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あれから、友達三人には当然ムシられるようになったけど、こんな哀れな私に神様は慈悲を与えてくれたのか、タイミング良く冬休みとなった。 年を越し、二週間の冬休みが明けて三学期。灰色の空から雪が降る登校初日。
もう私への興味を失っていることを願って教室ドアを開けるが、室内は変わらずの異質な空気に包まれている。
クラスの誰かと目が合うのが怖かった私は、俯いて自席に向かうと突然足先が出てきた。
また反応出来なかった私は、音を立てて転けてしまった。
『あ、ごめんねぇ。存在感なさ過ぎて、気が付かなかったわ!』
クスクスと笑うのは駅で会った時とかに「おはよう」と挨拶してくれていた女子グループ。
もう同じ目線で関わることはないようだ。
痛みを堪えて立ち上がり、席に座ると窓からは花のような雪、雪花がチラチラと舞っていて、そういえばあの時も冬で雪が降っていたなと溜息が溢れ出てくる。
高校生になっても、やり口は変わらないんだ。
イジメのやり方を教える教科書でもあるのかと、どこか感心してしまう自分がいた。
『斉藤って、西条さん嵌める気だったんだよ? マジで最っ低だよねー!』
友達……、いや、元友達三人は一人でいる麗華の元に行って、私の悪口を餌に麗華に取り入ろうとしているみたい。
ホント、何でイジメって回っていくものなんだろう?
こないだまで麗華をイジメてたくせに次は反発した私で、同時進行ってこともあるけど、大体は比重が変わっていってターゲットが入れ替わっていく。
イジメられっ子同士で結託しないようになのか知らないけど、元イジメられっ子を取り入れることをして、一度見下した相手に媚びへつらうなんて、言い方変だけどプライドとかないのだろうか?
……でも、良かった。これで麗華がイジメられることはなくなった。
だからこれで良かったんだよ、良かっ……!
『あ、ごめーんねぇ。ダンスの練習してたら、ぶつかっちゃってさぁ!』
突然頭をペチンと叩かれた私は、痛みも相まって脳内がグラングランと揺れていく。また別グループの女子で、莉乃の中では同じ二軍の中でも下の扱いで、キツく接していたグループだ。
莉乃たちのグループに一目置かれたいのか、格下の私が莉乃たちのグループにいて見下されていたのが許せなかったのか。
それは分からないけど、群れから弾き出されてしまった私は、草原を一人さまよう草食動物のようなものなんだろう。
だから一人で闘うことが出来ない私は、この場から出ていくしかない。
寒くて気力体力を削られていく廊下。
だけど教室にいたら心が殺されるような気がして、逃げ出した。
当然、カバンを持参して。
廊下を一人歩いていると、目に入るのは「久しぶりー!」と手を振り合う女子たち。
みんな友達と顔を合わせて、笑い合って、暖かな教室へと入っていく。
……あの日の行動を後悔していないのか聞かれたら、答えはノーだ。
何度となくあの場面は脳内再生されており、計画通りノートを隠したら良かったのに、麗華が失くしたってことにしたら今私は一人でいることもなかったのに、イジメられることもなかったのにと、身勝手な感情がドクドクと溢れてくる。
だってさ、一度経験しても慣れることなんてあるはずもなく、自分は否定される存在だという事実が重くのしかかってきて、息苦しくなっていくから。
私を取り巻く世界は何も変わっていなかった、と知った放課後。
もう何に流されることもなくなったのに、自由という名の真綿が私の首をジワジワと締めてきて息苦しくなっていく。
ホント、身勝手だな。
友達と出掛けないといけない時はイヤだと思ってたくせに、実際になくなったら怖く感じるようになるなんて。
私に見せつけるように元友達三人はこの後の予定について聞こえるように麗華に話していて、「うん、行く!」と返事する声に耳の奥が痛くなった私は、教室を静かに立ち去っていた。
麗華に裏切られたとか、そんなお門違いな恨みはない。
イジメのターゲットが私に変わったと気付いたあの日に麗華とやり取りしていたメッセージアプリはブロックしたし、最初に麗華をムシしたのは私。
当然の報いってやつだよね?
今なら本読み放題なのに。
自分の部屋に帰ってきて本棚からお気に入りの本を出して一ページ目から読もうとするのに、頭がどうにもついていかず、脳が理解を拒んでいた。
冬の五時はもう真っ暗で、私の嫌いな時間は迫ってくる。
一定の間隔で、私の部屋に段々と近付いてくる音。
来た。……サイアクだ。
「もう帰ってたの?」
「あ、うん。今日は雪降ってるでしょ? 電車止まっちゃったら大変だからって」
スマホに視線を落として、お母さんと目を合わせず話す。私がされて嫌だったことを、そのままお母さんにしてしまった。
「……文? 何かあった?」
「別に、変わらないよ」
レイのMVをかけていて良かった。この大きな音のおかげで、震えた声が隠せるなら。
「ご飯、準備終わったら声かけるから」
「うん」
ドアが閉まり階段を下っていく音が段々と小さくなっていくのに、私はMVを止めなかった。
お母さんにまた気付かれるのが、怖かったから。
だから私は笑顔の仮面を被る。
お母さんとお父さんに「どうしたの?」と心配した顔をされないために。
いつも通りご飯を食べて、お風呂に入って、ベッドで寝て布団でこっそり泣く。
そう思っていたのに。
「ねえ、これ何?」
お風呂上がり、自室の電気を消し忘れてしまったのかと階段を駆け上がると、そこにはお母さんがいた。
「文、またイジメられているの?」
泣きそうな声とともに。
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