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**はる。** わあ……! 読んだ読んだ! もう最初から最後まで一気だったわ! 舜太がじゅうを守ろうとしてたのに、実はずっとじゅうに守られてたっていう構造にめちゃくちゃグッと来た。「俺が守らなあかん」って思ってた舜太が、個室で追い詰められたときの「助けて」って心の叫びがあまりにも切なくて……。そこに颯爽と現れたじゅうの豹変っぷり、最高だった! 普段ふわふわ笑ってる人が低い声で「次触ったら許さない」って、もうかっこよすぎて震えたわ。 最後のタクシーでの「好きだよ」連打もずるい! お互い好きで、でも舜太が照れてるのが可愛すぎるし、じゅうの「家に着いてから言うね」に舜太が「それも恥ずかしいわ」って返す流れ、完全にカップルやん! 初投稿とは思えないほどキャラの関係性が丁寧に描かれてて、続きがめっちゃ気になる! 連載するなら絶対追いかけるから! さささん、素敵な作品をありがとう!🔥
初投稿なので下手です。解釈違い等あったらすみません。
み!、🤍❤️
最初に気づいたのは、番組収録が始まって三十分ほど経った頃だった。
視線。
なんとなく、誰かに見られている気がする。
気のせいかと思って顔を上げると、少し離れた場所に立っていたスタッフと目が合った。
向こうはすぐに視線を逸らした。
……まあ、そらそうか。
俺らはアイドルやし、スタッフさんが確認のために見とることもある。
そう思って、特に気にせず隣に立つじゅうへ視線を戻した。
「なぁじゅう、次の企画って何やったっけ?」
「たしか、二人一組でゲームするやつじゃなかった?」
「あー、そうやった。俺、絶対負けへんで」
「ほんと? 俺、ゲームなら舜太に勝てる気がするけど」
じゅうが笑う。
綺麗な顔が、ふっと柔らかくなる。
……あかん。
ほんま、笑顔がかっこいい。
そんなことを考えながら、ふと先ほどのスタッフを見る。
また、こっちを見ていた。
何となく気になって、そのスタッフの視線を追ってみる。
視線の先にいたのは、じゅうだった。
……なんやろ。
ただ見ている、という感じじゃない。
視線が妙に長く、じっとりとまとわりつくようで。
俺は小さく眉を寄せた。
……ああ。
なるほどな。
じゅう、今日も顔がええもんな。
そら見てまうわ。
納得して、俺は何気なく立ち位置を変えた。
じゅうの少し前。
スタッフから見れば、俺の身体がちょうど視線を遮る位置になる。
これでええやろ。
「舜太?」
「ん?」
「こっちの方が立ちやすい?」
「え? ああ、うん。なんとなく」
「そっか」
じゅうは特に気にする様子もなく、いつもの笑顔を向けた。
「寒くない?」
「全然。じゅうは?」
「俺も大丈夫」
「ならよかった」
……ほんま、優しい。
こういうところが好きやなあ、と思う。
いや、好きというか。
メンバーとして。
そういう意味で。
自分の中で勝手に納得して、俺はまたスタッフの方をちらりと見た。
視線は、まだじゅうに向いている。
俺が守らなあかん。
そう思った。
それから、何日か経った。
最初にあのスタッフを見かけた日から、俺は少しだけ周りを気にするようになった。
別に、神経質になっとるわけやない。
ただ、じゅうの周りに変な人がおらんか、確認するようになっただけ。
じゅうは、あんまり自分のことに頓着しない。
誰かに話しかけられたら普通に応じるし、頼まれたら断らない。困っている人がいたら、自然に手を貸す。
そういうところが、じゅうらしい。
けれど、俺からすると少し心配でもあった。
「じゅう、こっち」
「ん?」
楽屋から収録スタジオへ向かう途中、俺はじゅうの袖を軽く引いた。
「こっちの廊下通ろ」
「いつもと違うけど、何かあるの?」
「いや、なんも。こっちの方が早いかなって」
「そうなんだ。じゃあ、舜太についていこうかな」
素直に隣を歩いてくれる。
俺より少し低いじゅうは、隣に並ぶと少しだけ目線が下になる。
それでも顔の綺麗さは変わらん。
