いをして来たのかと胸が痛んだ。
「パパとママは昔から優しいのよ。学校でずっと意地悪をされ続けていたの」
豊は決して更に彼女を傷つけたくはない。だから聴くだけだ。なにをも問うたりしない。
「あ、ああっ、うぅ……」
蓮美が泣き出してしまった。
(可哀想に!)
豊は包むように蓮美をそっと抱きしめた。
その刹那。
部屋中がセピア色に変わった。
(え!?)
しかしそれはほんの数秒の事だった。疲れ目だろか?
顔を上げキスをねだる蓮美に口づける豊。
これからもずっと蓮美を守り続けようと胸に誓った。
蓮美にはさっきの部屋の変化は見えなかったらしい。俯き泣いていたのだから。
しかし、口づけた後泣き止んだ蓮美に要らぬ事は言わずにおこうと思った豊。
「ねえ、豊……」
一生懸命笑おうとしている表情の蓮美。
「うん? 蓮美」
「今度は海へドライブに行きたいよ」
「良いよ! 行こうね、蓮美」
――――その後二人は、海ならどこが良いかな~、とか、テレビで放映されている連続ドラマについてとか、蓮美の左右の足のサイズがかなり違い靴選びに困るのだという話、はたまた豊は、ニューデザインの鞄のアイディアを蓮美から拝借したり……と話し込んでいるうち、知らぬ間に夕暮れがやって来た。
さすがにおなかが減ってきた豊。(腹減ったな)と思っていると、キュルゥ――――。
蓮美のおなかの音がした。
豊は、思い切って言った。
「蓮美、おなか空いているんじゃない? オレ、料理好きなの。オムライス食べない? 作るよ」
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