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〚Part8〛家族
その日のクラピカはあまりの衝撃的光景にただその場で腰を抜かしていることしかできなかった
いつもの朝のように洗濯物を干していたら窓辺で寝転んでいた猫がソワソワと落ち着かないように窓辺を歩き回っている
「どうかしたのか」
窓の外には何も異常はない、気にしすぎかと洗濯物の続きに取り掛かったところ”シャーッ”という激しい鳴き声を耳にしてクラピカは振り返った
「猫が大きくなっている・・・」
猫が窓の外を見ながら全身の毛並みと尻尾をボワッと膨らませて怒ったような鳴き声をあげながら威嚇している、状況がわからないクラピカはとりあえず猫の飼い主のひとりであるレオリオを呼びに行くべきだと判断して二階にかけあがる
「レオリオすまない」
勉強中だと思い丁寧にノックして返事があることを確認してからドアを開ける
「クラピカどうしたんだ?そんなに焦って」
一度深呼吸して気持ちを落ち着けてからクラピカは口を開いた
「猫が膨らんだのだよ」
レオリオはパチパチと目を瞬きさせて?を頭に浮かべ、とりあえず様子を見に行こうと眼鏡を外して机の上に置くとクラピカの手を取って下へと降りて、リビングに入ってから猫の様子をみたレオリオはやっと状況を把握した
「縄張り争いか」
「なわばりあらそい」
次はクラピカが頭に?を浮かべる番だ
「クラピカよく見ろよ」
レオリオが少しだけカーテンを開けると猫が見つめる庭先には一匹の猫がいた
「こうやって近所の猫が庭に入り込むとすげぇ怒るんだよ」
「怒っているのか」
「怒ると猫は全身を大きく見せようと毛を逆立たせて膨らむんだ、他にもびっくりした時にしっぽが大きくなったりするんだぜ」
威嚇を続ける猫の名前を優しくレオリオが呼ぶ
「怒ってる姿そっくりだぜ」
猫の縄張り争い鑑賞に熱心になっているクラピカを見ながらレオリオはこっそりとひとり言を呟いた
庭先の猫が出ていくことで縄張り争いを終えるとレオリオはおやつを持って猫に優しく呼びかける
「ほーらおやつだぞ、おいで」
猫は先程とは全く違う様子でレオリオに甘える姿を見て「猫の事をもっと知らないといけないな」とクラピカは猫についてもっと学ぶことを決心したのだった
「レオリオ、実は帰る前に猫に何かプレゼントをしたいと考えているんだ」
「プレゼントか、この間も大量にいろいろ買ってきてくれただろ」
「そうではなくて二か月楽しませてくれたお礼に猫が喜ぶものをあげたいと思っていて・・・」
レオリオは考えると「あ、なら俺と一緒に買うか?」と提案する
「俺の部屋に猫はいることが多いみたいでキャットタワーを置いてやろうと思ってたんだ、ちょうど午後から見に行くところだからお前も一緒に来いよ、デートがてら」
レオリオに腰を抱かれたクラピカは頬を染めて「ちょっとレオリオ」と形だけの仕草で腰に回る手をどけようとすると、顔を優しく動かされて唇を重ねてから舌を絡め合う
「レオリオ、お前というやつは・・・」
頬だけでなく瞳も微かに赤く色づいてきたのを見てレオリオはクラピカを抱きあげて二階の自室へとクラピカをお持ちかえりした
「まったく、若さと元気いっぱいなレオリオを相手する身にもなって欲しいのだよ」
クラピカはレオリオと仲を深め合う時間を過ごした後にシャワーを浴びると相変わらず自分の着替えを覗いてくる猫の頭を撫でながら興奮の抜けきっていない瞳で猫に惚気るが、猫は何もわからないという素振りでクラピカの膝の上に乗る
「もうすぐ君がこうしてシャワーの後に来てくれない生活に戻ると思うと寂しいな」
クラピカはすっかり猫のいる生活に馴染んでしまったなと喉を鳴らしてご機嫌の猫を抱きあげてリビングへと向かった
「レオリオが勉強している間に昼食を作るから大人しくしているんだよ」
調理中にキッチンに猫が立ち入らないようにサークルの中に降ろしてやると冷蔵庫を開けて食材の確認をする、複雑な料理は難しいが簡単でレシピに忠実に作るだけの料理なら少しずつこなせるようになってきたので材料を適当に切ってからスマホでレシピを確認した手順で作っていると上からイスを引く音が聞こえてきた
「昼飯作ってくれてんのか?ありがとな」
レオリオがリビングに顔を出したことで猫が鳴き声をあげて昼食を要求する
「おーおー、普段おふくろだけの時はこの時間もらってないだろ?ん?でも可愛いから特別にあげちゃうぞ、俺らが来てからさらにまんまるになったんじゃねぇか?あとで一緒に体重測るか」
レオリオが猫に語りかけているセリフがおかしくて菜箸で野菜を炒めながらクラピカは吹きだしてしまった
