コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
五条先生を好きになったきっかけなんて、正直よく覚えてない。たぶん最初はただの「かっこいい先生」だったんだと思う。
強くて、自由で、誰にも縛られなくて、でも俺たち生徒には不器用な優しさをくれる――そんな背中を、見てるうちに、気づいたら「好き」になってた。
ただ、それを伝えても、先生はいつも笑ってかわすだけだ。
「へぇ〜、悠仁、また告白?今週3回目だよ?」
「……俺、マジで言ってるんすけど!」
「そっか。でも僕、男の子に好かれる趣味ないからさ〜、ごめんね?」
その言葉が、何度も胸に刺さる。
でも、引き下がれなかった。
好きになっちまったんだから、しょうがない。
⸻
「先生、好きです!付き合ってください!」
「うん、ありがと〜。でも今夜は予約いっぱいなんだよね〜、僕」
「……それ、ラーメンの話ですよね?」
「当たり♪」
そんな調子で、何回告白してもまともに受け取ってくれない。
でも俺、先生のことを好きになってから、自分が変わった気がする。
もっと強くなりたいって思ったし、守られるだけじゃなくて、守れる人間になりたいって、本気で思った。
だから、振られても、嫌われても、引かれても、諦めるつもりなんてない。
⸻
ある日、任務帰りに夕焼けの空の下で、五条先生と並んで歩いてた。
「……先生さ、なんで俺の気持ち、ちゃんと受け取ってくれないんですか?」
「……」
先生は、少しだけ歩を緩めて、俺の顔を見た。
その目は、ふざけてない。珍しく、まっすぐだった。
「悠仁。……君は、生徒で、僕は教師。それに、君にはもっと、普通の幸せを掴んでほしいって思ってる」
「……“普通の幸せ”って、俺が決めることじゃないすか?」
俺は、ちょっと声を張って言った。
たぶん、怒ってた。いや、悔しかったんだ。
「俺、先生のこと、好きです。ずっと本気で言ってます。何回振られても、嫌われても、好きって気持ち、やめられません。……だって、先生だから」
しばらく沈黙があって――先生はふっと笑った。
「悠仁って、ほんと素直で真っ直ぐだよね。……でも、それが一番怖いんだよ、僕には」
「……え?」
「君みたいに真っ直ぐな人に、僕なんかが応えたら、壊しちゃいそうで」
その声は、ほんの少し震えていた。
「先生……」
「ごめんね。今日は、先に帰るよ」
そう言って、先生は背を向けた。
夕焼けに溶けていく背中に、俺は何も言えなかった。
⸻
その夜、俺は自分の布団の中で、先生の言葉を反芻してた。
「壊しちゃいそう」って……それって、俺のこと大事に思ってくれてるってことじゃんか。
心のどこかで、確かな希望が灯った。
⸻
次の日。
「先生!」
「ん?」
「俺、また好きになったっす!」
「……また?」
「昨日の先生の弱いとこ、俺、初めて見た。でもそれも含めて、好きになったっす!」
五条悟は目を見開いてから、静かに笑った。
「……君には敵わないな、悠仁」
その笑顔は、いつもより少しだけ、優しかった。