白くて優しい光を瞼の裏に感じてゆっくり目を開けると、そこは銀色の砂の上だった。
いつも目を覚ましていた、あのボロボロの家では無かった。
あのあと、俺は死んだのだろうか。
首をゆっくりと左右に振って、空いっぱいに広がる大きな塊を、ぼーっと眺めていた。
「起きた?おはよう」
後ろから掛けられた声に振り返ると、そこには阿部ちゃんが立っていた。
「阿部ちゃん、俺…」
「ふふ、やっと来てくれた。結構長いこと待ってたんだからね?もう少しで会えなくなるところだったよ」
「ご、ごめん…?」
「いいよいいよ、俺も何の説明もしてなかったし。たくさん辛い思いさせて、ごめんね」
「んにゃ?なんで阿部ちゃんが謝るの?それより、ここはどこなの?」
「俺の一番好きな場所」
「そうなんだ」
聞きたいことはたくさんあったけれど、どこから手を付けたら良いか分からなかった。
俺はひとまず、阿部ちゃんから質問されていたことに答えることにした。
なんだか、こうやって阿部ちゃんとゆっくり話をするのが懐かしい。
ガードレールに座って、阿部ちゃんと会話をした日がもうずっと前のことのように思えた。
「ねぇ、阿部ちゃん」
「なぁに?」
「俺、一番大事なのは「今」なんだって分かったよ。昨日でも、明日でもない。過ぎちゃったものは後からじゃもう手に入れられない。明日を待ってたら手遅れになっちゃうこともある。だから、いつだって今が大事なんだよね?」
「うん、それから?」
「もしも明日死んじゃうって分かってたら、きっと俺は、その前にしたかったこと、全部すると思う」
「そのしたかったことは見つけられた?」
「うん。やっと気付けたよ」
「それはいつするの?死ぬ直前まで取っておくの?」
「ううん。すぐやる。今すぐに。過去になっちゃうギリギリまで待ってても、それまでに何が起こるか分からない。だからこそ「今」が大事なんでしょ?」
「そこまで気付いたなら、もう合格だね」
「にゃはは、ほんとに先生みたい」
「ふふ、「大切なことは全て、」ってね」
「あは、なんだかそれも懐かしいなぁ…。でも、結局全部終わっちゃったな。気付くのが遅過ぎたみたい。勉強になったことは、来世で活かそうかな」
「まだ終わってないよ」
「んにゃ?」
「これが最後の問題になるかな」
「最後?」
「ここで終わりにするか、あの先まで歩いて行くか。佐久間ならどうする?」
阿部ちゃんが指差した先には、とても眩しく輝く大きな輪っかの形をした、ゲートのようなものがあった。
「あそこには何があるの?」
「不確かなもの。何が正しいのか、何が間違ってるのか、ぴったりする正解なんて何も無い、全てが混ざり合ったもので、たくさん溢れてる」
「そっか」
「時間だって巻き戻らない。自分の願いが全部叶う保証もない。「今」以降のことは何も予測がつかない。そんなものだらけの場所」
「そうなんだ…」
「怖い?」
「うん、怖い」
「なら、ここでおしまいにする?」
「ううん、行くよ。怖くても、まだ終わってないなら、俺、今すぐ行かなきゃいけないとこがあるんだ。うまく行かなくても、それでも、出来なかったままにしたくないんだ。後悔したくないの」
「そっか。すっかり強くなっちゃったね。なら、あと少し、ここで待ってて?」
「え、まだ行かない方がいいの?」
「佐久間に連れて行って欲しい子がいるんだけど、ちょっと強情で、動こうとしないの。説得してくるから、ちょっと待っててくれる?その間、暇潰し代わりにこの子置いておくから」
阿部ちゃんの言葉が切れると、出てくるタイミングを狙っていたかのように、その後ろからもう一人の阿部ちゃんがひょこっと現れた。
「暇潰しって、酷くないですか?マスター」
「マスターはやめてってば。とりあえず交代ね。佐久間のことよろしく」
「はいはい、分かってますよー」
阿部ちゃんがどこかへ歩いて行くと、傘を差した方の阿部ちゃんが俺の隣に座った。
「久しぶり、満月さん」
「あ、うん。やっぱり阿部ちゃんは二人いたんだね」
「いろんな事情があってね」
「ほぇぇ…。あ、そうだ。もう一回会えたんだから、これ、返すよ」
俺はずっと持っていた硝子の小瓶を、手の平に乗せて前に出した。
ところが、もう一人の阿部ちゃんは俺のその手を両手で包んで、静かに首を振った。
「ううん、これは君が持っていて」
「え、なんでよ」
「言ったでしょう?僕はもう集められないからって。それに君があの先に進む時、必要になるんだよ」
「ぇ、ぁ、そうなの?え、もう集められないってどゆこと?」
「いっぱいになったみたいだね。それは、彼が落とした月のかけらなんだ」
「彼…?その人に返したらいいってこと?」
「ううん」
「あ、それも違うの…?むずいな…。ねぇ、阿部ちゃん、俺バカだからさ、もうちょっと分かりやすく言ってくんにゃい?」
傘を差す阿部ちゃんとの会話は、相変わらずふわふわしていて、俺は阿部ちゃんが言いたいことの正解に、全然辿り着けそうになかった。
肩にその傘を置いてくるくると回しながら、阿部ちゃんは話を続けた。
「そこには、たくさんの悲哀、寂寞、後悔、苦悩が詰まってる」
「うん」
「彼は、毎晩そのかけらを落としてたんだ。本人は気付いてなかったみたいだけどね」
「彼?」
「でもね、そんな辛いものの中に、一つだけ温かいものが混じってる」
「温かいもの?」
「そこに満ちているものを全部、君が受け止めてあげて」
「俺が?」
「うん、君にしか頼めない」
「君は、誰よりも優しい人だから」
佐久間の銀色の髪が月の光に照らされているのを、ぼーっと眺めていたら、急に目の前が真っ白くなって、気付けば俺は、また訳の分からない場所に立っていた。
あ?どこだここ?
