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彼女と目が合った。
あの夜――ホテルで衝動のままに抱いた時とは違う。
濡れた瞳が、いまはただ恥ずかしそうに揺れている。
「……るか、名前、呼んで」
耳元で囁くと、肩がびくりと震えた。
躊躇いながら開いた唇から、掠れた声がこぼれる。
「もとき、っ……ん……」
その一言だけで、胸の奥にじわりと熱が広がった。
「……やっと、呼んでくれた」
息を混ぜて囁き、首筋に唇を這わせる。
柔らかい肌に噛みつき、赤い跡を刻んだ。
顔を上げると、彼女は真っ赤になった頬を隠すように視線を落とす。
その仕草が可愛すぎて、理性なんて簡単に吹き飛んだ。
キスを重ねながら、震える指先でブラウスのボタンを外していく。
白い肌にひやりとした空気が触れた瞬間、るかの肩が小さく揺れた。
「……やっ、だめ、恥ずかしいから……」
そう言いながら、押し返す力は弱い。
潤んだ瞳が、不安と期待をごちゃまぜにして俺を捉える。
「だめじゃない。るかがいいの。……るかじゃなきゃ、俺、埋まんない」
触れ合う距離で囁くと、吐息がふわりと絡んだ。
髪を耳にかけ、もう一度深くキスを落とす。
「脱がすね……?」
小さく告げて、ブラウスとキャミソールをそっと脱がせる。
露わになった白い肌に、どうしようもない独占欲が込み上がる。
「……綺麗」
思わず漏れた一言に、るかが恥ずかしそうに視線を伏せた。
その仕草すら愛しくて、胸がきゅっと鳴る。
ブラ越しに胸を掴み、胸元に舌を這わせる。
跡をつけるたび、彼女の体がびくんと震える。
「んっ、もときっ……あっ……」
名前を呼ばれるたび、頭の中が真っ白になる。
自分だけを求めるその声に、心の奥が大きく揺れた。
「俺、ほんとは……もっと、るかの全部、めちゃくちゃにしたかった。けど――」
一度唇を離し、額を寄せて囁く。
「今はただ、るかが欲しい。……るかでしか埋まらないから」
もう、止まれない。
ブラのホックを外し、肌に肌を重ねる。
触れ合う温度だけで、自分が壊れずに済んでいる気がした。
「……もっと、呼んで」
耳元で囁くと、るかは震える声で俺の名前を繰り返す。
「もとき……もとき……っ」
その甘さに、頭のブレーキが一つずつ外れていく。
露わになった胸に、何度も唇を這わせた。
乳首を吸って、舐めて、指で転がすように弄るたび、彼女の声が震える。
「んっ……あっ、もとき……っ」
「……かわい。もっと聞かせて?」
顔を覗き込むと、涙を滲ませた瞳がこちらを見上げる。
その視線に胸が締め付けられ、思わず唇を重ねた。
スカートの裾を掴み、タイツごとゆっくりと下ろす。
露わになる太ももに、思わず息が詰まる。
「……恥ずかしい、から……」
震える声で抗うるかの上から、俺の手は下着ごと撫でた。
布越しでも伝わる熱に、喉が鳴る。
「……ほら、こんなに。ぐちゃぐちゃじゃん。かわいすぎ」
なぞるたび、腰が跳ねる。
「もとき……やっ……あっ……」
「……るか、もっと……全部、見せて」
下着の端に指をかけ、揺れる視線を受け止める。
拒まない彼女にそっと下着を脱がせ、濡れた熱を指先でなぞる。
「……やだ……もとき……っ、やぁ……」
涙まじりの声。震える腰。
もう戻れない場所に来てしまっている。
「……なあ、るか。その顔……俺にしか見せんなよ」
囁きながら、ゆっくりと中へ滑り込ませる。
温かくて、柔らかくて、指を包み込む締め付けに息が乱れる。
