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「私は人間を憎んでいる。」
ある日突然、キャラは僕にそう言った。
「な……なんで?」
「深くは言えないけど、私にとってニンゲンは本当に憎き存在なんだ。イビト山に登ったのだってそれが理由さ。」
「そうなんだ…」
理解出来なかった。
ニンゲンであるキャラがニンゲンを憎んでいる?僕はモンスターのみんなが大好きだから、同種族を嫌うキャラがニンゲンを拒絶する理由が分からなかった。
戸惑っている僕にキャラは続けた。
「そこで、モンスターであるアズにお願いしたいことがある。」
その次にキャラが発した言葉は本当に衝撃的なものだった。
「私と一緒に、ニンゲンを抹殺してくれないか」
「抹…殺?」
「あぁ。モンスターがニンゲンの魂を7つ取り込めば膨大な力が手に入る。それは知っているな?」
「知ってるよ。それで手に入れた力でバリアを破壊できるんだよね…?」
僕達が話している”バリア”はそう。
ニンゲンがモンスターを地底に閉じ込める為に作ったもの。このバリアを破壊するにはニンゲン7人の魂と、モンスター1人の魂が必要で、それを取り込むことで膨大な力を得て、破壊することが出来る。
でもバリアを抜けるだけなら、モンスターとニンゲンの魂が1つずつあれば足りる。
キャラいわく、それを利用して僕とキャラの2人で地上に出て、憎きニンゲンを抹殺する作戦らしい。
「そんなの…」
「そんなの僕にはできないよ!!」
「キャラが他のニンゲンにどれほどのことをされたのか僕には分からない。本当に酷いことをされたのかもしれない。」
「だけど僕はニンゲンに何もされてないし…」
僕は本当にニンゲンだなんて殺したくない。だから精一杯拒絶した。でも…
「…そうか。」
「今言ったことは忘れてくれアズ。」
「私1人で何とかする。」
「…!!キャラ!」
「分かったよ、僕もやる…から」
キャラだけにそんなことさせるなんて僕にはもっとできなかった。
「ニンゲンは殺したくないんじゃなかったのか?」
「それはそうだけど…キャラ1人にそんなことさせるわけにいかない。」
「良かった…アズの今の言葉は信じていいんだな?」
「途中で裏切ったりしないよな?」
「…っ…うん。ちゃんとやるよ…」
この時ちゃんと止めていれば。
僕が断っていれば。
キャラと僕は、
もっと幸せに暮らせたかもしれないのに。