目黒の墓の上に置いていた剣を借りて、全てを終わらせようとしていたところだった。
まだ少し名残惜しくて、俺は佐久間のそばから離れられなかった。
朝日が昇り始めて、俺が傷付けてしまったその頬の一筋を、人間の形に戻った血だらけの指でずっと撫で続けていた矢先に、また知らない場所に来てしまった。
また時間がリセットされたのだろうか。
しかし、ここは今まで何度も戻され続けていた湖ではなかった。
真っ黒い空に、大粒の岩のようなものがいくつも浮かんでいた。
地面には、さらさらとした銀色の砂だけがあった。
「あ、やっと来た。もう…遅いよ。あと少しで会えなくなるところだったんだよ?」
「?」
声のする方に首を動かすと、そこには雨も降っていない天気の中、傘を差した阿部ちゃんが立っていた。
近付いてきたそいつの足がやけに顔の近くにあって、そこでやっと、俺は自分の視点がだいぶ低いことに気が付いた。
少しずつ人間の姿に戻り始めてたのに、なんでまた狼の姿に戻ってるんだ?
「ここは月の上だからね。地上にいる時よりもその力が強まるんだ。だから、君の姿もそれに引き寄せられて、勝手に変わってしまう」
阿部ちゃんは、俺が何に困惑しているのかを分かっているかのように、そう教えてくれた。
ただ、俺にはもう一つ疑問に思うことがあった。
目の前に人間がいるのに、今の「俺」は襲い掛かろうとする気配がない。
これはどういうことだ?
「あぁ、それはね。こっちで君の「もう一つ」の本能を消しておいたんだ。データを削除するみたいに綺麗さっぱり。だから、中身は人間、外身は獣の状態ってわけ。ここで襲われたりしたら、銀色の砂が真っ赤になっちゃうからね」
なるほど、そういうことなのか。
…いや、だったら、最初っからそれ消しといてくれたらよかったじゃん。
「それは無理だよ。今ここで、月の力を最大限に使わせてもらえたから出来たようなものだもの。生きている者の核を抜き取るって、すごく大変なんだからね?君が過ごしていた地上からだと距離が遠すぎて、少ししか力を分けてもらえなかったんだから」
よく分かんねぇけど、融通効かねぇな…。
それなら、時間を巻き戻せたのは、そこまで「強い力」ってやつじゃねぇってことか?
「あれは、君の願いの力のおかげだよ。君の心の底から湧き上がってくる強い渇望が源になっているから、それを借りれば僕が出す分は少しで事足りたんだ」
へぇー。全部聞いてもやっぱさっぱり分かんねぇ。
阿部ちゃんは次々に出てくる俺の疑問に全て答えたあと、「ふぅ…」と、わざとらしいため息を一つ吐いてから、また口を開いた。
「どうだった?」
「…?」
「この世界で、何度も時間を巻き戻しては、やり直して。それを繰り返して君の望む結末は手に入れられた?」
「そんなわけねぇだろ」と文句を言ってやりたかったが、今の俺は喋ることができないので、その悪態は「わふっ」という小さな吠え声に全て集約された。
「っはは、そっか、喋れないのか。じゃあ、このまま僕の話、聞いてて?」
「…」
「君はきっと、君が満足できるような結末を手に入れることは出来なかったよね。だけど、繰り返して行くうちに、君の中に眠っていた大切なものに気付くことは出来たんじゃない?」
「…ゥ“ゥ”」
「うん、素直でよろしい」
「グルルル…」
「ごめんごめん、ちょっと揶揄っただけでしょ?で、今、君の前には二つの選択肢がある」
「?」
「一、このままここでゲームオーバー。二、この先に続いている道を歩いていく」
阿部ちゃんが傘で指した先には、キラキラと光る道のようなものがどこまでも続いていた。
あの光の先に、あいつらがいるんだろうか?
