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〚Part7〛ありがとう
レオリオは珍しくリビングで学業に励んでいる
いつもなら自分の部屋の勉強机で頭を捻らせていることが多い時間帯だが、今日は珍しくクラピカが夕食と入浴の後に恒例となった猫の夜ごはんタイムを済ませたところでベッドに潜り込むとスヤスヤと気持ちよさそうに寝息を立ててぐっすりと眠ってしまった
「久しぶりに外に出て人と話したら疲れちまったか?」
静かに部屋の電気を消してやり睡眠の邪魔をしないように勉強セットを抱えてリビングに降りてきたというわけだ
俺が問題を解いていると猫が机の上に乗ってきて興味深そうにペン先を見つめている
「勉強してるからいい子に座っててな」
猫はレオリオの言う事をしっかり聞いてその場に大人しく座ると机の上の消しゴムをチョイチョイと動かしてみたりと少しだけイタズラしてみる、それを見たレオリオは机の上を一度見まわすと猫が口に入れてしまいそうな大きさのものをペンケースの中に片づけてから再び問題が表示されているタブレットに向かって悩みながら解答していく
「終わった」
解答レポートを送信し終わったところで盛大に身体を伸ばした、俺はよく頑張った
”にゃぁん”
猫は俺が一息ついたタイミングで手元に来てスリスリと甘えてくる、そういえば帰ってきてから猫と二人きりになるタイミングがあまりなかった
「よっし、たくさん遊んでやるか」
クラピカが上で寝ているから音の出ないボールのオモチャを投げてやれば猫は嬉しそうに取りに行って、咥えてまた俺のところに持っていく
「おりこうさんだな」
手元に持ってきたらしっかりと褒めてやって、また投げてやると嬉しそうに走っていく姿がとても可愛らしい
「いい子だ」
それからかなり長い時間を猫とボールで遊んでいた、ソファーに座っている俺の膝に猫がポトンとボールを落とすと猫は膝の上でお箱座りと呼ばれる姿勢になる。自分の飼い猫は世界で一番可愛いなぁと猫をギュッと抱きしめると猫の独特の匂いを肺いっぱいに堪能する
「お前がクラピカと仲良くなってくれて本当に良かった、初めて会った日にクラピカと遊んでくれて本当にありがとうな」
「お前がクラピカと仲良くなれるか少し気がかりだったんだ、普段だったら俺が帰ってきたら一番に出迎えてくれるお前が玄関どころか姿も見せなかったからきっと俺以外の気配に警戒してるんだろうなって思って心配してたんだ、あいつとは十二支んに勧誘して再会して少したったくらいにいろいろあってダチから恋人になったんだ」
”にゃぉ”
と猫は甘えるように鳴くと俺の手をペロペロと舐めてくる
”にゃぁぉん”
この猫はこうしておしゃべりすることができるから俺は帰省すると猫にこうして悩み相談をしていた
「俺がお前にクラピカの話をしょっちゅうしてたからお前も初めて見てクラピカってわかったのか?」
ハンター試験から戻ってからとヨークシンから帰ってきて医大受験に合格するまでの間に俺はクラピカに対する想いを猫によく相談していた
「お前はクラピカのこと好きか?」
”みゃぉ”
「そっかそっか、俺もアイツのことすごく愛してるんだ、だからこれからもクラピカと一緒にここに帰ってきてお前やおふくろと過ごせたらなって思ってる」
”にゃぉ”
「あいつにも帰ってこれる場所ってのを作ってやりてぇ」
”にゃぉ”
「俺もクラピカも立場とか、やらなきゃいけない事がたくさんあるから今すぐ一緒になろうっていうのは無理なのはわかってるし、一緒に暮らすことができるのは年単位で時間がかかることは承知の上だ、それでも、なんつーか・・・離れてても愛し合ってるみたいな?わかるか?」
”にゃぅ”
「俺らは性格が正反対なところがあるからケンカすることもあるけどやっぱりお互いに側にいて欲しい存在っていうのか、うまく言えないけど、離れていてもずっと繋がってるって確証が欲しいけどプロポーズする勇気がでなくてさ、もし断られたらって想像するとすごく怖いんだ」
”にゃぅ”
俺は猫の背中をゆっくりとなぞって背中からしっぽにかけて撫でてやる
「クラピカが船の中で怪我してるのを見つけて支えたときにクラピカの指先がすごく冷たくなってて、俺はまた愛する者を失うのかって身体が震えたんだ」
「その時わかっちまったんだよ、クラピカのオーラがどんどんと少なくなってるのに、絶対に死なせたくないから身体をとにかく暖めようと思って俺の身体に押し付けるようにしっかりと抱きしめてクラピカの名前を呼び続けたんだ」
「そうしたらクラピカが少しだけ目を開けてくれてぐったりした力の無い声で俺の名前を呼んでくるもんだからなんとかしてやりたいって必死に考えて」
「俺が抱きしめたら少しずつ反応できるようになったってことは俺の生命エネルギーをわけてやればいいんだって気がついて、キスしながらオーラをクラピカの体内に送り続けたんだよ」
”にゃぁぉ”
猫は体勢を崩すとのびぃっと手足を投げ出す姿勢になる
「俺のオーラをわけてやったらクラピカの身体がだんだんあったかくなってきて、そのまま瓦礫を避けながら医務室に運んだんだ、それからはクラピカの容態が良くなるまでずっと付き添ってた。本当は医者の卵として救護活動に参加したり、治療の手伝いをしないといけなかったけれど、クラピカの手を今離したら二度と会えなくなる、そんな気になってさ」
