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137 - 第137話 七の罪状 ~後編25 絶対なる死の刃

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2025年06月20日

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「やべぇ!!」



エンペラーの技の真意に、思わず時雨は叫んだ。



「ええ、このままでは彼はっ――」



琉月も事態の深刻さを懸念する。



「えっ? それって……」



当然、悠莉は気付いていない。



「さあ、これで君の本当の力を見極めよう。生きていられればの話だが……」



だがもう遅い。エンペラーは繰り出そうとしていた。絶対の一撃を。



「……だからどうした? 下らない技だ」



それに対し雫は構えも取らず、エンペラーの技を一笑して貶す。



「相当な自信だね。その根拠の程を是非、確かめさせてくれ――」



“今の内に……ね”



貶された事に怒りを顕にすると思われたが、エンペラーは気にも留めていない。



そして放たれる最後の一撃――



“星霜剣最終極死霜閃――無氷零月”



――見えなかった、感じられなかった。だが、確かに在った。



それは極論云うと、絶対零度を宿した居合い抜き。だがその極意は、全てを消す事に在る。



冷気も闘気も殺気も気配も、五感で感じられる全てをだ。



完全な虚無の中に確かに在る、絶対なる死の存在。



――虚空の零月から一瞬で満月に移り変わる時、死神の刃が命の燈を消す。



この技の前に生き残った者はもとより、反応出来た者さえ――皆無。



――迫り来る絶対的な死の刃を前に、雫は動かなかった。それとも動けなかったのか。



それは反応すらも出来ない、刹那の間の事。



“終わった……”



次の瞬間、全てが終わりを迎え、世界が変わる――筈だった。



「なっ……」



エンペラーの刃は――直前で止まる。止めたのでは無い。止められたのだ。



雫はエンペラーの刃を、片手で掴む事で止めていた。その手にはエンペラーと同様、絶対零度の輝きが。



雫は虚無より放たれた刃に反応出来た処か、寸前で見切って素手で掴んで止め、更には絶対零度で相殺。



「馬鹿な……」



理屈としては正しい。だが刹那の間に、この一連を行うのがどれ程の事か。呆然自失としたエンペラーの表情が、その全てを物語っていた。



「だから……それがどうしたぁぁぁ!!」



先刻通り、雫にとってはこれさえも、何でも無い程度だったという事。雫は刀を掴んだまま、力任せにエンペラーを反対方向へ投げ飛ばした。



「――っ!!」



エンペラーはそのまま、激しく地へ叩き付けられる。これで倒せた訳では無いが、体勢が大きく崩された事は確かだ。



勝機到来――だがそれ以前に、この歴然たる差の前に勝敗は、既に決していたも同然。



雫は止めを刺す為に、追撃へと向かう。



「終わりだ雪夜。テメェには死すら生温い。地獄の底の底まで堕ちてこいっ――」



起き上がろうとするエンペラーへと下される、非情なる裁定の一撃――



“フィールド・ゼロ・リバースバベル――【コキュートス】 ~反量子檻:第九圏層――氷獄霜陣”



――瞬間、凄まじい質量を誇る巨大な氷が宙より発現され、のし掛かる形で地の底より深く、深くエンペラーを押し潰していった。



この島中を覆い尽くさん程の質量の氷は、かつて勝弘との闘いの時以上。



エンペラーには反撃も、避ける暇すらも与えられなかった。正に完全勝利――完全滅殺。



「っ…………」



「凄……」



――エンペラーに勝った。だが余りのもの凄まじさに、まだ時雨達は唖然としている。



雫は墓標となった氷の柱へ、一瞥する事無く踵を返し、唖然としたままの彼等の下へ。



「お、おい……終わったのか?」



まだ勝利の現実味が無い時雨が、恐る恐る問い掛けた。



「ああ。これで終わりだ」



雫は断言する。明確な手応えを以て――というより、あの氷から生き延びろという方が無理が有ろう。



「……ったく。俺がフィニッシュを決める予定だったのによ」



「そう言わないの。こうして生き残れただけでも良しとしないとね」



闘いが終わった事を実感し、安堵したのか憎まれ口を叩く時雨と、すっかり裏の顔を忘れている琉月。



「幸人お兄ちゃん、終わったんだよね?」



何処か釈然としないながらも、悠莉は闘いが終わった事に安堵した。



御互い犠牲は多かったものの、一先ず最悪の事態だけは避けられたのだ。



「ああ……。だが此所に長居は無用だ。急ぎ戻ろう」



雫は一息吐く間も無く、直ぐに次へと移る。闘いは終わったとはいえ、まだまだ残された問題は山積みだ。



先ずは何処かに囚われている亜美の捜索、及び保護。それが次なる最重要事項。

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