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空間が歪み、もう地面に立てなくなった少年達。
ゼフィール「うぅ…」
ゼフィールは何度も血を吐き、抑えていた手は血まみれになっていた。
喀血は止まる気配がない。
ゼフィール「ゲホゲホゲホゲホゲホゲホ」
ステレスはすぐに気がつく。
先程飲み込んだナイフが気管を傷つけているのだ。
ステレスはゼフィールの背後に近づき、ウエストに腕を回す。
ジャック「…何をする気だ?!」
ステレス「ハイムリック法だ!ゼフィは呼吸が出来ていない!このままだと死んでしまう危険性がある…」
ステレスはハイムリック法をゼフィールにする。
ゼフィール「おぇっ」
ゼフィールは苦しそうに涙を流す。
ステレスは焦りながらもハイムリック法を続ける。
何度も何度も、ハイムリック法をためす。
ゼフィール「おえぇっ」
ゼフィールの小さな口から大きな刃物が出てきた。
その刃物はやはり先程飲み込んだ刃物と一致するものだった。
ゼフィール「はぁはぁはぁはぁ…死ぬとこだったよぉ…」
ステレスの賢明な判断によりゼフィールの命は救われた。
しかし、ゼフィールの喀血は止まらない。
ステレスはジャックにゼフィールを持ち上げるよう指示し、歪む空間をまた走り続ける。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
瞬きをしたその瞬間、地面についていたはずが落下していた。
ジャック「うっそおおおおおお?!?!」
ゼフィール「うぅ…やっと喀血治まったのに気持ち悪い…」
マゼンタ色の空、渦巻き状の透明感のある雲、そして、…木でできた大きな小鳥がこちらに向かって飛んできた。
その小鳥は3人の少年たちを大きな足で掴む。
ジャック「な、なんだコイツ!!おい離せ!!やだよオレゼフィとハグすんの!!」
ゼフィール「オレもこんな奴と抱きついたくない…」
小鳥には当然、脚が2本しかないので、片方にステレス、もう片方にジャックとゼフィールといったような形の運ばれ方になっている。
ゼフィールの顔色は時間が経つと同時に段々良くなっていった。
ステレスはそれを見て一安心する。
しかし、安心するのも束の間、小鳥は大きな巣に高所から落とす。
ジャック「うわああああ!!あの鳥チキンにしてやる!!!」
ゼフィール「こんなの、キュグの食蟻獣に顔を舐められた方がマシだ!!」
ステレス「あああああセレスごめん戻るの遅くなるかもしれないよおおおおお!!」
3人の少年は弱音を吐きながら物凄いスピードで落下する。
しかし大きな巣に落下したので、落下ダメージはほぼゼロだった。
???「このお茶飲んでも減らないんだけど!!マジでやっべぇな!!」
???「あのさぁ!ボク今忙しいの!分かる?!」
???「うーん、静かにして…眠いの…」
フラフラしながらステレスは立ち上がる。
ゼフィールとジャックも起き上がり、声がする方へ歩く。
そこには、大きな食卓にコーヒーやデザートが並んでいた、そう、お茶会のようなものだった。
???「ああああ!!まだ生存者いたっ…!!!オルガー、カフカちゃん、見て!!」
オルガー「ジェトム!何度言ったら分かるんだ!!」
カフカ「うぅん…夢、じゃないよね…??」
オルガー「…本当にいる……!!」
お互い目を丸くして驚く。
どうやら「不思議の国のアリス」での生存者はこの3人とステレス達とアリス以外誰一人もいないみたいだ。
オルガーと呼ばれるシルクハットを被った帽子屋の少年は空を見上げ、顎に手を当てて頷く。
オルガー「なるほど、ボクのつくった小鳥がここまで運んでくれたんだね。」
ジャックは恐らく眠りネズミの立ち位置であろう眠そうな顔の、カフカと呼ばれる少女をジロジロ見る。
ジェトム「あっ、疲れているよな?!ここ遠慮なく座って!!」
そう言うとジェトムと呼ばれる三月ウサギのような少年は3人分の椅子を用意する。
ステレス達はフラフラしながら椅子に座る。
カフカ「寝ていい?」
オルガー「無礼だろう、起きとけ。」
カフカ「ええ〜」
ジェトムは3人分のケーキやお茶を用意して食卓に並べた。
そしてジェトムはステレスの顔を見て質問する。
ジェトム「…やっぱ君達、『不思議の国のアリス』の世界の子達じゃないよね?」
ジェトムは訝しみながら3人の顔を見る。
オルガー「でもここは危険だ。その人達が小鳥に見つかって良かったよ。」
何か物を造りながらオルガーは答える。
隣で顔を伏せて寝ているカフカはいびきをかいていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
何故かここだけ空間が歪まず、普通にしていられる。
ステレスは考え込む。
ステレス(なんでここだけ普通なんだ…?不思議の国だからなのか………?)
