2週間後
凱旋門賞前日の夜
「明日か…」
「ローマは大丈夫デスか?」
「完治してないからな、不安が残る…」
ローマは頭痛に悩まされたけど、少しずつ回復し、なんとかトレーニングを続けた。
しかし、ローマが夢の中で見ていた赤いF1マシンをドライブし、さらにローマを名付けたという選手とは
「トレーナー」
「ローマ!」
「明日頑張るよ…!」
「あ、あぁ…頑張ろうな!」
ローマはそれを伝え、部屋に戻った
「ローマ、今までのレースでも、あんなに不安な顔したの初めてデス…」
「万全な対策で行ってるけど、今回はあまり…」
「正直…怖いデス…」
「俺も…」
「テイオー、マックイーン」
『ローマ!順調?練習上手く行ってる?』
「…うん、上手く行ってるよ!」
『…なんかありました?』
「っ!そんなことないよ!いつも通りだよ!」
『なら良かった!』
『けど、なんで電話かけてきたのです?』
「…2人のこと気になっちゃって」
『『 え?』』
「みんな元気でいるかなって思って…」
『心配いらないよ!みんな元気だよ!』
すると、テイオーは教室の辺りを回した
ネイチャやターボもいた
『おいっすー、明日頑張って!』
『ローマだ!ターボ応援してるよ!』
「…ありがとう!」
キーンコーンカーンコーン
「…じゃあまた!」
『頑張ってローマ!!』
ローマは電話を切った
「あれ…?」
ローマの目には、涙が
「…どうして?どうして泣いているの…」
突然の涙が溢れ、慌てるローマ。やはり夢のことが忘れられないのだろうか
「…ローマ」
「あっ、エル先輩…」
「ローマ、大丈夫デスか?」
「…大丈夫だよ!明日頑張らないとだし!」
『袖が濡れてる?泣いていたの?』
ギュュュ
「エル先輩?!」
突然、エルコンドルパサーがローマに抱いた
「…不安デスよね」
「えっ?」
「…実はエル、ローマに憧れているんデス…あの速さ、負けない強さ、憧れる存在…まさにルドルフ会長と同じ強さデス…」
「エル先輩…」
「…だから1着取れなくても、ローマは最強デス」
私はエル先輩の言葉に打たれてしまった。
「…ありがとう」
ローマは再び泣いた。ずっと苦しかったのだろう。無敗の三冠を取って、天皇賞・春でレコードを叩きだし、ユリノに僅差勝利など全てのレースでプレッシャーが強かった。
「ローマ、笑って!」
「え?」
エルはローマの頬を引っ張った。無理やり笑顔にさせられた
「エ…エルひぇんぱい?!」
「笑顔のローマは最高デス!!!!」
「…あ…ありがとう!」
エル先輩、こういう一面あるんだな
凱旋門賞当日
会場は大人数の客が来ていた。しかも派手な衣装を着ている人がたくさんいた
「………」
「後遺症が残っているのか?」
「…ううん、大丈夫」
「ローマ大丈夫デスよ、学園のみんながローマを応援してますから!!」
「…そうだね!頑張るよ!!」
「各国の代表がここに集う凱旋門賞!日の丸を背負ってやってきたスクーデリアローマ、果たしてトゥインクルシリーズの新たな歴史を刻むことが出来るのか?!」
日本
トレセン学園
スクーデリアローマの走りを見ようと、生徒みんなが夜遅くまで起きていた
栗東寮
「いよいよ始まるよ!」
「ローマさん、凱旋門賞を制してくれるかもしれませんね!」
「制覇したらとんでもない大騒ぎになるかもねえ」
「行けー!ローマ!」
美浦寮
「いいな!ターボも凱旋門賞行きたかったな!」
「あれだけの強さがあれば、制覇も夢じゃねーかも!」
イナリワン
大井から来たウマ娘。オグリキャップやスーパークリークの活躍を見て中央に来た。ツインターボとは寮の同室
「あら?イナリちゃんも釘付けですか〜?」
「イナリ!実はウチもや!」
「あの強さ、行けるかもしれないな!」
オグリキャップ
笠松から来たウマ娘。スペシャルウィークの上を行く大食い。今や中央のスターダムとなっているアイドルウマ娘
タマモクロス
オグリキャップとはライバルで、2度対戦したことがある。世紀の天皇賞・秋は語り継がれる対戦とも言える
スーパークリーク
オグリキャップやタマモクロス、イナリワンと同期、かなりの母性があり、母親的存在でもある
「ローマさん、勝てるかな?」
「あの強さなら、勝てるはずですね!」
ミホノブルボン
逃げを得意とするウマ娘。無敗の三冠まで行けそうだったが、菊花賞でライスシャワーに敗れ、ダブルクラウンを持っている
「ここでパドックにいる有名なウマ娘がいる模様です!」
国際映像から、エルコンドルパサーと三井が映った!
