「デートしないかい?敦君」
突然云われたその言葉に
「はぇ!?」
と阿呆の様な声を出す。
「だってさ、一緒の仕事に行く事はあっても」
「休日に意識しながら行く事はなかっただろう?」
「それでも恋人なのかい?」
「うっ……確かに……」
僕と太宰さんは付き合っている。
といっても、つい先日にだが。
「行かないのかい?」
潤んだ目と上目遣い(無理矢理)で云われてしまったら……
「……行きます……」
まぁそうなるわな。
「映画……ですか?」
「嗚呼そうだよ」
「なんの映画ですか?」
「ふふふ……」
「サスペンス映画!」
「だと思ったっ!」
「敦君にはお見通しだったかぁ〜!」
「どうせ主人公が自殺するんですよね?」
「せーかーい!」
ニコニコと笑う太宰さん。
少し、可愛いと思ってみたり。
スクリーンに映し出される映像。
其れをキラキラとした瞳で眺める一人の青年。
太宰治。
その隣では……
「すぅ……」
安らかな寝息を立てながら眠る少年。
中島敦。
「……おや?寝てしまった……」
其れに気付いた太宰は敦に顔を近付け、
頬にそっと接吻をした。
「ふふっ、」
「可愛いなぁ〜」
(でも、面白くなかったのかな?)
ちょっぴり不安になる太宰。
やばい、寝てしまった。
太宰さん怒ってるかな?
「面白かったね!」
あ、バレてない。
良かった……
「そうですね!」
「……」
「敦君、カフェにでも寄らないかい?」
「!行きたいです!」
「ふふっ、じゃあ行こうか」
「私の行きつけの店があるんだ!」
「ん!美味しいです!」
「そうかい、善かった」
「流石太宰さんですね!」
「私まで誉めてくれるのか……」
「私の敦君は優しいなぁ〜!」
つい抱き着いてしまう。
「わぁっ!店内ですよ!?」
慌てる敦君。
そんな姿も可愛い。
「!そうだ、」
「どうしました?」
「あーん、してくれないかい?」
「!?」
「は、恥ずかしいです……」
「なぁに、もっと恥ずかしい事をしてきただろう」
「太宰さんの言い方も恥ずかしい!!」
「はっはっは!」
「…それで、してくれるかい?」
「う……仕方無いですね……」
「あ、あーん……」
照れながらもしてくれる敦君。
とても可愛らしい。
「んん〜!美味!」
店には悪いが、正直こっちの方が美味しい。
「そろそろ帰ろうか」
「そうですね!」
カランと音を立て閉まる扉を後にして
夕日の下を歩く二人。
まるで、映画のラストの様に。
「……あの、太宰さん」
「なんだい?」
「また、好きって、云ってくれませんか……?」
「おや、敦君にしては積極的だね」
「もう一度、太宰さんの声で聞きたくて」
「ふふっ、勿論いいよ」
そっと耳元に近づく。
そして、
「好きだよ」
優しい声色で囁いた。
途端に敦君の耳が真っ赤になる。
「其れは、聞いてないですよ……」
「ふふふ!」
再び恋人と云うことが実感出来たような気がした。
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