むしろ、角度によっては余計に綺麗に見える。
こんな人が無防備に歩いとったら、そら目をつけられることもあるやろ。
俺はさりげなく周囲を確認した。
例のスタッフは、少し先にいた。
こちらを見ている。
……やっぱり。
俺は何も言わず、じゅうの前に出た。
「どうしたの?」
「んー? なんでもない」
「さっきから前を歩いてるね」
「たまにはええやん」
「うん。舜太がそうしたいなら」
じゅうは笑った。
その笑顔を見ると、なんだか安心する。
俺が守っとるんや。
そう思うと、少しだけ誇らしかった。
それからも、何度か同じことがあった。
収録中。
移動中。
楽屋の出入り口。
ふと顔を上げると、例のスタッフがこちらを見ている。
そのたびに、俺は立ち位置を変えた。
じゅうの前に立つ。
少し横にずれる。
スタッフとじゅうの間に入る。
あくまで自然に。
じゅうに気づかれないように。
「舜太、今日よく動くね」
ある日、じゅうが笑いながら言った。
「そう?」
「うん。さっきから俺の前に来たり、隣に来たり」
「俺、落ち着きないんかな」
「ふふ。そうかも」
じゅうは楽しそうに笑った。
「でも、舜太が近くにいると安心するよ」
……え。
一瞬、思考が止まった。
「な、なんで?」
「なんとなく」
「なんとなくて」
「うん。舜太って、頼りになるから」
じゅうは何でもないことのように言った。
俺は顔が熱くなるのを感じた。
「……そ、そらそうやろ」
「ふふ」
「じゅうのことは、俺がちゃんと見とるから」
言ってから、少し恥ずかしくなった。
「……なんてな///」
「そっか」
じゅうは嬉しそうに目を細めた。
「じゃあ、これからも頼りにしてるね。舜太」
「……任せとき!」
何の疑いもなく笑うじゅうを見て、俺は思わず胸を張った。
……よし。
これからも、俺が守ったる。
じゅうは、俺にとって大事なメンバーやから。
それ以上でも、それ以下でもない。
そう思っていた。
その日の収録は、思ったより長引いた。
照明が暑くて、何度も前髪を直す。
俺は鏡で自分の顔を見て、少しだけ眉を寄せる。
「……今日、顔むくんどる?」
「そんなことないよ」
後ろからじゅうの声がした。
振り返ると、彼は鏡越しに俺を見ていた。
「むしろ、いつも通り綺麗だと思うけど」
「……え?」
「顔。大丈夫だよ」
さらっと言って、じゅうは俺の隣に立つ。
「気にしなくていいんじゃない?」
「いや、でも……」
……いやいや。
国宝級の顔面を持つ人間に、顔のことを言われても困る。
「じゅうはええよなあ」
「何が?」
「顔が」
「え?」
「いや、なんでもない」
俺は慌てて笑った。
じゅうは不思議そうに首を傾げる。
その仕草まで綺麗なのだから、もうどうしようもない。
ふと、鏡の端に人影が映った。
あのスタッフだった。
俺は自然と表情を引き締める。
スタッフは、こちらを見ていた。
……またや。
俺は鏡越しに視線を返した。
すると、スタッフはすぐに目を逸らした。
やっぱり。
俺はじゅうの方へ身体を向ける。
「じゅう、ちょっとこっち来て」
「どうしたの?」
「前髪、変やで」
「え、そう?」
「うん。ちょっと直したる」
じゅうの前に立つ。
鏡から、スタッフの姿が隠れた。
「ありがとう」
「ええよ」
近くで見るじゅうの顔は、やっぱり綺麗だった。
すっとした輪郭、涼しげな目元。
笑うと柔らかくなる表情。
……こんな顔、そら見てまうわ。
俺は前髪を軽く整えて、満足げに頷いた。
「よし。完璧」
「ほんと?」
「うん」
「舜太に直してもらうと、安心するね」
「……そ、そう?」
「うん」
じゅうが笑った。
俺は思わず目を逸らした。
なんやろ。
最近、じゅうの笑顔を見ると、変に心臓が忙しい。
でも、そんなことを考える暇はない。
俺はもう一度、鏡の端を確認した。
スタッフの姿は、なくなっていた。
あのスタッフを見かけるようになってから、気づけば三週間ほどが経っていた。
最初の頃ほど、視線を感じる頻度は多くない。
俺が間に入るようになったからかもしれない。
最近は、じゅうの前に立つことも自然になっていた。
