金曜日の仕事を定時で終えて、飲み会の誘いも断って家に帰った。
ラウールはまだ帰っていない。
いよいよ、疑似新婚生活最後の夜。
この1ヶ月、話題が豊富なラウとは本当に色んな話をした。
式を挙げた時に初めてまともに喋ったくらいだったし年齢差もあるのに、今ではまるで昔からの友だちみたいに打ち解けて、軽口も叩けるようになった。
1人で過ごすのが好きだったのにラウと過ごす時間はとても楽しくて、人と過ごすのもいいなと思えたことは俺にとって大きな収穫だった。
それが誰とでもいい訳じゃないことは自分の心に聞いて確認済みだ。
俺はスマホを開いて、レシピを睨みながら冷蔵庫から鶏肉を取り出した。
🤍「ただいまー……」
ドアを開けて、ご飯の匂いがしている事にラウは驚いたようだ。
そしてダイニングを通り『えーっ!?』と声をあげた。
サラダはデリで買ってきたし味噌汁はインスタントだけど、ご飯を炊いて、唐揚げを揚げた。
ラウが唐揚げが好物だとわかったから。
🤍「これ、翔太くんが作ったの?」
💙「うん。最後だから、ラウに感謝の気持ち」
🤍「すごい!嬉しい!」
ラウが抱きついてきた。ハグくらいのスキンシップならもうすっかり慣れっこだ。
すぐ手洗ってくるね、とラウは上機嫌でネクタイを緩めながら洗面所に向かって、すぐ帰ってきた。
💙「ちゃんと手洗ったのかよ」
🤍「洗ったよぉ。さ、食べよ♡」
💙「あーもう」
たくさん作ったと思ったけど、ラウの胃に唐揚げはどんどん吸い込まれていき、あっという間に空になった。
🤍「美味しかった!ありがとう、翔太くん」
💙「いつも作ってもらってたから。こっちこそありがと…」
ちょっと恥ずかしいけど、悔いなく感謝を伝えたい。
真っ赤になっているであろう俺をラウは嬉しそうに見た。
ベッドはキングサイズが1つ。新婚新婚と言い聞かせて一緒に寝てきたけど、それでもずっと背中を向けて端に寄って寝ていた。
今日は、向かい合っている。俺には後悔したくないことがもう1つあった。
💙「こうやって新婚らしく寝てみようと思って」
🤍「いいね、翔太くん抱き心地最高」
💙「やめろよ」
どこて切り出そうか。ラウに包みこまれる感覚が気持ち良くて、あんまりモタモタしていたら眠くなってしまう。
💙「…っは!」
🤍「えっ?」
言ってるそばから半分飛んでいた。だめだ、もう寝てしまう。言わないと、ちゃんと言わないと……
🤍「翔太くん」
ラウの優しい声と共にそっと身体を揺すられて、目が覚めると窓から朝日が差し込んでいた。
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