号令を終えた瞬間、教室の扉からみさとらんが飛び出して行った。なんだアイツ、トイレ我慢でもしてたんか?その数分後、さっき勢いよく飛び出して行ったみさとらんと山野が帰ってきた。なるほど、保健室まで迎えに行ってたのか。ふたりが手を振る先にはバブルがいた。
せと「大丈夫そ?顔色戻ったね」
みく「うそ、顔色悪かった…?」
せと「真っ青だったけど」
みく「……バブルくんと話したし、藍ちゃんも迎えに来てくれたから、気分はだいぶ楽になったよ、ありがとう。」
らん「ぴすぴす!」
いまバブルくんって呼んだ?普通に仲良くなってんじゃんあいつ。そういえばはてながバブル保健室にいるって言ってたな。
相変わらずクラス内では山野の噂で持ちきりだった。山野もあまり居心地が良さそうではなかったが、朝よりは顔色もいいし、とりあえず気にかけつつ3時間目の英語の準備を始めた。
【みく視点】
瀬戸くんは噂、信じてないのかな。さっき女の子に言われてた時は信じてる感じだったけど、今はそんな感じしない。まぁ、これ以上めんどくさい事になることはないだろうし、噂が鎮火するのをとりあえずまって置くのが賢明なのかも。今はそれより、うちの事を考えないといけないから。
という私の考えを嘲笑うように、英語のグループワークのテーマは家族だった。なんで英語で道徳みたいなこと考えないといけないんだろう。
親の話をする人もいれば、兄弟姉妹の話をする人もいる。親の話なんてしたくないし、兄弟姉妹もいない。憂鬱すぎる……。
瀬戸くんはペラペラと英語で話している。勉強できるんだよな、この人。顔も良くて頭も良くて優しいって……。そりゃこんなどう考えてもモテる要素を併せ持った人に好かれてるって噂流れちゃったら嫌がらせにも合うか。
――
全部の授業が終わって、帰りのHRも終わって。教室にはいたくないので早めに出る。でも家にも早く帰ることはしたくない。お父さんに会うことは無いだろうけど、できるだけあの空間から逃げていたい。
はてな「やまみー一緒に帰ろ〜」
みく「おばあちゃんち帰るからちょっとだけだけどいい?」
はてな「全然いい!やまみーと一緒に帰りたい!」
みく「ふふっ、じゃあ帰ろ〜」
はてなは、今朝のメッセージと今の発言から、なんかあったことは察してくれてると思う。お父さんのことも知ってたはずだし、何があったかも何となく分かっているかもしれない。
はてなとは生まれた病院が同じらしく、昔からよく遊んでいた。保育園や小学校は別のところだったけど、中学は同じところ。しかも1年、2年と同じクラスだったから、2人でとっても喜んだ。
はてな「みく、頼ってくれていいからね」
みく「え…?」
はてな「私たちはずっと味方だから。」
みく「……ありがとう。私もはてなの味方だよ。」
そうだよね、はてなは優しくて、私が体調を崩した時も近くにいてくれた。嫌な顔ひとつせずに。昔からの親友で、1番心を許しているからこそ、こういう一言が本当にありがたい。
みく「私もわかんないんだけどね。喧嘩しちゃった、お父さんとお母さん。それで今おばあちゃんちにお母さんと泊まってるの」
はてな「そっかぁ。何となくお父さん関係だとは思ってたけど。学校も家も大変だね……。学校の件ははてなが守れるけど、家の件はどうにもできないし。」
みく「はてながいるだけで心強いから助かるよ〜;;」
はてな「ずっと一緒にいるからね〜」
ぎゅーっとはてなに抱きつけば、はてなも同じように抱きつき返してきた。そうこうしていると、おばあちゃんちに行くための道から随分と歩きすぎていた。
みく「あっ、歩きすぎた」
はてな「あれほんとだ。ごめんw」
みく「いいよ〜。じゃ、私帰るね〜」
はてな「うん、また明日〜」
昨日は厄日みたいな日だったし、今日もろくな日にならないと思ってた。でも、藍ちゃんもはてなも、私の味方でいてくれる。そう気づけた日、いい日になったな。そう考えながら歩く帰り道は、いつもより少し心が軽かった。
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