じゅうも、特に何も言わない。
むしろ、俺が隣にいると嬉しそうに笑うことがある。
……なんやろ。
それを見ると、俺まで嬉しくなる。
「今日も一緒だね」
「そらそうやろ。俺らは真・運命やもん!」
「うん」
じゅうは、少しだけ嬉しそうに頷いた。
その顔を見て、俺も笑った。
こんなふうに笑ってくれるなら、隣にいるのも悪くない。
俺はこれからも、じゅうの隣におろう。
大事なメンバーやから。
そう思っていた。
「曽野くん、ちょっといいかな?」
収録が終わった直後だった。
声をかけてきたのは、例のスタッフだった。
「はい。なんですか?」
「ちょっと確認したいことがあって。別室で話せる?」
「……あ、はい」
スタッフは笑っていた。
俺は一瞬だけ、じゅうの方を見た。
向こうではやちゃんたちと話している。
……大丈夫やろ。
すぐ戻ってくるし。
俺は何も言わず、スタッフの後をついていった。
廊下を進み、収録場所から少し離れた個室へ入る。
「ここでいい?」
「はい。確認って何ですか?」
扉が閉まった。
スタッフはしばらく黙っていた。
「……曽野くん」
「はい?」
「最近、山中くんとずっと一緒にいるよね」
「え? まあ、メンバーなんで」
「いつも隣にいる。笑い合ってる。何をするにも一緒」
「それは……仕事ですし」
何を言いたいんやろ。
俺が首を傾げていると、スタッフは苦しそうに笑った。
「羨ましいな」
「……はい?」
「僕はずっと君を見ていたのに。君は僕のことなんて、少しも見てくれない」
……え。
「いや、あの……」
「君はいつも山中くんの隣にいる。楽しそうに笑って、当たり前みたいに一緒にいる」
「それは……メンバーですし」
「……あの人、僕と目が合うと妙に睨んでくるんだよね」
スタッフは小さく笑った。
「君のことになると、過敏なのかな」
言葉の意味が、少しずつ理解できてきた。
「……俺のこと、見とったんですか?」
スタッフは答えず、俺の腕を掴んだ。
「ずっと好きだった」
「え?」
「好きなんだよ、曽野くん」
突然の告白に、頭が真っ白になる。
「いや、あの……すみません。そういうのは……」
「どうして?」
「どうしてって……」
「僕じゃ駄目なの?」
「いや、そういう問題やなくて……」
掴まれた腕に、痛みが走った。
「ちょ、痛いです。離してください」
「最近、ずっと山中くんのことばかり」
「違います、俺は……」
「君は僕のことを見てくれない」
スタッフが一歩近づく。
俺は反射的に後ろへ下がった。
「待ってください…!」
「ずっと、こうしたかった」
「……え?」
次の瞬間、強く腕を引かれた。
「うわっ……!」
身体が大きく傾き、背中が床にぶつかる。
息が詰まった。
「っ、何……!」
起き上がろうとした瞬間、肩を押さえつけられた。
「やめて!」
スタッフが俺の上に覆いかぶさってくる。
「好きなんだ」
「いや、ほんまにやめてください!」
必死に胸元を押す。
けれど、相手の身体はびくともしなかった。
俺と同じくらいの身長。
普段なら、力比べで簡単に負けるような相手やない。
でも、突然のことに身体が思うように動かない。
「離して!」
「曽野くん……驚いた顔もかわいいね……」
顔が近づいてくる。
「や、やめてや!」
顔を背けた。
スタッフの手が肩から首元へ伸びる。
「触らんといて!」
声が裏返った。
怖い。
こんなことになるなんて、思ってもいなかった。
「お願い、離して……!」
腕を押し返そうとする。
けれど、手首を掴まれ、頭の横へ押さえつけられた。
「ずっと、君に触れたかった」
「やめて!」
顔が、さらに近づく。
息がかかるほどの距離。
俺は必死に顔を背けた。
「嫌や……!」
唇が触れそうになる。
その瞬間、頭の中にじゅうの顔が浮かんだ。
助けて。
なんで。
なんで俺、こんなところにおるん。
「お願い……!」
涙が滲んだ。
そのとき。
廊下から、聞き慣れた声がした。
「……舜太?」
スタッフの動きが、一瞬止まった。
俺も息を止める。
もう一度、声がした。
「舜太、どこ?」
じゅう?
