数日後。
「銀さんからの連絡はナシ……情報もナシ……これは困ったね……」
情報が全く掴めず徹夜を続けた結果ぶっ倒れたブラックを休ませながら、すまないは集めた情報に目を通す。数日前、夜遅くにすまないスクールを出たところは監視カメラに写っている。しかし、その後の足取りを追うと、ほんの少し監視カメラの死角になる場所があるところを境に、パッタリと途絶えている。
(攫ったやつはそこまで計算していたのだとすると……向こうはこちらに監視カメラを見る事が出来る、という事を知っていたとなるわけなんだけど……)
「心当たり多すぎて困る……」
すまないスクールは依頼を受けたりもしているため、色んな人に感謝される。しかし、その分恨まれる事も無きにしも在らず。今回銀さんを狙ったのは、偶然か理由があってかなのかは分からないが、スクールの生徒達が狙われたのは事実だろう。
「……でもさ……僕の生徒に手を出すなんて……よほど僕を怒らせたいらしいね……」
すまない先生の快晴を閉じ込めたような瞳が青い炎を宿して強く煌めいた。
その頃。
“彼”は再び豪奢な天蓋付きベッドで眠っていた。しかし、“彼”には先程まで付けられていなかった黒い仮面が付けられていた。その仮面は、リデルや先程の青年が付けていたものと同じものだ。目元を隠すような形状で、一見すると仮面舞踏会などで使われるものと酷似している。
「ああ、実に素晴らしいですわ……これこそ我らが王に相応しいお姿……」
相変わらずリデルは恍惚とした笑みで何やらブツブツつぶやいている。正直言って気持ち悪い。部屋の外にいる護衛が、頬をピクピクさせながら必死に笑いを堪えている。
(……リデル様はあの少年に酷く心酔していらっしゃるが……一体あの少年は何者なのだろうか……このコルテージュに入るのに“相応しい”人なのだろうか……)
護衛は首を傾げつつもその疑問を口に出す事は無かった。
(僕らの事をよく知っててあえて銀さんを拐ったとすれば、あまり戦闘に自信が無い人と思われるけど……)
生憎、すまないスクールの生徒を拐おうとする輩に、そんな腰抜けが居るとは思えない。
「考えれば考えるほど分からないよ……」
すまない先生は頭を抱える。そう言ってズーンと効果音が付いていそうな様子で項垂れていると、ようやく十分な睡眠をとって回復したMr.ブラックがツンツンと肩をつついた。
「何?ブラック」
「すまない先生、顔色悪いですよ。さっきまで寝ていた私が言うのもなんですが、先生も休んだ方が良いですよ」
そう言われて、ここ数日Mr.銀さんの事が気になってろくに眠れていなかった事を思い出した。
「気になるのはよく分かりますが、いざと言う時100%の力を出せなければ本末転倒というものです。情報収集は一旦こちらで引き受けますので休んでください」
「……分かった。ブラック、一旦頼んだよ」
そう言うとすまない先生は地下にある秘密基地の寝室へと向かった。
「さて、先生が起きるまで何か情報が掴めると良いのですが……」
____キィンッ……!____
コメント
1件
最後のキィン…なに?! ブラックもすまない先生も体に負荷かけ過ぎだよ…