『世界最速!エルコンドルパサー!!スクーデリアローマの応援に来ました!!』
「エル、いつも通り元気ですね」
某自宅
「おい!あの人?!」
「三井優希、トレーナーだったのか?!」
2人の男性が三井のことに気づいた。
「監督、三井をどうかレースに戻してください!」
「………..」
「日本の皆サーン!エルコンドルパサーデス!今日はローマの付き添いデスよ!!!!」
「エルったら、向こうでも元気ですね」
同室のグラスワンダーも見ていたが、エルコンドルパサーの元気さのあまり嬉しさもあるが、少し呆れているかもしれない。まぁそこはいいとしよう!
栗東寮
「エルちゃん、向こうでも元気みたいですね!」
「まぁ全力でサポートしてきたからね〜」
「………」
「スズカさん?」
サイレンススズカは頑張って欲しいという思いはあるが、その顔は不安がある顔
「ローマちゃん、なんだか悲しそうに見えるわ」
「悲しそうですか?」
スペシャルウィークは分からなかったが、スズカはなんとなく気になっていた
フランス
「さぁ、各国の代表のウマ娘達がゲートインをしております!日本のスクーデリアローマもゲートイン完了しました!」
「………..」
「ワァァァァァァァァァァ!!!!」
なんで今?!大事なレースの前なのに?!
ローマは目を閉じた瞬間、夢の中で出てきたあの歓声が聞こえていた。モンジューの言っていたあの幻想の悪夢が。
(やめて!今はダメなの!大事なレースだから!お願いだから!!!!)
「っ!!!!!!」
バン!!!!!!!
「「?!」」
ローマはゲートを強く叩いた。その衝撃で左右のライバルは驚いていた。
「君…大丈夫?」
「…..大丈夫です、少し緊張しているだけです」
「さぁ、各ウマ娘ゲートイン完了しました!」
「ローマ、大丈夫デスかね?」
「…大丈夫、きっとローマなら!」
ガシャコン
「スタートしました!スクーデリアローマ好スタートを切りました!!」
ワァァァァァァァァァァ!!!!
日本
「スクーデリアローマいい感じだ!」
「最初は抑え時だぞ!」
トレセン学園
「遂に始まったか」
「恥の無いようになるといいですね」
「やっぱり海外のウマ娘は強い!けど、私の強さはこれだけじゃないからね!」
「スクーデリアローマは、2番手?!先頭から2番手の位置です!」
「先頭?!ローマは後方から差すのが得意なはずデス?!」
「大丈夫なのか、初めてやる策だぞ!」
「先頭はアイズクロス、2番手にスクーデリアローマ、ライバルのホワイトチャイルドはその後方です」
「ローマちゃん、大丈夫かな?」
「先頭から戦うのはかなり不利と思うわ」
サイレンススズカはこう語った。逃げはかなりのスタミナを必要とする策。こういう作戦はローマにとってもどうなるか分からない。
「………」
「珍しく不安な顔するね」
「コール…」
「やっぱりローマのことが気になって?」
「…うん。なんだかローマ、自分を失っているような気もする」
「…実はアタシも」
「2人とも暗すぎるよ!」
「ルネ?」
ルネサンスゼロ
えびふらいさんのストーリーでも出ているウマ娘。新人戦は危なげなく勝利をして、注目がある。作者の俺が考えたウマ娘でもある
「やっぱり、ローマは凄いよね!世界に挑もうとするなんて」
「…ローマ、何がなんでも勝ってくれるよ!」
「さぁ、先頭は変わらずアイズクロス、そしてレッドタナックスが2番手に上がりました!スクーデリアローマは現在3番手!」
「やっぱり先行じゃ苦しいのか?」
「まだ大丈夫デス!差し返す可能性もあるはずデス!」
その後、ローマは3番手をキープした。各ウマ娘は順位変動はなく、渾沌としたレースが続いた…が…
「さぁ、長い上り坂を終え、ここから一気に下り坂に入ります!スクーデリアローマは変わらず3番手の位置です!」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
(まだ、下り坂が終わったところで、ジリジリペースを上げよう!)
