コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
【北村視点】
焦っていた山本くんに、中野さんは
「どうして…そんなに酷いことするんですか…」
と聞いた。
「…嫌い、やから?」
そんなの嘘に決まってる。
「うーん…『嫌い』じゃダメかな?」
山本くんは嫌いだ。
棚を退けてもくれないし。
「ほらほら早く〜!」
「💢…中野さん、もう一回泣いてくれへん?」
俺はものすごく腹が立っていた。
「えっ、えーっと…」
性欲を抑えるのと、棚の重さに耐えるのとで、
俺は限界に等しかった。
「ずっとこのままか…」
そんな時、チャイムがなった。
「あ、俺授業あるんで。また!」
そう言って山本くんは出ていった。
「俺も授業あんねんけど!?」
しばらくして、俺は深くため息をついた。
すると突然、中野さんが言った。
「先生、次の授業どこですか?」
「三組やな…。…中野さんこそ、次の授業何?」
「数学です………」
その時ハッとした。
「数学…?」
「三組…?」
あぁ山本か…。
「…ん、よいしょ。」
俺は棚を持ち上げようとしたが、
ビクともしなかった。
「先生…なんというか、すみません……」
中野さんが何故か謝るので
「中野さんのせいじゃないよ…。多分山本くんが全部仕込んだことやろうし。」
全部山本のせいってことにした。
元はと言えば俺が悪いのになぁ。
泣きそうになった。
堪えた。
「あの…北村先生と山本先生って……どういう……
あ、いや!その…答えられなかったら……答えなくても…」
俺は驚いた。こんなに優しい人がいるんだなと。
《優しい人》を思い出して、
少し困ったような笑顔になってしまった。
「俺がやらかしたからなぁw」
昔のことだ。
もう気にしていない。
でも本当は、悲しかった。
「……すみません…。」
中野さんにそう言われて、泣きそうになったが
それよりも、嬉しくて、嬉しくて、
笑った。
今度は何も気にせずに
息継ぎせずに限界まで、笑った。
笑いすぎて涙が出てきた。
でももう悲しくなんてなかった。
「いやぁ中野さんさ、ほんまに…ほんまにかわいいな。」
今まで思っていたことが口に出ただけだ。
俺も中野さんも顔が赤く、熱くなっていた。
その時、誰かが来る音がした。
「んぇ?北村先生??中野さん??」
山本だった。
「……キス..しました?」
突然の山本の問いかけに
「してなせん!」
と、俺と中野さんの言葉が被った。
山本は、下を向いて何かを考えてから言った。
「……ふぅ〜ん。」
キスしたと思われているなら、と、
「じゃあもう、キスせんでいい?」
と言った。
すぐに「してください!」とは言わず
何か深く深く考えてから
「いや、してください。」
と言った。
思った通りの反応ではあったが、
悩んでしまった。
「うーん、でも」
その時、中野さんの手が動いた。
ちゅっ
初めてだ。 誰かにキスされたのは。
ファーストキスが事故じゃなければ
中野さんのキスが 初めてになるはずだった。