「……ここ、好きなんだろ?」
奥へは行かず、いちばん弱い場所だけを深く撫でる。
「ひぁっ……んっ……あぁ……っ!」
震える太もも。跳ねる腰。
愛しさと欲の境目が、完全に溶けた。
「……かわい。気持ちいい?」
「やっ……っ、もとき……きもちい、から……っ」
泣きながら名前を呼ぶるかの腕が、俺の首にぎゅっと絡む。
「もとき……はなれないで……っ」
胸が焼けつく。
その涙がひと粒、頬を伝った瞬間――
「……るか、その顔……ほんとやば……」
喉が震えて声が掠れた。
「そんな顔されたら……止まれるわけ、ないだろ……」
涙を舐め取りながら指を奥へ押し込む。
「もっと……俺にだけ見せて。
ほかの誰にも、こんな顔、見せんな」
「もとき……っ……もとき……っ」
掠れた声が耳に落ちるたび、心のストッパーが壊れていく。
「……ほら、イっていいよ」
弱いところだけを、容赦なく擦り上げる。
「ひあぁっ……やっ……イく……っ、もとき……っ……イくっ……!」
「んあっ……あっ……ああぁ……!」
細い体が反り返り、太ももが震え、絶頂の声が弾けた。
「……はぁ、っ……もとき……っ」
真っ赤な頬、涙で濡れた瞳。
その全部が、息苦しいほど愛しい。
涙を舐め取りながら、ゆっくり指を抜いた――
息を整える彼女を見下ろしながら、
自分のパーカーの裾をつかみ、ゆっくりと頭の上まで引き上げた。
落ちた布の音が、やけに大きく響く。
その瞬間、るかの瞳が、
息を呑んだようにぱちりと見開かれた。
「……え……それ……」
左胸に刻まれた、燃える太陽。
右腰に潜む、静かな月。
どちらも、俺の“空っぽだった人生”に刻んだ印。
若井と涼ちゃん、圭史くらいしか知らない。
女に見せたことなんて、一度もない。
見せたくなかったわけじゃない。
――誰にも触れられたくなかっただけだ。
俺の痛みも、孤独も、虚無も、
全部、この肌に焼き付けてきたから。
「……抱いた女には、初めて見せる」
低く告げた声に、
るかの瞳がかすかに揺れ、涙がこぼれ落ちそうに震える。
そっと伸ばされた指先が、
俺の胸のタトゥーへ、ためらいがちに触れた。
ぴくりと跳ねたのは、彼女じゃない。
触れられた俺のほうだ。
「……すごい……」
かすれた声で落とされたその一言が、
胸の奥に、静かに、じんわりと染み込んでいく。
誰にも触れさせなかった場所を――
彼女だけは、怖がらずに、まっすぐ見てくれる。
「……るか」
名前を呼んだだけで喉が熱い。
頬にキスを落とす。触れただけで、息が溶ける。
そのまま、唇を重ねたまま囁く。
「ちゃんと……ベッドで、抱かせて?」
涙をふくんだ瞳が、静かに、こくりと頷く。
その一瞬で、胸の奥のどこかが、ぱん、と音を立てて決壊した。
「……っ」
思わず抱き上げる。
腕の中で彼女の体が小さく震え、安心するみたいに胸へ頬を寄せる。
その重みも温度も、全部が愛しい。
(……ああもう。だめだ。
一度ここまで来たら、離せないに決まってるだろ)
どくどくとうるさい心臓を抱えたまま、
俺はそのまま寝室へ向かった。
寝室のベッドに彼女をそっと降ろす。
シーツに沈んだ細い体が、小さく震えていた。
その上に、ゆっくりと馬乗りになる。
絡め取った彼女の手は、ほんの少し汗ばんでいて、逃げる気配なんてどこにもない。
指を絡ませたまま、そっと唇を重ねる。
触れただけで喉が熱くなる。
キスの合間に、震える声で囁いた。
「……るか、全部ちょうだい」
涙を含んだ瞳で――