なら、先に佐久間を迎えに行ってやらないと。
今頃、一人でどこかを彷徨ってるかもしれない。
この場所には空気が無いのか、佐久間の匂いがしなくて、見つけられそうになかった。
それに、何だかよく分からなかったが、こんなヘンテコな場所でゲームオーバーになるなんて、御免だ。
俺は阿部ちゃんに向かって「わふっ」と一つ吠えた。
「どちらを選ぶかは決まってるみたいだね。なら早速行こうか」
え?この状態のまま行くの?
この姿で佐久間に会いたくないんだけど。
今「なんとかの力」?が、めっちゃ強い場所にいるんだろ?
それで人間に戻してよ。
「残念ながら、僕にその力は無いよ。だから諦めて」
嫌だ。絶対に嫌だ。
こんな毛むくじゃらの格好で会いたくない。
こっちは長い時間かけて脱毛してたんだぞ!?
それに、佐久間だって会いたくねぇだろ、こんな俺に。
さっきまであいつ、この姿の俺に襲われてたんだそ?
トラウマもんじゃねぇか。
「もう早くしてよー、マスターに怒られちゃうじゃん…」
マスター?誰だそれ?
人間の姿に戻れたら行くから、もうちょっと時間くれ。
「だから、それは無理だって言ったでしょう?月に近ければ近いほど、君の体はヒトから一番遠い形に留まる。だから、ここから離れない限り、君はずっと狼のままだよ。君の中にある獣の核を取り去ることは出来ても、「僕ら」は君の姿を変えられる力は持っていないんだ」
んな理不尽なことがあってたまるかよ…。
とにかく絶対に嫌だ。絶対にここから動かないからな。
テコでも動かないぞ、という意思を主張するように、俺は胸の辺りに前脚を置いて、その場に座り込んだ。
「彼の言う通り、本当に子供だね…」
「ったくもう…ほんとに手がかかるんだから」
阿部ちゃんと押し問答を続けていると、また後ろから声がした。
振り返ったその声の先にいたのは、阿部ちゃんだった。
え?阿部ちゃん?
何で二人もいんの?
え、どうなってんの?
どっちが本物の阿部ちゃん?
「マスター聞いてくださいよぉ…。この子、絶対行きたくないってその一点張りなんです」
「マスターはやめてってば。とりあえず交代ね。佐久間のことよろしく」
「はいはい、分かってますよー」
二人の阿部ちゃんの会話が終わると、傘を差していた方の阿部ちゃんの体はどんどん透けていって、最後にはふっと消えてしまった。
目の前で起きていることをうまく飲み込めないでいると、もう一人の阿部ちゃんが俺の横にあぐらをかいて座った。
「翔太、意地っ張りはもうやめたら?」
「?」
「どんな姿でも、翔太は翔太だよ。それに、必死に姿を隠したって、気持ちに蓋をしてたって、いつかはきっと、前に出てきちゃう。」
「…くぅん」
「何が怖いの?」
俺の怖いもの。
……それは、拒絶されることだ。
狼の姿を見せることで突き放されてしまうこと、人間の時に抱いている気持ちを伝えて幻滅されること、その全部が怖かった。
「佐久間がそんな奴に見える?」
見えない。
だけど、「もしも」が過ぎって、怖気付くんだよ…。
「こんな時までビビっててどうすんの。迎えに行くって決めたんでしょ?」
そうだけどさ…。
流石にこの格好は…。
「やる前から怖がってたら、自分が望む結末なんて、一生手に入れられないよ」
阿部ちゃんの言う通りかもしれない。
何度も何度も繰り返してきた世界の中で、俺はいつだって何かしらを恐れていた。
佐久間の死を。
佐久間を自分の手で殺めてしまうことを。
一度抉られた傷に、また穴が空いてしまわないようにって、目を瞑って、蓋をして、佐久間を殺すことから逃げ続けた。
もう一度そこを指で押し潰して、傷口が痛むことを避けずにいたら、もしかしたらもっと早く、この世界から帰れていたのかもしれない。
結果として、佐久間は最後まで生き残り、俺が一番望んでいなかった結末を迎えて、俺は今、こうしてここにいる。
問題を先延ばしにしたから。
佐久間みたいに、いろんな方法を模索して挑まなかったから。
傷付いたとしても、怖くても、逃げちゃいけないんだ。
俺が望む何かがある限り、戦わなきゃいけないんだ。
次々に現れるでかい壁に、立ち向かって行かなきゃいけないんだ。
ここはもしかしたら、死後の世界なのかもしれない。
もう一度佐久間に会わせてもらえるなら、最後くらいは意地見せねぇとな。
こんな時くらいは、カッコつけとかなきゃ、死んでも死にきれねぇしな。
