コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
パリの夜空は暗く、歴史的な建物が影を落とす中、透は静かにその場に立っていた。先ほどの戦いで体に受けた疲労が重くのしかかっているが、休む暇はない。偉人一派の次の敵が現れるという報告を受け、彼はフランスに急行していた。
「ジャンヌ・ダルク…」
透は呟く。その名を聞いた瞬間、透の心には複雑な思いが渦巻いていた。彼女は歴史上の英雄であり、神に選ばれた聖なる戦士。その彼女が呪霊として現れるなど、予想外の事態だった。
透が現場に到着すると、街の一角が燃え盛っていた。周囲には恐怖に震える人々が逃げ惑い、激しい戦火が広がっていた。炎の中心に佇む姿は、ジャンヌ・ダルクの呪霊だった。
「神の名の下に、我は再びこの地に降り立った!」
ジャンヌ・ダルクの声が響き渡る。彼女の体は炎をまとい、彼女の眼差しは鋭く透を見据えていた。
「神が…再びお前を戦場に立たせたのか?」
透は彼女の姿をじっと見つめ、呪具「紫狼」を構えた。
ジャンヌ・ダルクの術式は「聖火の審判」。その力は、彼女がかつて戦場で用いた剣と、彼女を火刑に処した焔を操るものだった。透は彼女の燃え盛る剣撃を避けながら、隙をついて反撃を試みる。
「私は神に選ばれし者!汚れた者には裁きを与える!」
ジャンヌの言葉と共に、彼女の剣から火の竜が放たれ、透を襲う。
「その神はどこにいる?俺はただ、自分の道を進むだけだ!」
透は炎の竜を跳ね返し、全力でジャンヌへと突撃する。
激しい攻防が続く中、透はある異変に気づいた。ジャンヌの攻撃には狂気が宿っている。彼女は正義を信じて戦っているはずなのに、どこか歪んだ執念を感じさせる。
「お前の戦いは、もう終わっているはずだ!何が、またお前を戦場に引き戻したんだ?」
透は問いかけながら、攻撃を続ける。
「私は…神に背いたのだ…だから、この呪縛から逃れることはできない。」
ジャンヌは一瞬、その炎の勢いを緩めた。彼女の目には悲しみが浮かんでいる。
透はその隙をつき、ジャンヌの剣を弾き飛ばす。そして、彼女の胸元に紫狼を突き立てた。彼女の体を包む炎が一瞬にして消え、静けさが戻った。
「ありがとう…これで、やっと私は…」
ジャンヌ・ダルクは透に微笑みかけ、やがてその姿は消えていった。
透は静かにその場に立ち尽くし、彼女の最後の言葉を胸に刻んだ。「神に選ばれた者もまた、呪われる運命なのか…」