ステレスは周りを見渡す。
さっきよりも歪みが増しており、万華鏡のようにキラキラしていた。
ステレスはあることに思いつく。
“「不思議の国のアリス」の「帽子屋」は、女王に死刑宣告を受けて以来、時間が言うことを聞かなくなり、ずっと6時のお茶会の時間のままになってしまった”
ステレス(そうだ、帽子屋がこのお茶会を開いた時に時間が言うことをきかなくなったからこそ永遠に6時のお茶会が開かれているんだ。つまり、このお茶会にボク達も参加しているから時間が進んでいる方の『不思議の国のアリス』の被害を受けないんだ。)
ゼフィールはブルーベリーパイをモグモグ食べていて、ジャックは自分の付けている仮面を付けたままテーブルに置いてあった赤いリボンで拭いていた。
ステレス「もしかして君達はずっとこの食卓から離れていないの?」
ステレスは恐る恐る質問する。
いかれたお茶会の面々は引き締まった顔のステレスを見る。
ジェトム「そう!俺らずっとここに隠れているんだ!」
カフカ「ずっと寝たままぁ」
オルガー「ここを出ると殺人鬼に追われるんだ。だから今ここで作戦を練りながら脱出方法を考えている。」
ステレスは黙り込み、また考え込む。
ステレス(この人達と協力した方が効率が良いのかもしれない。)
だらしない見た目の3人だが、ちゃんとした知識は持っているように見える。
少なくとも学生ではあるだろうとステレスは判断した。
そしてステレスはジャックとゼフィールを呼んで、お茶会の面々達には聞こえない小さな声で囁いた。
ステレス「作戦会議だゼフィ、ジャック。この人達どう思う?」
ゼフィール「“どう思う”?普通だけど。」
ステレス「そうじゃなくて…」
ジャック「カフカって子可愛いよな!」
ゼフィール「顔は整ってるけど可愛いとまではいかないかな。」
ステレス「失礼なことを言うんじゃないよゼフィ。とにかく、ボクはこの人達に協力した方が効率良いと思うんだよ。」
ジャック「確かに…。多分味方になってくれるよな!アリスちゃんも!」
ステレス「え、そっち…?」
ゼフィールは誰もいないところを見て1人で話し始めた。
ゼフィール「ルシファー。どう思う?」
ステレスの頭にはくっきりとした『?』が思い浮かぶ。
ステレス「なんでゼフィは誰もいないとこに話しかけているんだ…?」
ジャック「いつもそうだよ。オレもよく分かんねぇ!」
ステレスは心配して一人で話すゼフィールの会話が終わるのを黙って待った。
ステレス(…段々距離が離れていくのを感じる。何故か、“弟”として見ることができない。何があったんだゼフィ………。知りたい。)
ゼフィールはこちらを向く。
ゼフィール「信用できる相手だってよ。心は少し乱れているけど、純粋そのものって言ってたから大丈夫だって。」
ステレス「………」
ジャック「すっげぇなお前の言う“ルシファー”って奴!!心の中見えるんだ?!」
ゼフィール「お前の心はぐちゃぐちゃで汚いってよ」
ジャック「オレ“ルシファー”嫌い!」
ステレスは2人に最後の質問をする。
ステレス「じゃあ、協力するでいいね?」
ゼフィール「うん」
ジャック「それでいいっすよ!!」
ステレスは覚悟を決めてお茶会の面々の方を向く。
ステレス「ボク達は、キミ達の言うその作戦に協力する。」
オルガーとジェトムは驚いた顔をした。
カフカは目をつぶっていた。
驚きのあまりジェトムはコーヒーカップを割ってしまった。
オルガーはそれを見て物凄くムカついた顔をしたが、それを抑えるように、ステレスに話をする。
オルガー「…じゃあ、お言葉に甘えて。協力感謝する。」
オルガーは隣で寝ているカフカを起こして、腕を組んで淡々と話す。
オルガー「じゃあ今からその作戦について話す。異論は認めないからな。だからと言って後悔はさせない。」
ジェトム「2年2組の転校生か!!」
カフカ「33人かぁ〜。悪くないねぇ…。」
オルガー「真面目になるんだ2人共!!ボク達は早く甘桜川学校(=スイートスクール)に戻って提出物出さなきゃだろ!!」
ジェトム「あああああああ!!!!(泣)そうじゃん!!!忘れてた!!!」
カフカ「あたし後1ページだけ残ってたんだった…あわわ………」
オルガー「はぁ…」
作戦がいつまでも実行されなかったのは彼らが怠けていたからなのかもしれない。
オルガーの帽子にある時計が午後6時1分をさそうとしていた。
ふふふ、ウサギに逆襲するカメの物語、面白いと思わないかい?