コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ヌに惚れたモブ女(夢)視点
最初(大半)は夢小説並みのものです。ヌヴィ×夢主かと思うかもしれないけどこれは正真正銘のリオヌヴィです。(マニアック)
運命だと思った。
「…すまない、大丈夫だっただろうか?」
「は、はひ……」
透き通る絹のような髪を持った、芸術品とも言えよう顔が視界いっぱいに広がる。いつもきりり、とつり上がった眉が心配そうに下げられていた。床に倒れ込む私の頭を守る腕は逞しくて、やっぱり男性なんだ、と私にまた1度実感させた。顔に熱が集まっていくのを感じながら、これではマズイ、と口を開く。
「あっ、いえ……!!審判官様は謝らないでください。言ってしまえば、前を向いて歩かなかった私の不注意のせいですから!!それでは!!!」
「そんなことは無い。私も些か急いでいたんだ。こちらにも非はあるだろう。それに、君は腰を強くうったように見えたが……」
「いっいえ!!生まれた時から身体は丈夫なんです!私は全然大丈夫なので!!!!」
早くこの美の暴力から逃げ出したくて、かすかに痛む腰を押さえながら、起き上がろうとする。それに、この体制ではすこし気まずいし……。左手を地面について、膝を立てた。その時だった。
「……!君、足に怪我をしてしまっている。…またどこか別のところに傷を負っているのでは」
「…ひ、」
ばたばたと暴れていた私の足に触れる彼の手が思っていたよりも冷たく、思わず声が漏れてしまう。おかしい声を漏らした私をヌヴィレット様はじっと見つめる。数秒目が合ったかと思えばエスコートするかのように私に手を差し伸べた。美人は360度どこから見ても綺麗だという噂は本当なんだと、今この目で証明できた。
「立てるだろうか。私がぶつかったせいで怪我をしたんだ。処置をしよう。」
「えっ……いや…あ…うぅ、いいです………」
「…これは親切心だ、どうか受け取ってくれないか?」
そんな言葉を呟いたかと思えば捨てられた子犬のように目の前の美は歪んだ。(こんな例えを国の最高権力者とも言えようお方に使うのは不敬罪にあたると思うが)
「で、では……お言葉に甘えて…。」
「すまない、あまりにも痛むようであれば、ここで処置しよう」
「こっ、ここではあまりにも目立ちます……!でも、流石に審判官様の部屋に出向くのも…」
「気にすることではない、業務の場合にしか使っていないんだ。それに……じきに暗くなる。女性1人ではあまりにも危険だろうから、早く処置しよう。」
その手を取ろうか、とも思ったが夕暮れ時とはいえ、人は多少いる。なんなら今でももう、注目されている。ここで、手を取ろうもんならどうなるか。翌日の新聞記事にこうでも乗るんじゃないか?
「フォンテーヌの最高審判官に女性の影が?!街中で手を繋ぐ2人!」
良く考えれば、こんな高貴なお方とただの平民の私がつり合うわけないんだから、スクープにもならないと思った。が、一応手は取らないでおく。
いつも人で賑わっているパレ・メルモニアのホールも今日は珍しく静かだった。だけど、丁度いい。人の目があればきっと今頃、穴が空くほどの視線で瀕死状態だっただろうから。
ヌヴィレット様に案内されるがまま、普段、関係者しか立ち入ることの出来ない彼の執務室へと足を踏み入れた。
「居心地は悪いかもしれないが、近くのソファで座って待っていてくれるだろうか?今、用具を持ってこよう。」
「はっ、はい!」
白と青でまとめられた気品の溢れる部屋に見蕩れていれば、話しかけられた。近くにあるソファ……とは、これの事だろうか。いかにも高そうなシルクのカバーが着いたソファ。平民の私には触ることも、なんなら見ることすらも無縁な代物なんだろう。流石に堂々と腰を落とすのは気が滅入って、ほとんど座っていないような腰のおろし方をした。あぁ…これ結構疲れるな……
びりびり、と徐々に痺れてきた足に意識をやっていれば、ふいに声が近くから聞こえた
「待たせただろうか?」
「えっ、ぜ、全然大丈夫です!!待っていないので……で、では、」
足を伸ばして、処置をしようともってきてくださった用具箱に手を伸ばす。しかし、それは上手くいかなかった。
「少し痛むかもしれないが、耐えてくれ。消毒が済めばすぐ終わる。」
「え”っ?!ぬ、ヌヴィレット様!!いや、えっ!?だ、大丈夫で」
「しーっ……静かに。君が無断でここにいることがバレるだろう…今は少し声を抑えて。」
薄く、乾燥とは無縁そうな整った唇に細い指を当て、幼子に喋りかけるように声を出す。もう、キャパオーバーだ。
抜け殻と化した私には気づかず、ヌヴィレット様は傷口へ処置を施し始めた。
「これで……大丈夫だと、思われる。なんせ、慣れなくてだな。不格好ですまない」
「へっ、え……あ、ありがとうございます…!すいません……こんなことまで…」
ヌヴィレット様の言葉で意識が浮上する。今迄の記憶はない。しかし、足に巻かれた包帯が何よりの証拠だろう。それには目を向けないようにしながら、執務室の扉へと足を進めた。
「すいません……お邪魔致しました…!」
「あぁ、これからは気をつけてくれ。私も気をつけよう。」
ほのかに微笑みながら、ヌヴィレット様はこちらを向く。その顔があまりにも綺麗で、一瞬固まった。が、すぐに執務室の扉を開けた。足を踏み出した。だが出れない。……壁?いや、これは…
「おや、失礼したかな?」
「こ、うしゃくさま……」
「リオセスリ殿…、」
前も後ろも美形しかいない。死ぬ。キャパオーバーで死ぬ。
「い、え……こちらこそ失礼しました…」
「もし処置が気に食わないのなら、やり直してくれ。私の拙い知識のみで触ってしまったからな…お気をつけて。」
「………あぁ、そのとおりだ、夜道に気をつけて。あなたみたいなか弱い女性1人では危ないからな」
2人ともとてつもなく優しいと思った。数秒前は。上を見遣れば、ひやり、と目の前の公爵様の瞳が冷めているような気がした。いいや、冷めている。いつものアイスグレーの瞳は真っ黒に染まったように見えた。高かった体温が一気に氷点下まで下がる。
ぱた、と目の前で扉が閉められる。と、思えば室内からは水音が聞こえた。扉の前で固まっていれば、隙間がかすかに空いているのに気付く。隙間からは……あ、これは
「……っぁ」
ぱたぱた、と足音を立てながらパレ・メルモニアから離れる。あれは、見間違いじゃない。公爵様と目も合った。確かに。確かにあの2人は
「…キス、を」
「り、おせすりどの…少々早急なのでは、?」
「あんたが俺から離れていきそうに見えたからな」
「そ……んな事あるわけないだろう。」
「どうだかな?フォンテーヌの最高審判官サマは優しすぎるんだ、たらしめ。」
「なっ、失礼だ。リオセスリ殿。それに、こんなことをするのは君だけであって……」
「ふぅん…?そうなのかい?随分可愛いこと言ってくれるんだな」
「…ぁっ、ぅうっ、ふ…ぁ」
「なぁ、触れても?」
「……許可を出す前に触っているだろう、この駄犬が」
「ふはっ…悪い犬は嫌い?」
「……言わせるんじゃない」