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「ンゲッ!」


あやまって舌を噛んでしまいそうになるゴーカートの挙動に驚き、他に捕まるところがないかを慌てて探している橋本をそのままに、宮本はサーキット場に入って行く。


(コイツの容赦ない、クレイジーな運転でここを走るとか、口から内臓が飛び出るんじゃないだろうか……)


捕まるところが見当たらないため覚悟を決めて、自身のシートベルトを両手で掴み、目の前に迫るコーナーの先を見つめた。自分ならすでにブレーキを踏んで、スピードを落とすタイミングだというのに、宮本はアクセルを緩めることはなかった。


「ンンンんっ!」


歯を食いしばるスピードでコーナーに侵入したせいで、否応なしに躰に重力がかかり、シートベルトを掴む両手がみるみるうちに汗ばんでいく。榊たち4人でレースをしたときとは明らかに違うスピードを、まざまざと体感した関係で、宮本がさらに進化したことがわかった。


「まっ雅輝っ、ほどほ、どにっ! 楽しいこと、は…伝わってるから!」


ゴーカートの全国大会に出ている佐々木の走りを直接見て、宮本自身の走りを比較した結果、改良版の走りをこれでもかと見せつけられている気がしたので、注意を促すべくして伝えたというのに。


「陽さんに俺が楽しく走ってることが伝わって、すっごく嬉しいっす!」


助手席の橋本を振り回すように、次々とコーナーを攻めまくる宮本相手に、なにを言っても通用しないことをすぐに理解した。それは、ベッドの中での行為と同じだったせい――。


『やめてくれ』など、橋本が拒否る言葉を出したときに見られる、宮本のSっ気。普段の優しい性格が一転したその姿は、いろんな意味で非常に厄介なものだった。自分だけがすぐ傍で見られるという、特別な姿だったから。


「ひゃっほー☆」

「うう、ぅうっくぅ…うっ!」


インプの動きとはまったく違うゴーカートの動きは、いつも以上に先が読めないため、橋本はすぐに根をあげてしまった。とは言え、途中下車できないのは当たり前なので、気を失わないようにサーキット場の道路ではなく、宮本の顔だけを見つめることにした。

子どものような、どこかあどけない表情でハンドルを操作する恋人の宮本を見ていれば、正気を保てると思った。それなのに――。


「陽さんってば、俺の顔を見つめすぎですよ。そんなことされたら、もっと張りきっちゃうかも☆」

「え……?」


宮本のセリフを聞いた瞬間、橋本はゾッとした。背筋が凍る間もなく宮本の運転はさらにスピードをあげて、サーキット場を駆け抜けたのだった。


「うぁあああぁあー! もうやめてくれぇえぇええぇ!!」


情けなさを表すような橋本の絶叫が周囲にこだまし、宮本のヤル気スイッチを入れてしまったのは、いうまでもない!

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