この話はストーリーとは関係ありません。
死ネタです。
感動?系だと思います。
スタート。
今日もまた自殺をする。
何時も阻止されるが諦めない。
今日は入水自殺をするつもり。
どうせまた止められるけど。
私は、ただ自殺をしたいだけでは無い。
あの子に見て欲しいだけ。
あの子に気付いて欲しいだけ。
どうか、
私を見て。
冷たくて美しいくらいの透明の中。
サラサラと流れる私の身体。
意識が途切れそうになった時、
何時もの引っ張りあげられる感覚がした。
其れと同時に、
私の身体ともう一つの身体が入れ違いになった。
私の身体は陸に、
もう一つの身体は透明の中に。
もう一つの身体もすぐ上がってくる。
然し、其れは間違いだった。
透明が鮮血にへと変わっていく。
ブクブクと泡が立つ。
咄嗟に、
「敦君!!!」
と叫ぶ。
頭をぶつけたのだろうか。
其れも相当な勢いで。
その子は驚いて
思い切り水を吸ってしまった。
これはもう、
助からないだろう。
ぷかぷかと浮かぶ白銀。
濡れる服。
動かない彼。
急いで陸に連れ出すが、
其の身体は既に真っ青で冷たかった。
「あ、つ…しく、ん……」
途切れ途切れになる言葉。
今にも涙が出そうだった。
「おねが、い……」
起きて………
ズンとした空気。
皆黙って彼の眠る病室に座り込んでいた。
そこに、太宰の姿はなかった。
「太宰は、何処だ」
一人の眼鏡を掛けた男が云う。
「……見たくないんだと」
一人の蝶の髪飾りを着けた女医が云う。
「そうか……」
「……今は、入水自殺をしようとした所に居るね」
一人の目を閉じた名探偵が云う。
「自殺でもするつもりか……?」
「ですが、普通、今そんな事します?」
一人の麦わら帽子を被った少年が云う。
「彼奴は普通じゃないからな」
「……敦、起きて、朝だよ……」
一人の着物を着た少女が云う。
「敦、守れなくて、すまなかった」
一人の白髪の男がもう意味の無い事を云う。
「敦君……戻って来てくれ……」
「敦さん……お願い……」
二人の仲の良い兄弟が云う。
もう二度と、彼は口を開かないというのに。
一人川の近くで棒立ちする男。
彼はただ、透き通った透明を見つめていた。
「おいクソ太宰、何やってんだ」
黒い帽子を被った橙色の髪の男が云う。
「は…………しか………で…… 」
「あ?ちっせえ声で喋ん………」
「今は話しかけないでくれ!!!!!!!!!」
泣き叫ぶように彼は云う。
「……太宰……?」
いきなりの大声に困惑する男。
「ど、どうした……?」
「話しかけないでくれと云っているだろう!!??」
見たこともない血相で叫ぶ彼。
「………」
何となく、太宰の事情が分かった気がした。
酷く悔しがっている顔だ。
「全部っ……私のせいなんだ!!!!」
「私がっ……!あんな事をしたから……!!!」
「どうせ助けてくれると……思ってしまったから……!!!」
「太宰、」
「君には分からないだろう!!!!!」
「嗚呼、お前の事なんて分からねぇ」
「というか、どうでもいい」
「じゃあもう何処かに行ってくれよ……!!!」
「厭だね」
「どうして!!」
「俺はお前に微塵も興味無い」
「じゃあ……!」
「だけどな、」
「目の前で “ 相棒 ” が泣いてんだ」
「放っておけねぇよ」
「……元だろう?」
「そりゃそうだけどよぉ」
「元は相棒だったんだろ?」
「心配したっていいじゃねぇか」
酷く虚ろな目で云う。
その目には泣いている私が写っていた。
私しか見えていなかった。
「それで?何があったんだよ」
「……敦君が死んだ」
「……人虎が?」
「嗚呼、君達が殺そうとしていた子だよ」
「私の、好きな子だ」
「お前、彼奴の事好きだったのか……」
「そりゃ、相当つれぇわな」
「君なんかに分かるかね」
「ちったァ分かるわ!」
私を笑わせようとしているのか、
何時ものような会話をする。
其れも全部無駄だけどね。
笑かしあっても敦君は戻ってこない。
戻ってこないんだ。
「……」
「もう、死にてぇなんて思うなよ 」
「……どうしてだい?」
「彼奴が、死んでまで助けた命だ」
「大事にしろ」
「……」
「君にしては善い事云うね」
「んだとコラ!」
「はっはっ……!」
嗚呼、ありがとう、中也。
君の云う通り、この下らない命を大事にするよ。
例えどんな辛いことがあっても。
其れが今であっても。
ー 終 ー
コメント
2件