コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
【せと視点】
隣の席の山野 美紅という女の子。好きになったのは1年の頃。はてなによく話しかけに来ては楽しそうに笑っている姿を見て、ほぼ一目惚れだった。はてなたちとは小学校の頃からの友達だけど、山野とはてなの関係はよく知らない。少なくとも小学校は一緒じゃなかったし、いつこんなに仲良くなったのかは分からない。
1年の頃は同じクラスだったけど、はてなとずっと話してたから俺が関わる隙はない。2年はクラスが離れてた。3年になってやっとはてなと違うクラス、そして俺と同じクラスになった。2年間ずっと一途に好きで、よく気にしてた身としては、山野が体調不良になりがちなのはよく知っているし、おれに対して興味が全くないのもよく知っている。だからこそ仮病を使っているなんて微塵も思わない。もし山野が俺を好きになることがあったとしても、それは3年になってからの話だろうし、そうなってくると1、2年はの頃の体調不良は本当で、3年で体調不良になりがちなのは治った、ということになるから訳が分からない。もしかしたら多少大袈裟な表現をしてるのかもしれないけど、だとしても体調が悪いことに変わりは無い。
みく「やっぱり保健室行ってくるね……」
隣で気持ち悪いくらい甘い声で喋ってくる名前も覚えてないクラスメイトの言葉に適当に返事していればさっきよりも顔色が悪い山野が教室の扉へ向かって歩き出した。
せと「え、一人で行けんの?!」
心配して少し大きくなった俺の声が聞こえた上で答えなかったのか聞こえてないのか、そのまま山野は教室を後にした。
女子1「ほら、自分の都合が悪くなったからってまた保健室〜。吉野先生が優しいからってかわいそ〜。ね、瀬戸くん♡」
せと「いや、顔真っ白だったし、体調は悪そうだけどな」
女子1「でもさっきまで保健室は行かなくていいって言ってたんでしょ?保健室行くほどの体調不良じゃないのに、都合悪くなったから保健室行ったってことでしょ?それって実質仮病じゃない?」
都合が悪くなったから保健室、か。まぁたしかに今の立ち去り方はそんな感じもする。でもそれが、図星だったからじゃなくて、全く覚えのない話だったからなら。それは目の前で悪口を言われているようなもんなんじゃないか?いじめに匹敵する話なんじゃないか?こいつに悪意があったかどうかは置いといて、今の話が全部嘘なら、事実無根な話なら、山野は保健室に行ったってなんの文句も言われないはずだ。
それは仮病じゃなくて、心の病ってやつだろ、だって。
はてな「瀬戸さん!!」
放課も半分に差しかかろうという時、はてなが俺の名前を呼んだ。かなり語気強く。なんか怒られることしたっけな、とか考えながらはてなの元へ行く。
はてな「今、やまみー顔真っ青だったんだけど!」
せと「あぁ、真っ青だったね、大丈夫そうなん?」
はてな「いや、教室の中でやまみー見つけて、顔色悪いから話しかけようと思ったらめっちゃ早足で行っちゃったから、はてなにはわからん。保健室?」
せと「うん、保健室行くって。」
はてな「ならいまバブケが保健室にいるし後でバブケに聞くわ。てか瀬戸さん着いてってあげてよ!」
せと「着いてこうと思ったらもう教室出てくとこだったんだよ!」
てか、バブル保健室行ってんのか。めずらしいな。
一通り話し終えたあと、はてながちょいちょいっと手招きをするので、少し屈んで高さをはてなと合わせる。
はてな「噂ヤバくない?知ってる?」
せと「なんか、仮病とか言うやつ?」
はてな「そうそれ。瀬戸さん信じてないよね?」
せと「まぁ、だって山野って昔から体調不良なりがちだし、今更感。それに俺には微塵も興味無いだろ。」
そう返せば、よく分かってんじゃん、とニマニマしながら言われる。腹立つわこいつ。
はてな「ま、瀬戸さんが信じてくれてるならいいや。私たちはずっとやまみーの味方でいてあげないといけないし。」
せと「それはそうだな」
正直この噂で山野が傷ついて、クラスに居られなくなるとかがあるんだったら、絶対に助けたい。山野の意志に反することはしたくないけど。
そろそろ放課が終わるということもあり、はてなは自分の教室に、俺は自分の席に帰る。
てか、今回の噂って俺が山野のこと好きって周りにバレたからだよね、たしか。なんで俺が山野を好きになって、山野が虐められないかんの?別に俺は体調不良になりがちな山野を守ってあげたいとか、そういう理由で好きなんじゃなくて普通に好きなだけなんだけど。だから周りにとやかく言われる筋合いもないし……。まぁそれが伝わってない、ただの噂だからこうなってるんだろうけどな。
宮Tの理科の授業を流し聞きしながらそんなことを考えていた。