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「……あんた、わざとでしょ。あんなところでバラすなんて」
「バラしてないじゃん。むしろ、守ってあげたでしょ? 『ボロアパートの隣人』って言うより、『芸人のファン』の方が、まだお姉さんのキャラ的にマシかと思ってさ」
「どっちも最悪。……私のこと、明日から社内でなんて言われるか」
「いいじゃん、別に。完璧すぎて近寄りがたい上司より、変な趣味がある人間の方が、後輩たちも相談しやすいって。お姉さん、自分で自分を縛りすぎなんだよ」
光の声は、夜の空気に溶けるように穏やかだった。
私は、今まで張り詰めていた肩の力が、ふっと抜けていくのを感じた。
「……日比谷くんさ。あんな風に、いつも誰かのこと見てるの?」
「芸人だからね。観察して、ツッコんで、それを笑いに変えるのが仕事だから。……でも、お姉さんを見てるのは、仕事っていうより、趣味に近いかも」
「……趣味?」
「ボロボロの鎧着て、高いヒール履いて。今にも折れそうなのに、絶対折れない。……見てて飽きないんだよね、そういう不器用な生き方」