カッコっつっても、今の俺、狼だけどな。
まぁ、いいか。
ぴったりじゃん。
みんなにも、佐久間にも、そして自分にもずっと嘘を吐き続けてきた俺に。
「決心ついた?」
「わふっ!」
「ふふっ、じゃあ行こっか」
「わふっ!!」
「阿部ちゃんはずっとここに住んでんの?」
「どうかな、そんな気もするし、そうじゃない気もする」
「へぇー、ここ何にもないけど、阿部ちゃんは毎日どんなことして過ごしてんの?」
「僕の仕事は、雨を降らせること」
「あ、だから傘持ってたんだ」
「雨は全てを洗い流してくれる。マスターがそう願ったんだ」
「阿部ちゃんが?」
「ここは、マスターの世界」
「おーーーーーい!」
「…んにゃ?あ、阿部ちゃんだ!おっちー!」
しばらくの間、傘を差した阿部ちゃんと話をしていると、後ろから俺たちを呼ぶ、もう一人の阿部ちゃんの声がした。
振り返って、右手を大きく振っていると、阿部ちゃんの姿がどんどんこちらに向かって来ていた。その隣には大きな犬がいて、一緒に歩いてくるのが見えた。
「わ!でっかい犬だ!かわい…ぃ…?」
犬のように見えたが、どんどんと近付いて来たその体は、大型犬なんて言葉では言い足りなくて、俺の身長の二倍くらいはありそうだった。
銀色の毛並み、黄金色の瞳、鋭い牙と爪、ピンと立った大きな三角形の耳、ふさふさの尻尾。
いつかに満月の下で見た、あの狼と似ていた。
その子は、落ち着いたような優しい目で、俺を見ていた。
動物好きの俺としては、こんな立派な狼を間近で見られるのは、かなり嬉しかった。
「阿部ちゃん!この子が連れて行って欲しいって言ってた子?」
「道に迷っちゃったみたいなの。佐久間が行く場所と、同じとこに行きたいらしいから、一緒に行ってあげてくれる?」
「そうなんだ!大変だったね、一緒に行こっか。わ、もふもふだぁ…」
「ぁぅっ!」
「よしよし、いい子だなぁ」
頭や背中を撫でて頬を擦り付けると、その子は嬉しそうに一声鳴いて、その大きな尻尾を振ってくれた。
これまでの人生の中で、流石に狼と触れ合ったことはなかったので、接し方はこれで大丈夫かなぁと心配になりながらも、わんこと遊ぶときのようにしてみた。
意外とご機嫌でいてくれていたので、内心ほっとした。
怒らせてしまったら、食べられちゃいそうだったから。
「いちゃつくのはそれくらいにして、ほら、もう行きな」
「わ“ぅ“っ!!」
「わっ!ちょっと怒った?だめだよー、阿部ちゃんは俺の友達だからねー」
「くぅん…」
「にゃはは!お前ほんと素直でいい子だなーっ!よしよし!じゃあ、阿部ちゃんそろそろ行くね」
「うん、あの道をまっすぐ行った先が、佐久間のあるべき場所だよ」
「わかった!まっすぐね!ありがと!!」
「じゃあね」
「うん!じゃあねー!」
二人の阿部ちゃんに手を振って、俺は大きな狼と一緒にキラキラと光る道を歩いて行った。
ずっと先まで続いている道を、佐久間と歩いていく。
佐久間はうきうきしたように軽い足取りで歩いては、鼻歌を歌っていた。
ついさっきまでの惨劇なんて、何もかも忘れてしまっているかのように。
それとも、この先に待っている「何か」に希望でも持っているから、そんなに元気なのだろうか。
ここは死後の世界かもしれないのに。
いつでも前向きなこいつらしいな、と俺は心の中で思った。
「結構道長いねー、あとどんくらい続いてんのかなぁ」
「わぅ」
「まだまだあんだろうね、はぁ…っ、ちっと疲れてきた、普通に歩こーっと」
佐久間は道すがら、俺にずっと話し掛け続けてくれていた。
俺は言葉が紡げないので、短い吠え声を上げることしかできなかった。
それでも、俺が何か返すたびに、佐久間が楽しそうに笑ってくれるのが嬉しかった。
先程までスキップするくらいに跳ねながら歩いていた佐久間は、その言葉通り疲れたのか、大人しい歩き方になった。
こいつを早くみんなのところへ連れて行ってやりたかったし、こいつが疲れ切ってへとへとになってしまうのが心配だった俺は、佐久間の服の裾を噛んで後ろに引っ張った。
「ぅぉ、およよ?どったの?」
乗れ。
キョトっとした顔で、目を丸くさせている佐久間にどうにか伝わるように、「わふっ!」と一鳴きしたあと、自分の胴を佐久間の腿に擦り付けた。
「どうしたの?お腹空いちった?」
ちげぇよ!
