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私の名前は「ミレーナ・ド・メイ」。この国にあるメイ公爵家の令嬢だ。今日から学園に入学するのだが……緊張しているせいなのか、馬車の中がとても居心地が悪い。
私が座っている場所は奥の方なのだけれど、対面には護衛騎士であるルーカス様がいるのだ。
彼はいつものように表情を一切変えずに馬に乗っていて、その姿はとても凛々しい。だけど私は知っている。ルーカス様だって緊張をしているということを! そうじゃなければこんなにも顔色が悪くなるわけがない!! どうしてそんなことが分かるのかと言うと、実は私も同じだからである。
「あの……大丈夫ですか?」
「あぁ」
「そろそろ着きますよ!」
「ああ」
「もうすぐですよ!!」
「ああ」
うぅ〜ん、これは重症かもしれないわね。やっぱりルーカス様は私がしっかりしないといけないようだ。
私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから口を開いた。
「ルーカス様は心配性ですね」
「えっ!? いや、俺は別にそういうわけではなくてだな……」
「ふふふ。冗談です」
慌てる姿が何とも可愛らしい。きっと妹がいたらこんな感じだったのかな? お兄ちゃんって呼んでみようかしら。
そんなことを考えているうちに馬車は目的地に着いたようで、私たちは御者に礼を言って降りた。
それから少し歩いて学園に着くと、そこには大きな校舎があった。
王都にある王立学校と同じくらいの大きさがあるわよね。お城みたいだけれど、ここは学園よ。……えぇ、そうね。確かにこの大きさは異常だと思うわ。
でもそれが普通なの。
貴族のための教育機関なのだから当然でしょう? それにほら、平民だって入学出来るじゃない。
だから貴族じゃなくても通えるのよ。
もちろん学費はそれなりに高いし、入学試験もあるけど。……あぁ、そういうこと。
つまりあなたは庶民の出なのかしら? ふぅん、そうなの。
それでこんなところに一人で来てたわけね。
貴族の子弟が集まる学園に庶民なんて目立つもの。
あなたみたいな子はさぞ居心地が悪いんじゃなくて? どうしてそんなことが気になるのかって……別に深い意味はないわ。
ただなんとなく興味があっただけだから気にしないで頂戴。
それよりも今日はもう帰りなさい。
ここにいるだけでも悪目立ちするのだもの。
明日また同じ時間に来れば会えると思うわ。
きっとあなたのことも覚えているはずだから声をかけてみればいいんじゃないかしら? それじゃあお休みなさい、良い夢を見られるといいわね。
***
おはようございます。よく眠れたかしら? 昨日言った通り、また会いに来たのだけど。
あら、意外にも元気そうだと思ったのは勘違いだったかしら。
もしかして体調が悪くなって動けなかったとか? もしそうなら悪いことをしてしまったわね。ごめんなさい