共に昼食をとって出かける支度をしてから二人で猫に「でかけてくる」と声をかけて家を出る
「やっぱり猫用品ならおばちゃんのとこだよな」
「ああ。先日はお菓子をごちそうになったりと親切にしていただいた」
「俺がガキの頃におふくろが夜勤だと夜はおばちゃんとこで寝させてもらって朝になったらおふくろが迎えに来てくれてたんだ、少し大きくなってからも夜に一人でいる時に困ったことがあったらいつでも連絡しておいでって言ってくれてて、すげぇありがたかった。なんか元々おふくろと学生時代の友達なんだとよ」
話ながら歩いていると目的の店に到着する
「こんにちはー、レオリオっす」
レオリオの声に先日の女性が店先に来てくれてクラピカと一緒なのをみると「ラブラブね」と笑いながら猫コーナーへと案内してくれる
「キャットタワー買ってやりたいんだけどおばちゃんとこで選ぶのが安心だなって、なんかおススメある?」
クラピカは展示されているキャットタワーを興味深く見ていく、レオリオが予算と大きさを伝えるといくつかの候補を出してくれた
「レオリオ、中に隠れることができるものがいいのではないか?」
「確かにこれだったらいろんなところで寝たりできていいよな」
決定したものの支払いを済ませると女性が「箱が大きいから配達のついでに家まで送ってあげるよ」と申し出たのでお言葉に甘えることにした
「おばちゃん、明後日には帰るんだけど実は俺達明日入籍するんだ」
「クラピカ=パラディナイトになります」
レオリオの結婚報告に女性は我が事のように喜んで祝福してくれた
「レオリオにはしっかりした方がお似合いよ、でも学生結婚かしら?」と言われたのでクラピカが「私は既に職に就いているのでレオリオは学生結婚ですね」と返すと「あらあらお若いからあなたも学生さんだと思ってたのよ、差し支えなければご職業は?」と質問されたのでクラピカは少し考えてから「会社経営を任されています」と答えたのを聞きながらレオリオは(なるほどマフィアの若頭は会社経営者って言い回しがあるんだな、覚えとくか)と新しい学びを得ていたのであった
荷物と共に送ってもらったことに丁重に礼を言うと「二人ともまたお店に遊びに来てね」と言ってもらえた
「レオリオ、部屋まで運べばいいか?」
「お、そうしてくれ」
二人で説明書を見ながら順番に組み立てていく
「まさかキャットタワーを組み立てる日が来るとは思わなかった」
クラピカが楽しそうに説明書を見ながらパーツを組んでいる姿を見てレオリオは途中から見ているだけにしていた
「できたぞ」
レオリオの部屋の日向のあたる良い場所にハンモック付きのキャットタワーが設置されたので早速使ってもらおうと猫を探しに行く
「そういやハンター試験に向かう船で初めて会った時にお前はハンモックで寝てたよな」
騒ぎなんて全く気にしない涼しい表情でクラピカが船内に張ったハンモックで休んでいたことを思い出す
「レオリオは寝相が悪いからハンモックは無理だな」
「いやそれ以前に俺の身長と体重を支えられないと思うぞ」
ソファーで丸くなっていた猫が二人の声で起きたのかあくびをしながら足元までトコトコ歩いてくるとクラピカは丁寧に抱きあげる
「お前の猫の抱っこも慣れたもんだな」
「あぁ」
クラピカが猫の頬に自分の頬をスリスリする姿にレオリオは目元を和ませる
「ほら、新しいキャットタワーはお気に召すか?」
猫は見たことの無いキャットタワーにゆっくり近づくと匂いを嗅いだり、爪を研いだりしながら順番に上に登っていく
「レオリオ、ハンモックが気に入ったみたいだな」
猫は一度頂上まで降りて丸くなったと思うとすぐに立ち上がり途中にあるハンモックで毛づくろいを始めた
「こっから落ちないように体重維持しねーとな」
レオリオが猫の鼻先をツンと触るとカプッと噛まれている
「イテッ」
そんな和む光景を見ながら「フフッ」とクラピカは笑みを浮かべた
猫がスヤスヤと眠ったのを見て二人は明日には役所に提出する婚姻届の記入を進めていく
「マジか証人欄二人いんのか、おふくろともうひとりどうすっかな」
「お母さん以外にここでの我々の共通の知り合いといえばペットショップの奥さんくらいだな」
「ちょっと店に電話して明日でもサイン貰えるか聞いてみるか」
レオリオが電話をかけに行った後ろ姿を見ながら改めて目の前の書類を見つめ合ってると目が覚めたらしい猫が鳴きながらクラピカに近づいてきた
「おいで」
”にゃぉ”と鳴いている猫に手を差し出せば擦り寄ってくる
「私も君の家族になってもいいかな?」
猫は もちろん と言うようにクラピカの手をペロペロ舐める、そんなクラピカと猫の様子をレオリオは部屋の外から静かに見つめていた