相変わらず鈍いなお前は!
あと撫でんな!
う、嬉しくなっちゃうだろッ!!
伝えたいことが伝わらないのがもどかしくて、撫でられる手の感触が嬉しくて、照れ臭くて、俺は佐久間にやんわりと体当たりした。
よろけた佐久間の体を背中で受け止めて、全速力で駆け出した。
「うぉお!?はや!やば!うはははッ!!」
振り落とされんなよ、と伝えるように、俺はまた「わふっ!」と鳴いてみたが、佐久間はずっと楽しそうに笑っていた。
この体は意外に便利だ。
いくら走っても全く疲れない。
もうだいぶ長いこと佐久間を乗せて、足を動かしているが、ずっと変わらないペースを余裕で保てている。
結構な距離を進んできたと思ったが、まだ、なかなかみんなのいる場所までは到着しなさそうだった。
佐久間は佐久間で呑気なのか、肝が据わっているのか、少し前から俺の背中に全身を預けて眠ってしまっていた。
寝ているところを揺さ振り続けるのも悪いかと思ったので、足の速度を落として、また更に歩いていった。
ふと、「今どのくらい歩いたんだろう」ということが気になって、来た道を振り返ってみた。
すごく遠いところに、先程まで降り立っていたあの月があった。
地上で見る時よりはまだ大きかったが、それでも大分歩いてきたであろうことはわかった。
そのクレーターの穴をぼんやり眺めていたら、自分の体が途端に佐久間の体の重みに耐えられなくなって、四つ足がぐしゃっと崩れた。
「っ!?」
佐久間は変わらず熟睡していたが、俺の背中にその全体重がのし掛かってくるのが苦しくて、俺は唸り声を上げようと喉を震わせた。
「ぉ“い“……起きろ…っ」
あれ、喋れる。
咄嗟に腕を見てみると、そこには自分が理想とするツルツルの肌があった。
人間の姿に戻っていた。
「ん…あれ、、寝てた?ふぁぁぁ…」
背中から佐久間のあくびが聞こえた。
「あれ、狼くんどこだ…?」
ここにいるよ、と言おうとして、やめようかどうか迷った。
「あ、え、翔太!?」
だから声がでかいんだって…。
耳ちぎれるわ。
背中の重みが無くなったのを確かめて、押し潰されていた体を起き上がらせては、佐久間の方を振り返った。
「よう」
「ようって、、え、翔太こんなとこで何してんの!?」
「今さっきまでお前運んで走ってたんですけど?」
「……マジ?」
「マジ」
「じゃあ、やっぱり、翔太が…」
「そうだよ…俺だよ。……悪かったな」
「え、、、」
「みんなにも、お前にも、散々酷いことしたわ。ほんとにごめん」
「翔太…」
「これだけじゃ足りないって分かってんだけどさ、どうしたら許してもらえるか分かんなくて…ごめん、ごめんな……っ」
ゲームが終わった世界、なんでも正直に言える時間、俺はこれまでのことを少しでも清算するように何度も謝った。
嗚咽まじりの言葉を紡ぐたび、目からたくさんの涙が零れ落ちていった。
「翔太、顔上げて?」
「…っ、ぁ…?」
「泣かないで。確かに、翔太はみんなに酷いことしたかもしれない。でもその度に、みんなと同じくらい翔太がたくさん苦しんで、たくさん悲しんだことは、なんとなく分かるよ」
「へ…?」
「だって、翔太、泣いてたんだ。はっきりとは覚えてないけど、俺が死ぬ最期の瞬間、狼になってる状態だったのに、泣いたんだもん」
「俺…泣いてたの…?」
「どんな姿になっても、きっと残ってたんだろうね。優しい翔太の心は」
「…ぁ、、ぁっ……ぅ“ぁぁっ…」
そう言って抱き締めてくれる佐久間の温度にどうしようもなく安心してしまって、また涙が溢れた。
「よしよし、辛かったね」
「佐久間…ごめん…っ、ごめんな…!」
「いいのいいの、こうやってまた会えたんだから、それでいいじゃん。ね?ほら、もう泣き止んでよ、ほんとに涙脆いんだから…っ、」
「うるせ…、っお前だって泣いてんだろ」
「ぐすっ、にゃは、ばれた…っ?」
「俺を騙そうなんざ、100年早ぇよ」
「なはは!でも、俺たち超頑張ったよね」
「…すんっ、、あ?」
「絶対最初に処刑される俺と、何回やっても全然ルール覚えらんない翔太が、最後まで生き残るなんてさ!」
お前が最後まで生き残れたのは、半分はお前が頑張ったからで、もう半分は俺のせいだ。最後まで殺せなかったせいで、お前を長いこと苦しめちまった。
俺が最後まで生き残れたのは、きっと、ただ運が良かっただけだ。
今だって、ルールよく分かんねぇんだから。
