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「先生、今日って帰り……空いてます?」
「あれ、またごはん?告白もごはんも週3でペース落ちてるんじゃない?」
「……ちゃんと数えてるじゃん」
俺はちょっと笑いながら、五条先生の横を歩いた。
その距離、30cm。
いつもよりちょっと近い。
それだけで、ドキドキする自分がちょっと情けなくて、でも嬉しかった。
⸻
五条先生は、何度告白しても「気持ちは嬉しいけど」って笑ってはぐらかす。
それでも俺が離れないのを、先生もわかってるんだと思う。
「悠仁って、ほんと真っ直ぐだよね。こっちがびっくりするくらい」
「そっすか?」
「うん。……でもそれ、僕にはちょっと眩しいんだよ」
そう言った先生の横顔は、どこか寂しそうで。
俺は、その横顔を見て、また好きになった。
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少しずつ、俺たちの距離は変わっていった。
任務の帰りに二人でラーメン食べたり、夜にコンビニまで付き合ってくれたり。
先生がふざける頻度がほんの少し減って、代わりに俺の話をよく聞いてくれるようになった。
それが嬉しくて、でもどこか切なくて。
たぶん先生も、ちょっとずつ俺のこと見てくれてる。
でも、あと一歩が遠い。届かない。
⸻
ある夜、寮の屋上でふたりきり。
「先生さ……俺のこと、どう思ってんの?」
「んー……生徒としてはすごく大事」
「“としては”?」
「……人としても、ちゃんと見てるよ。前よりずっと」
その一言で、涙が出そうになった。
でも笑った。
「俺、待ちますから。ずっと、先生がちゃんとこっち向くまで」
「……やめといた方がいいよ、悠仁。僕は、簡単じゃない」
「だから、いいんすよ。先生が簡単な人だったら、好きになってない」
先生は少しだけ俯いて、笑った。
「……ほんと君って、しつこいんだから」
でもその声は、少しだけ優しくなってた。
⸻
それからも、関係は進むようで進まないまま、でも確実に近づいていった。
ある時は、俺が風邪ひいたって聞いて、先生が夜中に薬を持ってきてくれたり。
ある時は、任務先でピンチになった俺を、無茶して助けてくれたり。
「なんでそこまでしてくれるんすか?」
って聞いたら、
「うーん……癖かな。悠仁の顔が泣きそうになるの、苦手なんだよね」
って笑った。
嘘つき。
でも、俺はその嘘が、ちょっとだけ嬉しかった。
⸻
それでも先生は、決定的な言葉を言わない。
「好き」とは言ってくれない。
でもたぶん、それも先生なりの優しさで、怖さなんだと思う。
だから、俺は焦らない。
ゆっくりでいい。
この距離を少しずつ詰めていけばいい。
いつか先生が、ちゃんと俺のことを「好きだ」って言える日まで。
俺は何度でも言うよ。
「俺、先生のこと、マジで好きっすから」
そしてそのたびに、先生はちょっとだけ困った顔して、でも、優しく笑う。
それが、今の俺の幸せだった。