仕事で遅くなって、太智がそっと家のドアを開けたのは、夜も更けた頃。リビングの明かりは消えていて、静まり返った部屋に、ほっと一息つく。
「…じんちゃん、寝ちゃったか…」
荷物を置いて、ゆっくり寝室のドアを開ける。
すると、ベッドの上で小さく丸まって寝ている仁人の姿が目に入った。
「……え?」
よく見ると、仁人がぎゅっと抱きしめてるのは
太智が今朝、着替えてそのまま置きっぱなしにしていたパーカー。
その服に顔をうずめて、幸せそうに微笑んで眠っている仁人。
「……かわいすぎやろ……」
思わず笑ってしまいながら、太智は静かに近づいて、そっとベッドに腰を下ろす。
愛しさが込み上げて、我慢できずに仁人をそっと抱きしめた。
そのぬくもりに、仁人がゆっくり目を開ける。
「……ん……だいち……?」
「ごめん、起こしてしもうた? でも、めっちゃかわいかったから……」
「……うそ……恥ずかしい……」
仁人は顔をパーカーにうずめ直して、真っ赤になってる。
「なんで俺の服なんか抱いて寝てんの?」
「……だいちの匂い、落ち着くから……」
その小さな声に、太智の胸が熱くなる。
「もう、そんなこと言われたら……今すぐぎゅってしたくなるやん」
「……してるじゃん……」
「うん、もっとぎゅーってしたい」
太智はもう一度、仁人をしっかりと抱きしめる。 夜の静けさの中、ふたりのぬくもりだけが、心地よく重なっていた。
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