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夕方
窓の外では静かな雨が降っていた。
規則的な機械音だけが、
薄暗い空間に小さく響いている。
すちはもう眠っていた。
薬が効いたのか、
今日はいつもより呼吸が深い。
でも時々苦しそうに眉を寄せる。
こさめはベッド横の椅子に座ったまま、
その寝顔をじっと見つめていた。
昼間に言われた言葉が、
頭から離れない。
🍵『だから寿命渡すとか、絶対やめてね』
すちは笑っていた。
いつもの優しい顔で。
でも目だけは真剣だった。
🍵『こさめちゃんが忘れるの、俺いやだから』
その時は、
「しないし〜!」って笑い返した。
けど。
🦈「……でも」
こさめは小さく呟く。
🦈「死んじゃう方がやだもん」
ポケットから、
小さな譲渡端末を取り出す。
合法の簡易デバイス。
ありふれたもの。
でも本来は、
こんなふうに隠れて使うものじゃない。
こさめは端末を握りしめた。
怖い。
この端末は家族や恋人の方が寿命を渡したりするためにある
もう、亡くなる方とかに一日生きてほしいとか
そういう気持ちで使われる
副作用の話は知ってる。
寿命を渡した分だけ、
相手との記憶が薄れていく。
でも一日くらいなら。
たった一日なら、
きっと大丈夫。
そう自分に言い聞かせて、
こさめはそっとすちの手に触れた。
冷たい。
細い指先。
壊れそうな体温。
端末が淡く光る。
――寿命譲渡を開始しますか。
こさめは静かに認証した。
瞬間。
胸の奥から、
何かが抜け落ちる感覚がした。
ぞわ、と背筋が震える。
怖くて、
泣きそうになる。
でも。
すちの呼吸が、
少しだけ穏やかになった。
苦しそうだった顔から、
ほんの少し力が抜ける。
それを見た瞬間、
三ノ和
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こさめの目が熱くなる。
🦈「……えへへ」
小さく笑った。
🦈「これで明日もちょっと生きれるね」
眠ったままのすちは、
当然返事なんてしない。
でもこさめは、
それでよかった。
忘れたっていい。
少しくらいなら。
それより、
明日もこの人が笑ってくれる方が大事だった。