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その無防備な背中を舐めるように見つめる視線があった。
営業部のエース、木島竜也だ。
俺には、以前からどうしても納得のいかないことがあった。
あの白石さんが、システム部の春川ごときと付き合っているという事実だ。
透き通るような肌に、守ってやりたくなる華奢な身体。顔面偏差値は社内トップクラス。俺の隣を歩く「アクセサリー」として、これ以上の女はいない。
それなのに、相手があの陰キャメガネだと?
(百歩譲って、王子谷ならまだ分かる。あいつは顔もいいし、俺のライバルとして認めてやらなくもない)
だが、春川はない。絶対にない。
あんなモブキャラに、白石さんは不釣り合いだ。ダイヤをドブに捨てているようなものだ。
(……あーあ。白石さんも可哀想に。本当の『男』を知らないんだな)
想像するだけで反吐が出る。
どうせ休日は美少女フィギュアに話しかけてるような奴だ。夜の方だって、白石さんを満足させられるわけがない。
俺なら、もっと彼女を開発して、女としての喜びを教えてやれるのに。
俺は、周囲を見渡した。春川の姿はない。王子谷も、別の席で盛り上がっている。
(……チャンスじゃん)
俺は口の端を吊り上げた。
これは「救済」だ。冴えないオタク彼氏との退屈な「おままごと」に付き合わされている彼女を、俺みたいなハイスペックな男が救い出してやる絶好の機会だ。
俺は前髪をさらっとかき上げ、香水の匂いを漂わせながら、最も魅力的に見える角度で彼女に近づいた。
そして、耳元で囁いた。
「白石さん、大丈夫? 飲みすぎだって! ほら、ちょっと外の空気吸いに行こっか〜」
さあ、行こう。
キモオタくんには勿体無いその身体、俺がたっぷりと可愛がってあげるからさ。
***
……鼻を突く、安っぽい香水の匂い。
誰かの、粘着質な声が近くで聞こえた気がした。
けれど、体に力が入らない。私の意識はそのまま、深い闇の中へと沈んでいった。