どう返答しようか迷いながらも、とりあえず立ち上がり、佐久間に手を差し伸べて、
「ばーか、ほら行こうぜ」
とだけ言った。
素直に取ってくれた俺の手を、佐久間は何故か離そうとしなくて、俺たちはガキみたいにその手と手を繋ぎ合わせながら歩き続けた。
しばらく行くと、目の前に光のアーチのようなものが現れた。
立ち止まって、佐久間に問い掛けた。
「これくぐったら、あいつらんとこ行けんのかな?」
「…むむむ、多分。まっすぐ行ったら着くって、阿部ちゃん言ってたし…」
「とりあえず行ってみるしかねぇか」
「そだね。あ、ちょっと待って」
「んだよ?」
「これ、もう一人の阿部ちゃんから頼まれてんの」
「なんだこれ?」
佐久間はポケットから、小さな硝子の小瓶を取り出して、俺に見せた。
中には小さなかけらがたくさん入っていた。
何かが割れた破片のようにも見えた。
佐久間も戸惑うように、その瓶の中身に目を凝らしていた。
「よく分かんないの。でも、受け止めてくれって…」
「受け止める…?どういうことだ?」
「んんん…分かんないけど、俺が思うやり方でいっか。ん…っ!」
「ちょ!おい!!」
なんて奴だ。
一気飲みしやがった。
なんのかけらかも分かんないし、先が尖ってるものもあったのに。
佐久間はなんの迷いもなくそれを口の中に放り込み、一息に飲み下した。
阿部ちゃんからもらった小瓶の中に入っていたかけらを、一気に飲み干してみた。
「受け止めて」と言われても、どうしたらいいのか分からなかった。
だからとりあえず、受け止められそうなところがあるとしたら、それはどこだろうと考えてみて、一番最初に思い浮かんだ体の中に入れてみることにした。
翔太は、俺がいきなり小瓶を勢いよく煽ったのを見て、驚いたように大きな声を上げた。
一息に飲み下すと、喉に鋭い破片が突き刺さって、ものすごい激痛が走った。
「っ!?い“っでぇ“!!?」
「バカか!当たり前だろ!」
喉を外から押さえて何度も咳き込むと、翔太は蹲って丸まった俺の背中を何度もさすってくれた。
かけらが体の中を通っていく感覚がする。
悲しみの冷たさと、寂しさの塩辛さと、悔いの苦味と、苦しみの熱さが、とめどなく体中を駆け巡っていった。
「ぁ“ッ!?、ぐ……ぁ“ぁ”っ…!」
「佐久間!?大丈夫か!おい!!」
つめたい、からい、にがい、あつい、、、くるしい……ッ…!!
耐え難い苦痛は、かけらがお腹の中に落ちた瞬間に溶けて消え、その後には幸せの甘さだけがじんわりと広がっていった。
あぁ…こんな気持ちだったんだね。
辛かったよね、しんどかったよね…。
でも、大丈夫。全部俺が受け止めるから。
それと、最後に感じたあの甘さ。
俺…少しくらいは期待してもよかったのかな…?
体に広がるたくさんの感覚は一斉に押し寄せたあと、すぐに消えていった。
息を整えてから顔を上げると、翔太の心配するような顔が目に飛び込んできた。
綺麗に整えられた眉毛が、八の字に下がっていた。
「はぁーっ、びっくりした」
「びっくりしたのはこっちだよ。ったく無理しやがって…」
「ごめんごめん」
「体はなんともないのか?」
「んー、大丈夫みたい」
「ほんとかよ……。んで、この後はどうなるんだ?」
「…分かんない」
「………はぁ、とりあえず、くぐるか」
「うん!」
差し出してくれた翔太の手を、なんだか離したくなくて、俺はずっと握っていた。
俺はもう一度、翔太の手を強く握り直してから、二人並んで、その光るゲートをくぐった。
この先には何があるんだろう。
もし、もう死んじゃってるなら、天国とか、地獄とか…?
でも、まだ終わってない。
阿部ちゃんがそう教えてくれた。
怖いし、不安だらけだ。
ここを通ったら、もう翔太とは会えないのかもしれない。
でも、今だけでも翔太が隣にいてくれるなら。
これからどんな辛いことが俺を待っていようと、最後に翔太と触れ合えたから。
俺はもうきっと、なにも怖いものなんかない。
柔らかい光を浴びながら、翔太の手の平の温度を感じていると、俺はだんだんと深い眠りに落ちていった。
ばいばい、翔太………。
けたたましい金属音が部屋のそこかしこで突然鳴って、俺は飛び起きた。
「ぅぉおおおおぉぉぉっ!?」
もう大分長いこと身を預けていなかったように思える、拘り抜いて買ったベッドの上に、俺は座っていた。
ここは、俺の家だ。
帰って、、来れた……ってこと…?
