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その日から、こさめはすちの病室へ行くようになった。
最初は少しだけ。
母親のお見舞いのついでに顔を出して、
くだらない話をして帰る。
でも気づけば、
病室にいる時間の方が長くなっていた。
🦈「見てすち! 今日コンビニでプリン買ってきた!」
🍵「また甘いの食べてる」
🦈「人生には糖分が必要なんですぅ〜」
🍵「誰の受け売り?」
🦈「今考えた!」
ふは、とすちが笑う。
その笑顔を見るたび、
こさめは嬉しくなった。
最初に会った時より、
すちはよく笑うようになった気がする。
でもその分だけ、
苦しそうな瞬間も増えていた。
話している途中で咳き込む。
少し歩いただけで息が乱れる。
顔色が急に真っ白になる。
そして時々、
ひどく遠い目をする。
まるで自分の終わりを、
静かに待っているみたいに。
それが、こさめは嫌だった。
すごく。
🦈「……ねぇ、すち」
夕方。
窓が茜色に染まる病室で、
こさめはベッドに突っ伏したまま呟いた。
🍵「なに?」
🦈「すちって、あとどれくらいなの」
ぴく、と空気が揺れる。
すちは少し黙って、
視線を窓の外へ向けた。
🍵「……聞くんだ」
🦈「聞きたい」
即答だった。
🦈「すちが嫌なら言わなくてもいいけど‥」
🦈「知らぬ間にすちがいなくなったら‥嫌だから」
逃げたくなかった。
すちは困ったように笑う。
🍵「なんか‥優しいなぁ」
🦈「誤魔化さないで」
その言葉に、
すちはほんの少し目を伏せた。
🍵「一年、もつかなって感じ」
世界が止まった気がした。
こさめは瞬きもできない。
たった一年。
そんなの、
短すぎる。
🦈「……うそ」
🍵「ほんと」
🦈「やだ」
思わず声が漏れる。
子どもみたいに。
でも止められなかった。
🦈「やだ、そんなん……」
すちは静かに笑った。
🍵「俺はわりと受け入れてるよ」
🦈「なんで!?」
こさめは勢いよく顔を上げた。
🦈「なんでそんな普通なの!?」
声が震える。
怒っているみたいだった。
でも本当は違う。
怖いのだ。
この人がいなくなる未来が。
🦈「もっと嫌がってよ……」
🦈「生きたいって言ってよ……」
その瞬間。
すちは目を見開いた。
そして少しだけ、
泣きそうな顔で笑う。
🍵「……ずるいなぁ、こさめちゃん」
🦈「え」
🍵「そんなこと言われたら」
すちは小さく息を吐いた。
細い指が、
シーツをぎゅっと握る。
🍵「生きたくなるじゃん」
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