「クラピカがしっかりと目を覚まして身体を起こした時に俺は気づいたら泣いてたんだ、今度こそ愛する者を失わずに済んだって。俺のオーラを入れたことでクラピカの念の性質が変わっちまって・・・鎖の能力が前よりも使えなくなってるってわかった時にクラピカは俺に「後悔はない」って言ったんだ」
「まぁ、クラピカはすごいから今じゃダウジングとかなら鎖で出来る程度に回復したらしいんだけど・・・。リハビリを終えたクラピカの外出許可が降りたときにクラピカに案内されてクルタの同胞に初めて会いに行ったんだ」
猫はゴロゴロと喉を鳴らしながらレオリオの話を聞いている
「目標だったすべての緋の目を取り戻したのに寂しそうな顔をして涙を堪えるクラピカの顔が今でも忘れられねぇよ、それから故郷に同胞を弔った後のクラピカは燃え尽き症候群みたいになってずっと病院のベッドに座って外を眺めてたんだ。体調が不安定だったっていうのもあるけど、このままだとアイツが壊れちまうようなきがして、それでも声をかけたら『私のことは気にかけなくても大丈夫だぞ』って言ってきてさ」
「手伝いで小児病棟に行ったときにセラピードッグと触れ合った子どもが笑顔になったのを見てこれだって思ったんだ、クラピカは動物が好きだから動物と触れ合ったら笑顔になれるんじゃないかって、そんで病院から連れ出して環境を変えてやって動物と触れ合えるようにって考えて思いついたのがココだったんだ」
「チードルにクラピカを俺の実家に連れて行きたいって言ったら最初はクラピカの体調が心配だから許可できませんって言われたんだけど、俺が毎日メディカルチェックをするし実家のおふくろはベテランナースだって話をしたら条件付きで許可してくれたんだ」
「クラピカにいろいろ理由を話したら絶対に『私のためにそこまでする必要は無い』って言われることがわかってたから一緒に俺の故郷に来てくれ、そんで療養しながら俺の勉強のサポートして欲しいんだって言ってここに連れて来たんだ」
レオリオは喉を鳴らす猫の背中をポンポンと撫でまわしてやると嬉しそうにしっぽをはためかせる
「お前と触れ合ったおかげであいつは笑顔も見せてくれるようになったし元気にもなってきた、体調もほとんど崩さないし本当にありがとうな」
眠たくなってきたレオリオがあくびをすると猫もつられたようにクァっと小さいあくびをする、レオリオは猫を一旦降ろすとソファーにごろんと寝転んでクラピカの昼寝用の枕とブランケットを拝借することにした、猫はレオリオの胸元に入ってきて丸まってきたのでぎゅっと抱き寄せてやる
「おヨメさんになってほしい・・・な・・・」
眠気に抗えず目を閉じたレオリオに合わせるように猫も目を閉じてふたりは夢の世界へ一緒に旅立った
猫の鳴き声、コーヒーの香り、パンの焼けた匂い
レオリオの意識が少しずつ覚醒していき周囲の情報を脳に伝えてくる
”にゃぉん、にゃぉん”
「はいはい、どうしたのだよ」
愛おしいクラピカの声
「今キッチンを使ってるから足元に寄ってきたら危ないのだよ、ぶつかったら怪我をしてしまうよ」
身体にかかっていたブランケットをどかして起き上がりキッチンのほうを見つめると、猫のしっぽとクラピカが着ているスモックエプロンのバックリボンが一緒にユラユラと揺れている
「ごはんの準備が終わるまでキャットタワーで待っていて欲しいのだよ」
猫を抱っこしているクラピカは俺が起きたことに気がついたようでそのままこちらに向かって歩いてきた
「おはようレオリオ、私に気を使ってリビングで勉強をしていたのか?」
俺がじっと見ているわけを自分の服装にあると思ったのかクラピカは自分の姿を見つめると「お母さんがクルタ服で家事をするときに水が跳ねて汚れないようにと黄色のエプロンの他にも袖付きのエプロンを購入してくれたのだよ」と説明してくれる
朝陽を浴びてキラキラと輝く金髪と水色のふんわりとしたシルエットのエプロン姿がたまらなく愛しくて、腕の中の猫ごとクラピカのことを抱きしめると我慢できなくて唇にキスをした
「こ、こんな朝から何をするのだよっ」
クラピカの耳が一瞬のうちに真っ赤になっている
「なんかさ、幸せだなって思ったんだよ。休みの日に朝起きたらお前がいて俺の飼い猫を抱っこしてることが」
俺の腕の中からするりと抜け出たクラピカはキャットタワーの一番高いところにあるベッドスペースに猫を置いてやるとパタパタとキッチンへと戻っていった
それからクラピカが用意してくれた朝食を一緒に食べてキャットタワーの頂上で丸くなる猫を一緒に見つめながら昨日の猫の様子を語り合う
食べ終わった後の食器をクラピカが片づけてくれてから洗濯物のカゴを運んでいると、タワーから降りた猫が小走りでクラピカのことを追いかけていき、しばらく経ったらふたりでリビングに戻ってくる
床にコロンと転がった猫を見て目線を合わせるようにクラピカがしゃがみ込み「かわいらしい」と猫の頭を撫でると猫はその手に顔をスリスリと擦りつけた
なんて穏やかで幸せな時間なのだろうか
俺はしゃがんだまま猫とじゃれ合うクラピカのそばに行くと後ろから優しくクラピカを抱きしめた
「レオリオ?」
「これからもお前と一緒に猫とおふくろがいる実家に帰ってきたい、だからクラピカ=パラディナイトになってくれないか?」