困惑していると、寝室のドアを隔てた向こうから、愛猫たちの声が微かに聞こえてくる。
急に大きな声を上げた俺を心配するような音と、ご飯を強請るような甘えた音が懐かしくて、その二つの声に嬉しくなって、急いでアラームを止めてその子たちに会いに行った。
「つなぁ〜っ、しゃちぃ〜っ、会いたかったよぉ…っ」
「んなぁ〜」
「うみゃっ」
久しぶりに二人に会えたことが幸せで、俺が何度も頬擦りをしていると、鬱陶しかったのか、ツナもシャチも俺の腕からするっと抜け出してどこかへ行ってしまった。
ピロンと鳴った電子音に振り向くと、スマホが光っていた。
久しぶりに触る便利な道具にも感動を覚えつつ、ロックを解除すると、スケジュールアプリから通知が来ていた。
「10時、Aスタジオ…?」
今日の予定だった。
今は何時だ…?
恐る恐る時計を見て、その針を確認すると………。
「9時10分!?!??やばっ!!」
俺は急いでお風呂に入って、髪も乾かさないまま簡単に身支度を整えて、タクシーを呼んで、引っ掴んだバッグを肩に掛けて家を飛び出した。
スタジオに向かっていく道すがら、タクシーの中で考え事に耽った。
あの世界は、やっぱり夢だったのかなぁ。
さっき日付確認したけど、一日しか経ってなかったし…。
阿部ちゃんと二人でゲストに呼ばれたあの収録日は、昨日の日付だった。
一週間以上の時間をあそこで過ごしていたような気がするが、実際のところは八時間くらいしか経っていなかった。
とても長い夢だった。とても八時間で見きれるものでは無いように感じたが、それが実際に起きたのだから、びっくりしてしまう。
目的地に着きそうになったところで、スマホのサイドボタンを二回押して、支払いの準備をした。
不思議な体験をすることもあるんだな、と簡単な結論を出しておいて、俺は今から始まる仕事に集中することにした。
あれから3日経った。
今日は、メンバーみんなでYoutubeの撮影をすることになっている。
全員が集まることなんて最近は滅多に無いから、とても楽しみだった。
ウキウキしながら事務所のドアを開けると、そこには異様な光景が広がっていた。
俺は中に入ることも忘れて、目の前にある二つの塊に向かって心に浮かんだ疑問をそのままぶつけた。
「……どうなってんの?」
「あ、佐久間。おはよう。うーん…俺にもよく分からないんだよね」
「えええ…」
事務所の広間には、ちょこんと正座をしながら本を読んでいる阿部ちゃんと、その背中にピッタリ張り付くように抱き付いているめめとがいた。
俺たちの声は聞こえているんだろうが、ぴくりとも動かないめめは、なんだかコアラみたいだった。
二人が付き合っているのは前から知っていたが、めめがここまでべったりなのは、初めてのことじゃないだろうか。
めめの謎の行動に俺も阿部ちゃんも戸惑いながらも、俺はとりあえず気を取り直し、荷物を放ってから阿部ちゃんの隣に座って、スマホを眺めることにした。
しばらく経って、全員が同じ場所に集まった。
撮影はもう少ししたら始まるらしい。
まだゆっくりしていても大丈夫かと思い、みんなに挨拶をしたあと、またスマホに視線を移した。
そんな時、ふと阿部ちゃんと涼太の取り止めもない会話が耳に入ってきた。
「ねぇ舘様」
「ん?」
「俺さ、この間変な夢見たんだよねぇ」
「へぇ、どんな夢?」
「内容はうまく思い出せないんだけど、みんなが集まって何かしてるのを、俺はずっと上から見てるの」
「うんうん」
「それで、なんか…なんか、「この展開はやだ!」とか「こんな結末じゃだめ!」とか、何回も思うの」
「うん、それで?」
「で、うまく言えないんだけど、そう思った俺は何回も、もう一回、もう一回、もう一回っ!って唱えるの」
「へぇ、唱えた後はどうなったの?」
「これがすごいんだけど、時間が巻き戻ったの!俺がそうやって言うたびに、一番最初まで!」
「それはすごいね。阿部が時間を操作できる世界か。楽しそうだね、見てみたいよ」
「ね!こんな力、ほんとにあったら、ちょっと面白そうだよね」
「なんやなんや?阿部ちゃん特殊能力手に入れたんか!」
「きゃはは!かっこいいね!」
「阿部ちゃん、ついに超能力系のオカルト番組も出ちゃう感じ?」
「そっちの勉強もしといたら?阿部は喋るの上手いから、そっちでもきっと活躍できると思うよ」
「ありがと、照」
…なぁんだ。
あれは、あの声は、あの世界は。
そういうことだったのか。
一つ謎が解けたことにすっきりした気分になって、スマホから顔を上げると、 翔太と目が合った。
翔太の言いたいことはなんとなく分かった。
顔が全力でふて腐れている。
多分、あれは、