ローマはゆっくり目を閉じた
ブーンブーン!!!
小高いエンジン音が頭によぎった。
「…痛い、頭が…!」
「…マ、ローマ!」
「!!!!」
ローマの目の前に現れたのは1人の男性。着ている服はレーシングスーツだった
「誰?」
「私は君を名付けた人さ」
「名付けた?」
「ローマ、君は負けても強いウマ娘だ!君をここまで強くなるとは思わなかったよ!」
「ところで、貴方の名前は?」
「…そのうち分かるさ!」
その男性は人から光の魂となって、ローマの心に宿った
「!!!!!」
「さぁ、最終コーナーに入りました!スクーデリアローマはまだ余裕の表情だ!」
「私は負けても、強い魂がある!」
「スクーデリアローマがスピードを上げた!日本代表のウマ娘として、歴史的勝利まであと少しだ!!!!」
「ローマ!!!!行け!!!!!」
「行け!ローマ!!!!」
「スクーデリアローマ!勝利なるか?!しかし、外側からレイズクロスが来た!凄い末脚だ!!!!」
「何?!」
後方からレイズクロスが差してきた、すぐにローマを抜いた!
「トップはレイズクロス!レイズクロスだ!スクーデリアローマ差し返すか?!」
「まだ、まだだ!」
スパァーーーーーン!!!
ワァァァァァァァァ!!!!!
「…………」
「ローマちゃん、あと少しだったけど、よく頑張ったよ!」
「ローマさんでも凱旋門賞は勝てない、世界は厳しかったことを痛感したようですね」
「「ローマ!!!!」」
「トレーナー、エル先輩…」
「結果は3着だったけど、ローマは頑張っていたよ!世界に挑むことがみんなに勇気を与えてくれたよ!」
「ごめんなさい、私世界は厳しかったみたいだね、勝ちたかったよ…勝ちたかったのに…」
ローマは大粒の涙を流した。世界の厳しさを改めて痛感した
「トレーナーの言ってた通り、F1は厳しい世界だったことを信じていなかったけど、私それをわかっていなかったよ…ごめんなさい…うぅぅぅ…」
「ローマ、たとえ負けてもそれが原動力となるから!!」
「そうデス!エルも負けてられないデス!!」
「トレーナー…エル先輩…っ!!!」
ローマは、三井とエルコンドルパサーを抱いた。
「えぇぇぇぇん…えぇぇぇぇん…!トレーナァァァ、エルせんぱぁぁぁい!」
「ローマ…グズッ」
「ローマァァァ!!」
ローマは大号泣、それにつられて三井とエルコンドルパサーも泣いてしまった。
そのシーンが偶然国際映像に流れていた。
トレセン学園
「ローマ…お疲れ様…」
「グズッ、ターボ感動したよぉぉぉぉぉぉ!」
「世界は厳しかった…この出来事は…グズッ」
「会長…!ローマの走りを称えましょう…」
エアグルーヴとシンボリルドルフは珍しく泣いていた。
世界に挑もうとしても、結果は簡単に出ない。それは、挑み続けるからこその結果というのだ。
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ちなみに、この回出てたアイズクロスとレイズクロスは姉妹設定です。