————ユキの墓参りに行ってもう一週間が経った。
あの件があって何が変わったか、と言われたら別に何も変わらない。平穏で当たり前の日常が過ぎているだけだ。もちろん、ユキを助けるために『聖死教会本部』の調査は随時している。
あ、でも一応変わったことと言えば…
「——お兄様ぁ、おはようございましゅ…」
「ん、おはよ〜」
……あの日、彼女に、ユキに託された風精霊の楓華が我が家にいる事だろうか。ただ、楓華は元々ユキがいる時にいつもいたのでどちらかというと「ようこそ」よりも「おかえり」の方が合っているだろう。
と、こんなことを考える前に全員分の朝食を作らないと
……朝食が終わって今はリビングのソファでくつろいでいる。でもこう、だらだらするのも退屈なだけなので何処か行こうかと二人に提案しようとしたその時、
「……二人ともどこか行かn((」
ピピピッピィィィィィン⤴︎⤴︎ポォォォォォォォォォン
何処かで聞いたインターホンが鳴った…我が家のインターホンうるさ過ぎるな、あとで修理しとこ。
すぐに玄関の鍵を解錠する。それと同時に洪水のように二人が入り込んでくる。いや、どんだけ急いだらそんな勢いで入って来るの?
まあ。とりあえず、ひらりとかわす。
「うわっ!?」
「おっとと、危ない」
ハルは見事に急ぎすぎで玄関の僅かにある段差に引っかかってこけ、一方でユズは引っ掛かりはしたものの、こけずにハルの上を通り普通に入ってきた。
これが運動部(ハル)と文化部(ユズ)の違いだろうか。と勝手に納得しているといつの間にか横にいた楓華が口を開く。
「あ、誰かと思ったら癒月お姉ちゃんと弟子ですか」
「あ、久しぶり!ふうちゃん…ふうちゃんっ!?」
「あ〜どこかで聞いた声だと思ったら…って師匠!?」
約2年、居なかった人がいきなり我が家に戻ってきていたのだ。当然の反応である。
二人のその後というと、そりゃ凄かった。家に入って楓華と喋ってるうちに二人とも号泣し出して、楓華ところねと3人で宥めて落ち着くのに30分かかった。
「すまん、落ち着いた。」
「私も…」
二人はそう言いながらリビングのソファに腰掛ける。二人の座っているソファの反対側にある同じ種類のソファに僕らも腰をかける。(因みにころねは朝食後テレビを見ながら寝てしまったらしい。)
「……で?今日はどうしたの?」
「お、そうだった。この動画見たか?」
ハルはそう言うと、スマホでニュースの切り抜き動画を見せてきた。
その動画の内容は要約するとこうだ。
———今現在の『聖死協会』の勢力はもう見てみぬふりが出来ないほど強大になってしまった。だから少しでもその勢力を削ぐために能力者による戦闘団隊の結成を許可するという法令が施行されるというニュースだった。
「……なるほどね。それで?これを僕に教えて何がしたいの?」
「な、何って…わんの役に立つと思って…」
「…生憎だけど、僕に能力者の知り合いは多くない。僕には関係ない話だね。」
僕がそう言うと、二人は顔を見合ったのち再びこちらに振り向き、ほぼ同時に口を開く。
「「じゃあ俺達と/私達と結成すればいいじゃん」」
「…はえ?」
……この二人は何言ってるんだ?死ぬかもしれない事なのにここまでやってくれるんだ…?
そんなことを考えていると二人が呆れたようなかおで口を開く。
「わん…お前なぁ…」
「もらるくん…はぁ…」
「…?」
「「——『友達』の助けるのが当然だろ?/でしょ?」」
…どうやら、心の声がダダ漏れだったらしい。
二人はこうなるともう誰も止められないことを僕は知っている。すなわち、僕の答えはもう二つにして一つだった。
「…参った。参りました。僕の負けだ。」
「…!!じゃあ!」
「でも、二人とも戦闘経験ある?」
「「ギクッΣ( ˙꒳˙ ;)」」
「「……ねぇ」」
ふと聴こえたその声は、今会話に参加している3人の誰の声でもなく、声のした方向に会話をしていた3人全員が視線を送る。
そこには不服そうな顔をしているころねと楓華がいた。
「「私/こぉねは?」」
「「「…え?」」」
「えっと…?ころとふうちゃんも入りたいの?」
「私は友達ですけど…それ以前に契約主ですし、主は助けないとですし…」
「こぉねは…助けてもらった恩…返せて…ない…し…」
「( ‘-’ )スゥゥゥ、えーっと…」
「「もちろん、お兄ちゃん/お兄様は優しいから反対なんて、しないよね?/しませんよね?」」
「あう…」
これが男のさがなのだろうか…
対面にいる二人に目配せをすると、「諦めろ」と、促され渋々承諾する。
「…分かった。じゃあ二人ともよろしくね…」
「「はい!/うん!」」
こうして、僕らはスタートラインに足を揃えた。
To Be Continued…
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