来てくれたん……?
「……じゅう!」
声を出した瞬間、スタッフの手が口元に伸びてきた。
「静かにして」
「んっ……!」
その瞬間、個室の扉が勢いよく開いた。
「――何してるの?」
聞いたことのない、低い声だった。
いつも優しく笑っているじゅうの声とは、まるで違う。
スタッフが驚いて振り返る。
その隙に、俺は必死に身体を起こそうとした。
「舜太!」
じゅうの目が、俺を捉えた。
目が合った瞬間、じゅうの表情が変わる。
一瞬だけ、息を呑んだように見えた。
けれど、すぐにスタッフへ視線を戻す。
「……離してください」
「いや、これは……」
「離せって言ってる」
じゅうがスタッフの腕を掴んだ。
その声に、思わず身体が震える。
怒鳴っているわけじゃない。
それなのに、いつものじゅうとはまるで違う。
「何してるんですか。舜太が嫌がってるでしょう」
「誤解だよ。僕はただ……」
「触らないでください」
じゅうはスタッフの腕を強く引き、俺から引き剥がした。
身体が自由になる。
「っ……!」
俺は咳き込みながら、床に手をついた。
じゅうはすぐに俺の前へ立った。
スタッフと俺の間に、完全に身体を割り込ませる。
「これ以上舜太に近づかないでください」
スタッフが何か言おうとする。
けれど、じゅうは一歩も退かなかった。
「……じゅう」
声が震えた。
じゅうが振り返る。
その瞬間、さっきまでの冷たい表情が、ほんの少しだけ崩れた。
「舜太」
じゅうが俺の前にしゃがみ込む。
「大丈夫?」
「……じゅう」
顔を見た途端、涙が溢れた。
止めようとしても、止まらない。
「ごめ……」
「謝らなくていいよ」
じゅうは俺の肩にそっと手を置いた。
「怖かったね」
その言葉に、余計に涙が出た。
じゅうは何も急かさず、俺の顔を覗き込む。
「立てそう?」
「……うん」
そう答えたものの、足に力が入らない。
じゅうはすぐに俺の腕を自分の肩に回した。
「無理しなくていいよ。俺につかまって」
「……ごめん」
「ううん」
じゅうが俺を支えながら、ゆっくり立ち上がらせる。
そのまま、俺を自分の背中側へ移動させた。
「山中くん、誤解なんだ。僕はただ……」
「今は話さないでください」
じゅうは振り返らなかった。
「次触ったら、許さない」
低い声。
その言葉に、スタッフが黙り込んだ。
じゅうは俺の手を握った。
「行こう、舜太」
「……うん」
個室を出る直前、じゅうが一度だけスタッフを振り返った。
その視線は、冷たかった。
廊下に出ると、じゅうは俺の肩を抱くようにして歩き始めた。
「痛いところない?」
「……大丈夫」
「本当に?」
「うん……」
じゅうは俺の顔をじっと見た。
「……そっか」
それ以上、何も聞かなかった。
ただ少しだけ、じゅうの手に力がこもった。
楽屋に戻ると、はやちゃんたちが一斉にこっちを向いた。
「舜太!大丈夫か?」
はやちゃんがすぐに立ち上がる。
「何があったんだよ。顔、真っ青じゃん」
「……えっと……大丈夫」
そう答えたものの、声がうまく出なかった。
仁ちゃんが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「無理して言わなくていいから。どこか痛い?」
「……ちょっと、びっくりしただけ」
「そっか……」
仁ちゃんはそれ以上聞かず、俺の肩をそっと叩いた。
「今日はもう帰って、ゆっくり休もう。家まで送ってもらった方がいいんじゃない?」
「せやで。こんなことあったんやし、ひとりで帰ったらあかんよ」
だいちゃんも眉を寄せて、俺の顔を見た。
「……うん」
みんなの声を聞いていると、また涙が出そうになった。
はやちゃんがじゅうの方を向く。
「マネージャーには?」
