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私がまさか、アイドルになるなんて思ってもいなかった。
寧ろ、私は内気で恥ずかしがり屋。
アイドルなんて、縁なしだと思っていた。
5月某日。
私には親友が5人いる。楓と結愛菜、百々子に乃々巴、それから要。彼女たちは幼稚園の頃からの仲で、私が唯一、恥ずかしがらずに心を開ける相手。
中学3年生になった今でも、その仲は崩れたことがない。
「杏菜!」
中でも一番多く話すのは、クラスも離れたことがない楓だ。
「ゴールデンウィークに家族で旅行に行って来て、杏菜のために当地限定の杏仁豆腐買ってきた!」
「本当!?ありがと!」
楓は結愛菜達にも杏仁豆腐を配った。
皆で杏仁豆腐を食べているときに、不意に百々子が言った。
「杏菜って、アイドルに興味ない?」
「え?それって、どういう意味?」
「実はさ、私たち5人でアイドルオーディションを受けようと思うんだけど、杏菜もどうかなって」
百々子にいきなり言われ、私は戸惑ってしまった。
「あー……私?私は……やめとく」
「どうして?杏菜かわいいのに」
要が口をはさんだ。学校一のイケメン女子に「かわいい」と言われたら、同じ女でもなぜかときめいてしまう自分もいた。
「かわいい……?」
「そうだよ、杏菜。勿体ない」
「……分かった。考えとく」
そう言って、一旦この話は終わらせた。
家に帰ってからも、心のモヤモヤは残っていた。
私、本当にアイドルのオーディションなんて、受けてもいいのだろうか?
迷った私は、家族に相談することにした。
「私、今日百々子にアイドルのオーディションを一緒に受けないかって誘われたんだけど、受けた方がいいのかな?」
すると隣で、お兄ちゃんが吹きだした。
「杏菜、お前何言ってんの?アイドル?」
「……うん」
お兄ちゃんは「杏菜の人生だし、好きにしたら」と言ってくれたけど、両親は猛反対。
2人揃って。
「杏菜。アイドルになる前に、学業は完璧なの?」
「友達の誘いでも、断れ。杏菜には家業を引き継いでもらうからな」
あーはいはい。未だに女は家庭の考え方ね。古臭い。何時代よ。
でも、私は家業を引き継がないと最初から決めていた。理由は1つ。興味が無いから。
興味が無いだけで家業引継ぎを断るのも、自己中としか思いようがない。でも、本当に興味が微塵もないのだ。
結局、私は百々子たちの誘いに乗って、オーディションを受けることにした。