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「では、皆さん。そういう事でよろしくお願いしますね」

レビンの説得は、どうやら成功に終わったようだ。

最大の理由にして決め手となったのは、レビンとミルキィの事を村長と村長代理の二人が大袈裟に伝えたことだった。

二人の村に対しての対応しかり、同じ様な村の出で、尚且つ都会の暮らしも知っていると村長が伝えれば、

銀ランク冒険者が村人からすれば雲の上の存在である事を、まるで英雄を前にしているかの様に村長代理が伝えた。

その二人が涙こそ流していないが、情に訴える形や、実際の奴隷の扱いに対する疑問などを交えて訴えた。

情報が閉鎖……制限されている田舎の村の人達は、自分達では知り得ない二人の意見と思いを受け入れる事にした。

そして次点での受け入れた理由は『同じ釜の飯』を食べた事にある。

男達は監視されていたが、女性達や一部の子ども達は自由に動き回り、食事会の準備や給仕に奔走していた。

それを見ていたダド村の人々は、彼らも自分達と何ら変わらぬ働き者の村人であると、一種の連帯感と共感を感じていたのであった。

ここで二人にとって危惧しなくてはならないことは、もし村人達が真実を告発したら、というものだ。

これについてはレビンもミルキィも覚悟の上だったが、現実は村人達にとって残酷なものだった。

仮に村人達が訴えたところで、領主であるミラード辺境伯もその下の役人達も、『ただの村人』の言葉より、『冒険者ギルド』の言葉を優先・・する。

あくまでも真実は二の次である。どちらがより多くの利益を領地にあげているのか。それが為政者にとっては大切なのである。

もちろん領都で事が起こればまた違った判断をするのであろうが、ここは国の端の小さな村でしかない。

冒険者ギルドも若くして銀ランクに到達している有望な二人を失うくらいなら、多少辺境伯の印象が悪くなることくらい構わないだろう。

そして辺境伯も、多大な税を使い調査する事はしないだろう。この村から上がる税金など多寡がしれているのだ。それを天秤にかけた時、理に適うのが沈黙だということは、火を見るよりも明らかなこと。

以上の観点から、二人が今回の件で足元を掬われる事はないといえる。

二人はそうだとしても、違ったとしても、すでに覚悟を決めており、気にしてすらいないが、ただ一人…気にしている者がいた。

(これがバレたら俺とお袋は詐称罪で縛り首だろうな…)

ガスの心労は募る……


「よし。こんなもんだろう?」

ガスは報告書をレビンとミルキィ監修の元書き上げた。

「はい!完璧だと思います!」

(だと、とか、思います、はやめて欲しい…)

ガスは二人に恩義を感じている為、そんな事は口に出せないが、これから胃薬が手放せなくなると一人ため息を吐く。

「しかしいいのか?」

「何がです?」

「報告書を持っていってもらっても…話もしなくてはいけないだろ?」

普段であれば、老いた母の代わりに書類の類は報告を兼ねて必ずガスが持っていっていた。もちろんそれは当たり前で、そうしないとならないものだ。

「辺境伯様が知り合いなので、直接話してきます。その方が対応は早いでしょうし。ダメですか?」

「へ、辺境伯さま?」

「はい。このミラード辺境伯領を治めるお貴族様です」

(お、俺は見た事もないぞ…)