彼女は、小さく、こくりと頷いた。
その一瞬で、胸の奥の何かが音を立てて溶けた。
ゆっくりと身を起こし、自分の下を脱ぐ。
脚の間に位置を合わせ、そっとあてがう。
触れた瞬間、るかの呼吸がふっと乱れた。
「……っ、もとき……っ……んあぁ……っ」
その声だけで、理性が痺れた。
「……はぁ……るか……」
引き寄せて、ぎゅっと抱きしめる。
そのまま、ゆっくりと奥まで沈んでいく。
温かくて、柔らかくて、息が止まりそうなほど気持ちいい。
「……っ、く……るか……」
背中に彼女の腕がぎゅっと回される。
「もとき……ゴムはっ……」
震えた声でそれを言おうとする彼女に、額を合わせて囁く。
「……責任取る。
だから……全部ちょうだい、るか」
涙に揺れた瞳が、こくり、と頷く。
その仕草が、胸の奥を痛いほど締めつけた。
この瞬間だけでもう満たされてしまいそうで――
けれど同時に、どうしようもなく欲しくなる。
ゆっくり腰を打ちつける。
「……っ、るか……」
名前を呼ぶ声が震える。
彼女じゃなきゃダメだ。
他の誰でも意味がない。
そんな想いばかりが胸を占める。
その時――
「……すき……もとき……」
動きが、ぴたりと止まった。
胸の奥が、焼け付くみたいに痛い。
「……いま……なんて……?」
自分の声が、自分のものじゃない。
彼女は涙に濡れた瞳のまま俺を見て、震える唇で繰り返す。
「……すき、だよ……っ」
心臓が跳ねた。
息が吸えない。
――ああ。
もうだめだ。
この一言で、全部壊れる。
空っぽだった場所が、言葉と体温で焼き切られていく。
ポタ、と涙が落ちる。
自分の涙だと気づいた瞬間、喉が詰まった。
「……るか……おれ……」
言葉が繋がらない。
額を合わせると、彼女の涙の熱が伝わってきて、息が震えて涙がぽたぽた落ちる。
「……おれも……っ、すき。
……すきだ……るか……」
もう離せない。
手放したくない。
“好き”と言われる日が来るなんて思っていなかった。
欲しかった。
ずっと欲しかったのに、諦めていた。
胸が苦しいほど幸せで――
ぐちゃぐちゃだった。
壊れてもいい。
彼女を壊してしまってもいい。
どうなってもいい。
全部、欲しい。
「……ごめん」
掠れた声で零れた。
「……もう優しくできない……」
額を合わせたまま、腰を強く突き上げる。
「――っ、あ……!」
彼女の体がビクリと跳ねる。
もう緩められない。
このまま二人で壊れてしまえばいい。
「……っ、もとき……! あっ……!」
「……るか……っ!」
互いの名前が、熱に潰されて濁る。
逃さないように、刻みつけるみたいに。
肌がぶつかる音と、濡れた水音だけが部屋に響き続ける。
「……ぁっ……ん……はぁっ……!」
「……くっ……はぁ……!」
首筋に噛みつけば、背中に爪が立つ。
その痛みすら、生きている証のようで――
彼女が俺を確かめてくれているようで、愛おしかった。
熱が、臨界に達する。
奥で、もう弾けそうだ。
「……るかっ、イきそ……全部、受け止めて……!」
喉の奥が裂けそうな声で言うと、
涙でぐしゃぐしゃの顔を上げたるかが、強く抱きついてきた。
「もときっ、すき……!
全部、ちょうだい……!」
その言葉が、最後の引き金だった。
「――あぁぁぁっ……!」
「――っ、んぁぁっ……!」
叫びが重なる。
奥で熱いものが弾け、
彼女の体も俺を締めつけながら大きく痙攣する。
どくどくと脈打つ場所だけが、
今、この瞬間だけは――
確かに、二人がひとつだと告げていた。