「お前のせいかァァアアァァアアッ!!!」
って言ってると思う。
その顔が面白くて、思わず手に持っていたスマホで、むすっと頬を膨らませる翔太を撮った。
翔太はずっと、そばにいてくれてたんだね。
ありがとう。
そう心の中で伝えて、画面の中の丸いボタンを押すと、カシャ、と音が鳴った。
撮影も無事に終わって、次に撮るものの内容を決めておこうと、みんなでそのまま会議をした。
こんなに平和な「会議」は久しぶりで、みんなもずっと楽しそうに笑っていて、俺は泣きそうになった。
みんなで再生回数の統計を取って、楽しかった企画はなんだったっけ?と思い出し合いながら、それぞれ案を出して行った。
「料理系は?」
「ふっかさんがおる日がええな」
「なんでだよ…。あ、俺ジェスチャーゲーム楽しかったからもう一回やりたい」
「僕、阿部ちゃん先生がいい!頭使うの好き!」
「俺も。あの企画が一番好き」
「えー、ラウも舘様もありがとう、嬉しいな」
「あざとい警察です!たいほーッ!阿部ちゃんには“首コテン”の容疑がかかっています!」
「えー、してないってばー、あははっ」
「ちょっと佐久間くん!俺だけの阿部ちゃんなの!くっつかないで!」
「もーっ!うるさいっ!目黒もここでイチャつかないで!佐久間!脱線するから静かにしてて!」
「「……はーい」」
「きゃはは!みんなパパに怒られてる!」
「みんなで出来るもの1個決めて、今日は解散しようぜ」
「みんなで出来るもの、、あ、人狼ゲームまたやる?」
ふっかの提案に、俺は一も二もなく即座に声を上げた。
「「却下で」」
俺の声にハモる心地よい高音。
んね、あとちょっと、しばらくは、お休みしたいよね。
俺とあいつだけの秘密を知らないふっかは、
「即答かよ!」
と大きく体を揺らしながら、ふっからしい反応をした。
俺はその返しに大声で笑った。
結局、次に全員で集まって撮影をする日は「阿部ちゃん先生」をやることになった。
「次の問題考えておくね、、ッ、はぁ…っ… じゃあ、っ、またね…っ!」
と言いながら、阿部ちゃんは背中に張り付いためめを引き摺りながら事務所を出て行った。
次のスケジュールがあるからと、みんな出て行った広間の中で、俺と翔太だけがここに取り残された。
きっと、今までの俺なら、みんなの流れに乗るようにして、足早にその空間から出て行っていたと思う。
「明日がある」って思っていたから。
いつまでも変わらないものがあるって思い込んでいたから。
でも、違う。
「今」しかできないことがある。
いつだって、俺たちは「現在」しか生きられない。
巻き戻してやり直すことはできない。
明日に全てを懸けてじっと待っているなんて、そんな生やさしい瞬間は一秒だって無い。
もし明日、もしも明日、自分が死んでしまうって分かっていたら。
俺がしたいこと、 それは………………。
俺は立ち上がって、翔太のそばに座った。
「ねぇ翔太」
「ん?」
「ぁ、えっと…」
正座した膝の上に置いた手が震える。
心臓が、走った後みたいにバクバクする。
でも、言わなくちゃ、伝えなくちゃ、明日になってしまう前に。
不確かな現実。
自分の願いが全部叶う保証なんて何も無いこの世界は、怖くて仕方がないけれど、それでも後悔したくないから。
「今日、ご飯、行かない…?翔太に話したいことがあるの」
「今」以降のことは何も予想がつかない、そんな空間の中で、翔太はガタガタと震える俺の手に、そっと自分のそれを重ねてくれた。
「俺も今、そう言おうと思ってたとこ…」
そっぽを向いてそう言った翔太の「耳」はあったかそうで、それは、つい三日前に染めた俺の髪と同じ色をしていた。
GAME SET
Result : Draw
Werewolf :Shota Watanabe
Medium :Daisuke Sakuma
Knight :Ren Meguro
Fortune Teller :Raul
Baker :Ryota Miyadate
Citizen :Hikaru Iwamoto
Citizen :Tatsuya Fukazawa
Citizen :Koji Mukai
Rain Man :Ryohei Abe
Game Master :Ryohei Abe
Fin
コメント
3件
映画化してほしい… 今まで見てきた中でいっちばん面白かった…!
めちゃくちゃ面白かったです! レインマンとかパン屋さんとか、動画で見た懐かしい役職もいっぱいで😊 🩷💙🩷も幸せに向かいそうで良かったですし、コアラになってる🖤も最高でした😂
面白かったあー!!!!ハラハラドキドキキュンキュンが止まらなくてほんと何回も読んでます✨✨✨