辺境伯とは、ただの村長代理や村長が会える様な人物ではない。

ガスはあくまでも役所で適切な手順を踏み、役人に会って報告をするだけだと思っていた。

「レビン…いや、レビン様?この村とアイツらを頼みます」

「えっ!?ちょっと待ってください!僕達は偶々辺境伯様とご縁があっただけの、ただの冒険者ですっ!今まで通り接してください!」

「偶々で辺境伯様と知り合えるのか?領都ってところは怖いな…」

色々と誤解を生んだが特に問題はないと思い、レビンが事細かく説明する事はなかった。


夜、そういった諸々の事を済ませた二人は、翌早朝には早くから行動していた。

「そっちに行ったわ!」

バシュッ

ドサッ

レビン達が現在行っているのは、元々150人程の村に一時的とはいえ50人もの人が増えたので、食料問題の解決に動いたのだ。

「これくらいあれば一月分くらいにはなるかな?」

借りてきた台車の上には、レビンに仕留められた様々な動物が乗せられていた。

「この鹿を血抜きしたら帰ろうか」

「ええ。村の人達、きっと驚くわよ」

食料問題は力技で解決へと向かう。



木材を運ぶ用の、大きく丈夫な台車が軋みを上げながら道をいく。

「ただいま!」「帰りました」

村に帰って来た二人は、道中すれ違う村人達と挨拶を交わしながら、村長宅を目指していく。

道ゆく二人と台車を二度見しながら、村人達は驚きと歓声を上げていく。

「ありゃまぁ!!こりゃてぇへんだぁ。皆で解体するべ」

二人を出迎えた村長は、息子に指示を出させて人を集めた。


現在この村は、無駄に人手だけは豊富にあるため、人手が足りた事を確認した二人は、街へ戻ることを決めた。

「お世話になりました。恐らく5日くらいで役人が来られるかと思いますので、対応をお願いしますね」

役人の対応スピードを知らないレビンだが、いい加減なことであっても何も言わない訳にもいかず、不安そうにこちらを見つめるガスにそう伝えた。

(辺境伯様にこれも伝えとかないとね)

レビンは心のメモに報告事項をしっかりと刻む。

「わかった。村を代表して二人に感謝を。気をつけてな。若い英雄様達」

ガスのセリフと村人達の期待の眼差しを受けて、流石のレビンもこの時ばかりは赤面し、俯き加減で頭をポリポリと掻いていた。

「さようなら!」

「お世話になりました」

二人は故郷を思い出させてくれたこの村に感謝をしつつ、名残惜しさに胸が締め付けられながらも帰路に着いた。


「いい村だったね」

「そうね……ナキ村に負けず劣らずね」

いつまでも手を振る村人達に、時々振り返りそれに応えながら領都へと向かった。



「お待たせしました。こちら依頼料の金貨15枚になります。お確かめください」

領都ミラードに無事帰り着いた二人は、依頼の品を納品する為に冒険者ギルドへと訪れていた。

「流石銀ランクの依頼だね!往復で2日、依頼を含めても3日の仕事で金貨15枚だったよ!」

依頼書に書かれてはいたが、実際にその対価を受け取って、初めて実感した。興奮醒めやらぬレビンは、受け取ったお金を見せながら、ミルキィへと伝えた。

「そうね。でも銀ランクの依頼としては、拘束時間を考えたら安いのじゃないかしら?」

「うっ…確かに他の依頼だとこの倍はあるね…討伐系だと3倍からだし…」

護衛依頼は往復で3日であれば金貨30枚は堅い。商人や貴族、役人からすれば、命を守るに値する金額の為、文句は出ない。

これが金ランクへの護衛依頼であれば、更に倍でも不可能だ。

討伐系の依頼に至っては、依頼の素材以外は倒した冒険者の物なので、さらに副収入も期待できる。

「これからお城へ向かうの?」

「そうだよ。門の人が同じ人なら覚えてくれてると思うけど、違う人なら説明しないとね」

門番は任務に忠実ではあるが、二人の事を覚えているのかは不明だ。

ただ。この二人の容姿は覚えやすくはある為、可能性は高い。

無事にミラードの城へと着いた二人は、こちらの事を訝しそうに見てくる門番へ説明に向かった。

「こんにちは。ミラード辺境伯様へ御目通り願います」

「ん?紹介状は?」

「?ありませんよ?」

入城するのに手ぶらで来る者がいるとは思わず、門番とレビンの間に変な空気が流れる。

「坊主。こっちは遊びじゃないんだ。城に用があるなら紹介状を持ってこい」

門番は仕事に忠実だった。

そして、どうやらこの門番はレビン達の事を知らないようだ。

「えっ!?困りました。何とかなりませんか?」

「無理なものは無理だ。仕事の邪魔だからどっかに行きなさい」

レビンは頭を回転させる。どうにかして入る為に。このレビンの粘りが、事件を起こすこととなった。

「あっ!じゃあ、シーベルトを呼んできてください!友達なので話せばわかります!」

「シーベル…!?貴様っ!次期辺境伯様と期待されているシーベルト様を呼び捨ての上、友達だと!?撤回しろっ!」

レビンの言葉に、門番の雰囲気がガラリと変わった。

ミルキィはそれに気付き、レビンを止めようとしたのだが……

「はいっ!そのシーベルトです!友達なので撤回は出来ません!撤回したらシーベルトが悲しみますから」

要らないところでレビンのいい子ちゃんが出てしまった。そして、ミルキィの助け舟は間に合わなかった。

「こっちにこいっ!」

「!!ありがとうございます!」

レビンは呼ばれたので城に入れてくれると思っていたが、もちろん勘違いだ。



「あれ?なんで牢屋にいるんだっけ?」

詐称罪の疑いで衛兵詰所の牢屋に入れられたレビンはそれを疑問に思い、ミルキィは溜息が漏れた。




レベル

レビン:7(41)

ミルキィ:34

混血の吸血姫と幼馴染の村人

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