「今、対応してもらってる」
「そっか。俺たちも必要なら話すから。何かあったらすぐ言えよ」
「ありがとう」
じゅうが小さく頭を下げた。
はやちゃんたちも、俺の様子を気にしながら少し距離を取ってくれた。
「何かあったらすぐ連絡しろよ」
はやちゃんがそう言って、仁ちゃんだいちゃんと一緒に楽屋を出ていく。
楽屋には、俺とじゅうだけが残った。
「……しゅん」
「ん?」
「ごめんね」
「え?」
思わず顔を上げる。
「なんでじゅうが謝るん?」
「もっと早く気づけばよかった」
「そんな……」
「舜太がいなくなって、探してたんだ」
じゅうは俺の手を握ったまま、俯いた。
「いつも隣にいるのに、いないから。嫌な予感がして」
「本当に、怖かった」
その声が、少しだけ震えていた。
俺は驚いてじゅうを見た。
じゅうが、怖かった?
俺がいなくなって?
「……俺、もう大丈夫やから」
「うん」
「そんな顔せんといて」
じゅうは、困ったように笑った。
「どんな顔?」
「……悲しそうな顔」
「そっか」
「俺が悪いわけやないんやろ?」
「もちろん」
「じゃあ、じゅうも悪くない」
そう言うと、じゅうは少しだけ目を細めた。
「ありがとう」
優しい声だった。
でも、いつもと少し違う。
俺の手を握る指が、まだ離れない。
……なんやろ。
胸が、ぎゅっとなる。
その日から、じゅうは少し変わった。
いや。
正確には、今まで知らなかったじゅうを知った。
収録中、俺が少しでも離れると、目で追ってくる。
移動のときは、必ず隣にいる。
あのスタッフは、マネージャーたちの対応によって然るべき処分を受けたらしい。あの日以降、現場で見かけることは一度もなかった。
もう、何も心配することはない。
それなのに、じゅうは以前よりも俺のそばにいるようになった。
「じゅう、今日も隣なん?」
「うん。だめ?」
「いや、だめちゃうけど」
「じゃあ、いいよね」
そう言って笑う。
……なんやねん。
最近、じゅうは少しだけ甘えたになった気がする。
俺が隣にいると、嬉しそうに笑う。
俺が他のメンバーと話していると、いつの間にか隣に来る。
「じゅう、寂しいん?」
冗談半分に聞いてみた。
「……うん」
「え?」
思っていたよりも、素直な返事だった。
じゅうは少しだけ俺の袖を掴んだ。
「舜太がいないと、寂しい」
……。
なんや、それ。
そんな顔で、そんなこと言わんといてや。
「……俺、ずっとおるやん」
「うん」
「どこにも行かへんよ」
じゅうは、安心したように笑った。
その笑顔を見て、俺の胸がまたぎゅっとなる。
最近、こんなばっかりや。
じゅうの言葉ひとつで、嬉しくなったり。
笑顔ひとつで、何も考えられなくなったり。
……なんなんやろ。
それから、少しずつ。
俺はじゅうのことを、前よりも意識するようになった。
隣に座ると、肩が触れる。
手が重なる。
名前を呼ばれる。
それだけで、妙に落ち着かなくなる。
じゅうは相変わらず、優しい。
俺の顔を見て笑う。
俺の話を聞いてくれる。
俺が疲れていると、何も言わずに飲み物を渡してくれる。
……ほんま、ずるい。
今までも、ずっとそうだった。
隣に座るのも、肩が触れるのも、名前を呼ばれるのも。
じゅうにとっては、きっと何も変わっていない。
変わったのは、俺の方だ。
あの日を境に、じゅうの何気ない行動ひとつひとつが、妙に心に残るようになってしまった。
目が合うと、すぐに逸らしてしまう。
近くに来られると、変に意識してしまう。
今まで当たり前だった距離が、急に近く感じるようになった。
そんな俺を、じゅうは不思議そうに見ていた。
「舜太」
「ん?」
「最近、俺のこと避けてる?」
「……え?」
思わず顔を上げた。
「なんで?」
