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「さくまのことすきなの」
「………んにゃ???」
涼太の言葉が瞬時に理解できなくて固まってしまう。
俺がまごついていると、また涼太の目から涙が溢れ落ちた。
佐久間の優しさに嬉しい気持ちと切ない気持ちが込み上げて、思わず口から出てしまった。
伝えるつもりはなかった。ずっと秘密にしておこうと思っていた。時間が経って、自分の中にある気持ちが消えるまで、大切にしまっておこうと思っていたのに。
揺れる瞳でじっと俺の目を見返してくれる佐久間を見て、瞬間的に後悔と罪悪感に押し潰されそうになった。
困らせたくない。
俺なんかで汚したくない。
撤回するから。
お願い。
嫌いにならないで。
嘘だよって、違うよって言わないといけないのに、声は出なくて、涙ばかりが溢れた。
こわい。今から俺、振られる。
止まらない。止まって、、お願い。
ぼやける視界の中で、佐久間の顔が近付いていた。
…え?? 涼太は今なんて言ったの??え??すき?隙?透き?好き?
……………好き!? いや、まって!!??そんなことある!?いやいやいやいやいや!!!!
冷静になれ佐久間大介。
涼太が俺のこと好きでいてくれてたなんて夢にも思っていなくて、現実味がない。
もう一度涼太に確かめたらいいの?俺もずっと好きだったよって答えたらいいの?え?それって答えてもいいの?俺は今どんな行動を取ったら正解なの?あ“ぁぁぁ“〜っ!!!わっかんねぇ!!!!
俺は次の言葉も紡げずに、ただただ涼太を見つめることしかできない。
そうしている間にも、涼太の目からは壊れてしまったおもちゃのように、止むことなく涙があふれて落ちていく。
水の溜まったレンズは、絞られた照明に反射してキラキラと輝いていた。宝石みたい。
泣いてても、すごくきれい。
でも、泣かないで。俺なんかのせいで流していいものじゃない。
もうこぼして欲しくなかった。
気の利いたことなんて言えない。 詩は浮かんでも、好きな人1人さえ泣き止ませられる言葉も思い浮かばない。バカだな、俺。
それでも、涼太を守りたい。涼太の涙が止まるなら、なんだってするから。だから、、、
俺にできること………
雫が伝うその頬に口付けて、飲み干した。
涼太の息遣いが止まる音がして、胸が苦しくなった。
死なないで欲しくて、俺の息を涼太の唇に分けてあげる。
涼太の頬に添えた俺の手に、冷たい感覚がしなくなったことに安心して、一歩下がると、
目の前の涼太は、顔を真っ赤に染めて目を瞬かせていた。
…あ、れ……、いま、おれ、、、なにした…………?
本能的に動いた体の記憶を思い出して、頭が真っ白になった。
どうしよう。やらかした。
俺、涼太に酷いことしちゃった。どうしよう。どうしよう。
謝らなきゃと思ったその時、涼太が勢いよく立ち上がり、座っていた椅子がガタンと倒れた。
衝撃の余韻を残してゆらゆらと揺れるそれに気を取られていると、涼太は走ってどこかに行ってしまった。
「…はぁッ、っ、は、、ッなんで、、なんでっ……?!」
ーーなんで俺、佐久間にキスされたの!?
意味を尋ねることすら怖くて、今すぐその場から逃げ出したくて、楽屋まで全速力で 走った。
急いで着替えて、荷物をまとめ、どうか佐久間と鉢合わせませんようにと願いながら、メンバーに挨拶をして部屋を出た。
楽屋を出る時、不思議そうな顔をして「どうした?」と聞いてくれる翔太に、俺は愛想笑いをすることしかできなかった。