「グラン! 久しぶりだね! 元気にしてたかい?」
嬉しそうに突進して来たグランに向かってバサラは笑顔を浮かべた。
「そりゃもちろんですよ!!!! なんたって自分は御師様の一番弟子ですから!!!!」
一番弟子。
その言葉を聞いた瞬間、バサラとグランの背後から殺気が溢れた。
「誰が、一番弟子? 」
ジータの怒りに火をつけたのはバサラの一番弟子という言葉。ジータは自分がバサラの一番弟子であると言う自負を持っており、それをグランが名乗ったことに怒りを向けていた。
「《《俺》》が一番弟子だ、ジータ」
グランは彼女が怒りを向けている事実を知っておきながら再び同じ言葉を口にした。
「この前の試合で思い知らなかったらしいね、グラン」
「あだぼうよ! 幾ら強かろうとも俺は四護聖の中じゃ、一番早く弟子入りしてる! なら、一番弟子を名乗る通りはあるわ! 」
「よし、死合おう、今からすぐに、その首叩き斬って」
一触即発の中、バサラは彼らの間に割って入ると口を開く。
「ストップストップストップ! 落ち着いて! 僕にとってみんなが一番弟子だよ! ね? だから、争うのはやめよう! ね?」
ひりついた空気は一瞬にして緩み、ジータとグランは先ほどとは考えられない様なほどの満遍の笑顔を浮かべ、揃って同じ言葉を発した。
「「御師様がそう言うのであれば!」」
***
ジータの庭園でバサラは二人の四護聖と会話に花を咲かした。
10年間あったこと、自身が挙げた武勲や、成果。募る話を出来る限り行い、和やかな時間が流れていく。
そんな中、バサラの服装はユカタから変わっていた。
「そうそう! 御師様の新しい服と武具を買っているのでそちらを持って来ますね!」
すると、ジータはバサラを再び引き摺り、無理矢理服に袖を通させると今まで以上に動きやすい格好となっており、彼女はそれを見て嬉しそうにしていた。
「不束者の私が選んだものですが、やはり、モデルがいいと着こなしもスマートでよく見えますね」
「あ、ありがとう、ジータ。でも、こんないい服、本当に貰っても? お金は多少なりはあるからそれで支払うことはできるんだが」
「いえいえ、そちらは私からの御師様の新たな門出の記念としてお受け取りください」
自身の体には勿体無いものだと感じるバサラであったがジータがあまりにも嬉しそうにするため断るに断れず、素直にその服を頂戴することにした。
そして、今、現在、様々な会話をする中で、グランがとある提案をする。
「御師様、自分久々に兜を一刀両断するやつ見たいです!」
「唐突だねー、グランはいつもそうだからいいけどさー」
「それでは準備いたしますね」
「え?」
バサラは侮っていた。
ジータの、彼女のフットワークの軽さに。
そして、バサラは気がつくとグランとジータに連れてかれ、防具屋と鍛冶屋が合わさった店の前にいた。
「メタリカさーん! 兜、破りたいから買いに来ましたー!」
鍛冶屋の前でジータが呼びかけるとそこから褐色の少女が姿を現した。
ツナギの様な服に身を包み、肌色を見せている部分が無い褐色の少女は不機嫌そうにジータを見ると声を荒げた。
「うちは何でも屋じゃねえっての! 後、何度言わすんだ! お前の剣を何年も見てるからって何でもかんでも打てると思うなよ! それと壊すためにうちの品を頼むな! 使うために買え! 馬鹿タレが!」
赤い髪のポニーテールを揺らして現れたメタリカと呼ばれる少女にバサラは申し訳なさそうに頭を下げた。
「あははは、どうもすみません、うちの弟子が」
覇気のないバサラに対して、メタリカは怪しそうに睨みつける。
「なんだあ? おっさん、うちに買い物かい? 弟子? ん? どう言うこった?」
「あれ? 伝えてませんでしたっけ。この前、私たちの御師様をこの都市に呼ぶって」
「いや、まぁ、なんだ。聞いてたが、このおっさんが? 過去、30年の間で唯一無二且つ最強とされる四護聖の、師匠???? こいつが?」
邂逅、一分。
バサラの心はズタズタにされた。
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