「目が合うと、すぐ逸らすから」
「いや、それは……」
「嫌われたのかなって」
じゅうが少しだけ寂しそうに笑った。
そんな顔をされたら、胸が痛くなる。
「ちゃう! 嫌いとか、そんなん絶対ない!」
「……ほんと?」
「ほんまやって!」
勢いよく答えてしまって、少し恥ずかしくなった。
じゅうは、じっと俺を見ていた。
「……じゃあ、どうして?」
「それは……」
言えない。
最近、じゅうの顔を見ると変に意識してしまうこと。
隣にいると、心臓がうるさいこと。
触れられると、嬉しいこと。
全部。
そんなこと、言えるわけがない。
「……なんでもない」
視線を落とす。
じゅうはしばらく黙っていた。
やがて、静かな声で言った。
「舜太」
「……ん?」
「俺は、舜太のことが好きだよ」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
顔を上げる。
じゅうは、いつもの優しい笑顔ではなかった。
真剣な目で、俺を見ていた。
「メンバーとしてじゃなくて。友達としてでもなくて」
少しだけ、息を吸う。
「恋愛として、好き」
頭の中が真っ白になった。
「……じゅう?」
「ずっと好きだった」
じゅうは、困ったように笑った。
「隣にいると嬉しくて。舜太が笑ってくれるだけで、幸せで」
「……」
「でも、俺ばっかり好きなのかなって思うこともあった」
その言葉に、胸がぎゅっと締めつけられる。
「最近、避けられてる気がして……少し怖かった」
「……ちゃう」
気づけば、声が出ていた。
「避けとるんやない。嫌いになったとか、そんなんやなくて」
「うん」
「……俺が、変なんや」
じゅうは急かさず、俺の言葉を待ってくれた。
「じゅうのこと、前より意識してしまうんよ」
自分でも驚くほど、小さな声だった。
「顔見たら落ち着かんし、隣におると心臓がうるさいし……触れられると、嬉しい」
言ってしまった。
もう、止まらなかった。
「じゅうが他の誰かと一緒におるん想像したら、嫌やし」
じゅうの目が、少しだけ見開かれる。
「……それって」
「分からんかったんよ。ずっと、メンバーとして大事なんやと思っとった」
でも、違う。
きっと、ずっと前から。
ただ、気づいていなかっただけだ。
「……俺も、じゅうが好きなんかもしれん」
口にした瞬間、胸の奥が少しだけ軽くなった。
じゅうは、驚いたように俺を見つめていた。
「……ほんと?」
「うん」
「俺のこと、恋愛として?」
「……たぶん」
「たぶん?」
「……好き、やと思う」
恥ずかしくて、顔が熱い。
じゅうは、ゆっくりと笑った。
今まで見たことがないくらい、嬉しそうな顔だった。
「じゃあ」
じゅうが、そっと手を差し出す。
「俺と、付き合ってくれる?」
その手を見つめる。
今まで何度も触れてきた手。
でも、今は少しだけ違って見えた。
「……うん」
俺は、その手を握った。
「付き合いたい」
じゅうの指が、優しく俺の手を包む。
「ありがとう、舜太」
「……なんでじゅうがお礼言うん?」
「嬉しいから」
そう言って、じゅうは笑った。
その笑顔を見た瞬間、また胸がいっぱいになる。
……ほんま、ずるい。
「……俺も、嬉しい」
そう伝えると、じゅうは少しだけ近づいた。
「手、繋いで帰ってもいい?」
「……今さら聞くん?」
「ちゃんと聞きたかった」
「……ええよ」
じゅうが、そっと俺の手を握った。
今まで何度も触れてきた手。
でも、今は少しだけ違って見えた。
じゅうの指が、俺の指にゆっくりと絡む。
その仕草があまりにも自然で、心臓が跳ねた。
「……じゅう」
「ん?」
「なんか、変な感じやな」
「何が?」
「こうやって手繋ぐん。今まで普通に触っとったのに」
