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「た、助けて…?いや、ユキはもう死んだんじゃ…」

『…確かに私は死んだよ。けど、“肉体が生きている”。お兄ちゃんならこの意味がわかるよね?』

ユキにいきなり告げられた言葉。その真意は『あの時』、【異能力(スキル)】とは違う、ある【特異能力(イレギュラー)】の1つを習得した僕じゃないと分からないものだった。

「………!それって!?」

『そう言うこと。』

簡単に言い表すと、ユキはまだ生きられる可能性がある、そういうことだった。その事に安堵感を覚えそうになった瞬間、目の前にいる彼女が口を開く。

『それで、お兄ちゃん。私を…』

その瞬間、僕はユキに近づき、いつぶりかは定かではないが、久しぶりに頭を撫でながら、彼女が言おうとした言葉を彼女よりも先に言う。

「——助ける、絶対。兄として、当たり前の事をする。それだけだよ。だから、消える前に教えて?」

僕の質問に、ユキは「うんっ!」と頷き、すぐさま真面目な顔になって情報を開示してくれた。

『まず、前提で私の身体は⦅聖死教会⦆が持っている…これは知ってるよね?』

ユキが疑問形で言ってきたことに頷く。すると、彼女は続けて話す。

『私の身体の場所は⦅聖死教会本部⦆…分かるのは場所だけで、地上か地下か分からない。』

「うん、そこまでは分かってる。…他に、情報ある?」

僕が問うと、ユキは少し目線を左上に逸らしながら『そ、それが〜…』と、しどろもどろな返事をしてきた。

「無いのか…」

『………うん。』

ユキは気まずそうに肯定する。だが、すぐにまた先刻のどこで習ったのやら分からない真面目な顔に戻って話を続ける。

『それはともかく…お兄ちゃん、私さ、託したい物があるって言ったよね?』

「…スキルのこと?」

『うん…それと、もう一つ。』

ユキはそう言うと手のひらに、寝ている可愛い小さな人を乗せてこちらに渡してきた。僕は慌てて彼女と同じような手の器をつくって受け取る。

「この子って…」

『そ、私の契約精霊の“楓華”だよ。お兄ちゃんの役に立つかな、って』

ユキはそう言いつつ僕の手の器に乗る楓華を愛おしそうに人差し指で撫でる。撫で続けながらユキは喋り続ける。

『…この子とはもう話はついてるから、お兄ちゃんのこと手伝ってくれる…』

と、途端ユキは楓華を撫でる手を止めて、一歩後ろに下がった。

「……ユキ」

『…….お兄ちゃん、もうそろそろ時間っぽいや』

そう優しい声をかけてくれるユキの体を見ると、彼女の体越しに遺標が見える。もう、そう長くはいられない事が目に見えてわかる。

『…“ころねお姉ちゃん”お兄ちゃんをお願いします』

「…!うん、わがった」

ころねが返事をしたと同時にユキは笑顔のまま光の粒になりいなくなった。


————お兄ちゃん、大好きだよ


「——僕も愛してるよ、恋雪」

返事はもう無い。でも、もう覚悟は決まった。僕はころねの手を握っている手を一層強く握って墓地を出た。



————やっと、ここから始まる。始めることができる。

さあ、始めよう。止まっていた歯車を、動かすために

びしょ濡れ子犬を助けたら美少女でした。

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