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『またすぐ来るから』
あの時dnさんにそう告げた気持ちに嘘はなかったけど、予想以上に早くその約束は果たされた。一人暮らしだった祖父の家の片付けに両親と共に俺も駆り出されることになった、…というのは半分嘘、俺も手伝うって立候補したんだけど。喰い気味に片付け同行を希望する俺に両親はちょっとびっくりしていた。そんなわけで葬式の日からぴったり2週間後、俺は再びじいちゃんの家を訪れた。
「母さん、ちょっとだけ山行ってくるー」
「早く帰ってきてよー力仕事はお父さんとmf担当なんだからねー」
「へいへい」
dnさんへのお土産の果物を抱えて山へ向かう。この前はdnさんから飛び出してきてくれたけどどの辺に住んでるんだろう、聞いとけばよかった。どんどん頂上まで近づいてきているけど一向にdnさんは現れない。
「dnさんー?どこーdnー」
一人キョロキョロ周りを見回しながら喋っている俺は側から見れば完全に不審者だ。できれば早めに出てきて欲しい。いや、そもそもdnさんはこの山に住んでるのか?そういえば俺全然dnさんのこと知らない。自信が無くなって足を止めた時、ガサガサと近くの茂みから音がした。
「dn?」
茂みのほうへ向かって声をかけたけど、音はぴたりと止んでしまいそれから暫くして何かが走り去っていった気配がした。
『…dnじゃなかったのか。仕方ない、明日また探しますか…』
がっかりしたけど仕方がない。しばらくはこっちにいる予定だしdnさん捜索は明日に持ち越すことにして俺はもと来た道を引き返すことにした。お土産として持ってきた果物が痛んでしまわないかが心配だ。早めに渡したかったんだけどなぁ。
ようやくじいちゃんの家が見えてきた頃、後ろからものすごいスピードで何かが俺のほうへ走ってくる気配がして俺は笑顔になってしまう。確信を持って振り返ると、思っていた通りの真っ白な狐が俺目掛けて飛び込んでくる。それをしっかり受け止めようと思ったのにその狐さんは目の前で人間に姿を変えた。想定外の重みにバランスを崩してその場にドスンと尻餅をついてしまった。
「痛ってえ!!」
「mfくんだーおかえりなさい!」
「…dn、ただいま」
ケツはめっちゃ痛いけど、その笑顔を見るとどうでも良くなるのが不思議だった。
コメント
2件
前回まで切ないお話だったので、そこからどうイチャイチャに繋がっていくんだろう?と楽しみにしてましたが! これは無事に繋がっていきそうで、とっても楽しみです!(*´꒳`*)