テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
942
蒼❄️
420
#⛄️
kaede🍁
24,456
68
ロケ現場には赤色灯の光が次々と集まり始めていた。
警察官が慌ただしく無線でやり取りをしている。
宮舘は震える手でスマートフォンを警察官へ差し出した。
「翔太と位置情報を共有しています。」
「こちらです。」
警察官は画面を確認すると、すぐに別の隊員へ声を掛けた。
「位置情報を本部へ共有!」
「追跡班にも送ってください!」
「はい!」
数秒後にはパトカーや捜査車両へ一斉に情報が送られていく。
「現在も移動中です。」
「車両で移動している可能性が高い。」
警察官は真剣な表情で頷いた。
「すぐに追跡を開始します。」
___________
その横で、目黒は切れたアンクレットを強く握り締めていた。
「あべちゃん……。」
血の付いたアンクレットが頭から離れない。
(痛かったよね。)
(怖かったよね。)
(俺がもっと早く来てれば。)
呼吸が浅くなる。
手が震えて止まらない。
「目黒。」
宮舘が静かに肩へ手を置いた。
目黒は振り返る。
目には涙が浮かんでいた。
「俺……。」
「間に合わなかった。」
「守れなかった。」
宮舘は静かに首を横へ振る。
「違う。」
「まだ終わっていない。」
「警察はもう動いている。」
「GPSもある。」
「今は信じよう。」
目黒は唇を強く噛む。
「でも……。」
「あべちゃんが。」
宮舘はいつもより少しだけ強い口調で言った。
「目黒。」
「今、目黒が冷静さを失ったら、阿部も翔太も助けられない。」
その一言で、目黒は目を閉じ、大きく息を吸った。
何度も深呼吸を繰り返す。
「……ごめん。」
「ありがとう。」
宮舘は小さく頷いた。
「俺も。」
「翔太が心配で気が気じゃない。」
「でも。」
「信じよう。」
「二人とも必ず無事だ。」
___________
その時、一人の警察官が二人のもとへやって来た。
「現在、複数のパトカーが位置情報を追跡しています。」
「犯人の確保を最優先に動いています。」
宮舘は一歩前へ出る。
「お願いがあります。」
「何でしょう。」
「俺たちも。」
「二人のところまで連れて行っていただけませんか。」
警察官は少し考えた。
「危険が伴います。」
「現場の状況によっては近付けない可能性もあります。」
宮舘は真っすぐ警察官を見つめる。
「それでも構いません。」
「二人が無事か、この目で確認したいんです。」
目黒も頭を下げた。
「お願いします。」
「お願いします……。」
警察官は二人の表情を見る。
そして静かに頷いた。
「分かりました。」
「ただし、安全確保が最優先です。」
「我々の指示には必ず従ってください。」
「ありがとうございます。」
___________
二人はパトカーの後部座席へ乗り込んだ。
ドアが閉まり、サイレンが鳴り響く。
赤色灯が夜の街を照らしながら走り始めた。
車内は静かだった。
目黒は手の中のアンクレットを見つめ続ける。
「……あべちゃん。」
小さく呟く。
その隣で宮舘はスマートフォンの画面を見つめていた。
渡辺の位置情報は、まだゆっくりと移動を続けている。
「翔太。」
「頼む。」
「無事でいてくれ。」
二人はそれ以上言葉を交わさなかった。
祈ることしかできない時間が、これほど長く感じたことはなかった。
サイレンの音だけが夜の街へ響き渡り、パトカーは二人の待つ場所へ向かって走り続けていた。
___________
車は夜の道路を走り続けていた。
車内には重苦しい空気だけが流れている。
阿部はぐったりとした渡辺を抱き寄せ、小さく震えていた。
「翔太……。」
返事はない。
「ごめん……。」
涙が頬を伝う。
「俺が抵抗したから……。」
「俺が……。」
渡辺が自分を守ろうとして倒れた瞬間が、何度も頭の中で繰り返される。
阿部は唇を強く噛み締めた。
「ごめん……。」
「本当に、ごめん。」
その時だった。
犯人の一人が渡辺の様子を確かめようと身を乗り出してきた。
「どけ。」
低い声が車内に響く。
阿部は反射的に渡辺を抱きしめるように身を寄せた。
「触らないで!」
震えていた声が、はっきりと響く。
「翔太には触らないで!」
犯人は舌打ちをした。
「邪魔するな。」
それでも阿部は首を横に振る。
「嫌だ……!」
「絶対に嫌だ!」
阿部は必死に渡辺をかばい続ける。
犯人の表情が険しくなった。
「言うことを聞け。」
次の瞬間、阿部は鋭い痛みに息をのんだ。
「っ……!」
太腿に強い痛みが走る。
ナイフを左足の太腿に刺された。
阿部は声にならない息を漏らしながらも、渡辺を抱く腕だけは離さなかった。
「翔太には……。」
「触らないで……。」
その姿に犯人たちも一瞬言葉を失う。
「……ちっ。」
運転席の男が前を見ながら言った。
「検問だ。」
車の速度がゆっくり落ちていく。
前方には赤色灯が見えた。
警察車両が何台も停まり、道路を規制している。
阿部は涙で滲む視界の中、その光を見つめた。
(警察……。)
(お願い。)
(気づいて。)
車が停止線の前で止まる。
警察官が運転席へ近づいてくる。
阿部の心臓が激しく鳴った。
(今しかない。)
恐怖で身体は震えていた。
それでも阿部は精いっぱい息を吸い込む。
そして、車内いっぱいに響く声で叫んだ。
「助けて!!」
突然の叫び声に、車の外の警察官が一斉に顔を上げた。
犯人たちの表情が凍りつく。
次の瞬間――。
「動くな!」
外から鋭い声が響き、複数の警察官が一斉に車を取り囲んだ。
コメント
4件

うー 気づいたよね。 💚💙大丈夫だよね。 怖いながら勇気がすごい。 読み終えてドキドキしてる 続き待ってます。
このお話、ぎゅーっと詰めても16話あります。 夜も更新します🙇♀️