じゅうは、少しだけ笑った。
「俺は、ずっとこうしたかったけど」
「……っ」
さらっと言うから、余計に困る。
「……そういうこと、普通に言うんやな」
「好きな人には言いたいよ」
まただ。
じゅうは、こういうことを何でもないみたいに言う。
綺麗な顔で、優しく笑って。
それなのに。
あの日、俺を助けに来てくれたじゅうの姿が、ふと頭に浮かんだ。
いつも穏やかで、柔らかくて。
誰かを傷つけるようなことなんて、絶対にしなさそうな人。
そんなじゅうが、あの時は違った。
俺を引き寄せる腕も。
相手を見据える目も。
低く、冷たい声も。
全部、迷いがなかった。
……あんなじゅう、知らんかった。
「舜太?」
「……ん?」
「どうしたの?」
「いや……」
思わず、じゅうの顔を見つめてしまう。
「……じゅうって、もっと柔らかい人やと思っとった」
「うん?」
「なんか、いつも優しくて。ふわっとしとって」
「それ、褒めてる?」
「褒めとるよ!」
じゅうが笑う。
「でも、あの時は……」
言いかけて、少しだけ言葉に詰まった。
「……かっこよかった」
じゅうの笑顔が、ほんの少し変わった。
「そう?」
「うん。俺、びっくりした」
「舜太が危ない目に遭ってたから」
その声は、いつも通り優しかった。
けれど、繋いだ手は離れない。
じゅうが、少しだけ顔を近づける。
「……今も、そう思う?」
「……え?」
「俺のこと、かっこいいって」
急にそんなことを聞かれて、言葉が出なくなった。
近い。
思っていたより、ずっと。
じゅうの目が、まっすぐ俺を見ている。
「……思う、けど」
答えると、じゅうは満足そうに笑った。
「よかった」
……ほんま、ずるい。
綺麗で、優しくて。
でも、時々こうやって、俺の知らない顔を見せる。
そのたびに、胸の奥が落ち着かなくなる。
「……じゅう」
「ん?」
「好き」
自分から言ったのに、恥ずかしくて目を逸らした。
じゅうは、そんな俺の顔を覗き込む。
「俺も好きだよ」
「……もう、分かったって」
「何回でも言いたい」
そう言って、じゅうは笑った。
その笑顔を見て、俺は思う。
あの日、俺はじゅうを守っているつもりだった。
でも、じゅうは俺が思っていたよりずっと強くて。
俺の知らないところで、ずっと俺を見てくれていた。
綺麗で、優しくて、守るべき人だと思っていたのに。
気づけば、俺の方がこの人に惹かれていた。
……ほんま、敵わんわ。
「舜太」
「ん?」
「帰ろうか」
「……うん」
マネージャーが呼んでくれたタクシーに乗り込む。
後部座席で、じゅうが隣に座った。
繋いだ手は、そのまま。
窓の外を眺めていると、じゅうの肩がそっと触れた。
今までなら、何も思わなかったはずなのに。
今は、触れたところから熱が広がる気がした。
「舜太」
「……なに?」
「こっち向いて」
言われるまま顔を向ける。
じゅうは、少しだけ笑っていた。
「好きだよ」
「……っ、タクシーの中で言わんといて!」
「どうして?」
「恥ずかしいやん!」
じゅうは小さく笑って、俺の手を握り直した。
「じゃあ、家に着いてから言うね」
「……それも恥ずかしいわ」
「でも、言いたい」
その声があまりにも優しくて。
俺は、もう何も言えなくなった。
優しくて、穏やかで、いつも隣で笑ってくれる人。
でも、あの日知ったじゅうは、俺が思っていたよりずっと強くて、男らしくて。
そして、今も。
俺の心を、簡単に揺らしてしまう。
……好きや。
そう思ったら、繋いだ手を離したくなくなった。
「……じゅう」
「ん?」
「俺も、好き」
じゅうは一瞬驚いて、それから嬉しそうに笑った。
その笑顔を見ながら、俺はそっと肩を寄せた。
今度は、俺から。
ち び
936
格安生姜
1,230